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知覚を「操作」するのは施策と言えるだろうか~『いちばんいやらしいWebマーケティングの教科書』③ note版

こちらのAdvent Calendarの「いちばんいやらしいWebマーケティングの教科書」という企画で、皆さんにTwitter上でつぶやいていただいた内容にマーケティングや経営学の視点でコメントをしています。

今回のツイートは、、、

これはいやらしい♡
私も今までメールの送信元(from)名が「◯◯株式会社 メルマガ担当」となっていたのが、ほぼすべての企業からのメルマガで「佐藤花子」などの個人名に変更されました。おそらくこれで、社内関係者のように思わせたり、すでにアドレス帳に追加ししているユーザーと勘違いさせたりなどの心理的要因に関連する操作が行われ、メルマガの解約率が下がるものと思われます。
例えば下記のように、他社が社名で送信元名を表示しているのに、赤い丸で囲った会社は個人名でメールを送ってくるケースがこの2-3ヶ月でかなり増えたと感じています。(私の仕事用メールに来るB2Bの営業メールではほぼすべての送信者がこのような「施策」を実施するようになりました。)



理由は人が考える前の脳の動きを利用しているからかもしれません。カーネマンは人の知覚をシステム1とシステム2に分けて「ファスト&スロー」という書籍の中で解説しています。

システム1とシステム2については、UX DAYS TOKYOさんの下図を引用いたしますが、システム1とは「直感的な早(速)い思考」であり、システム2は論理的で遅い思考のことを指します。説明にもあるようにシステム1は「高速で自動的に動き、止められない」思考のことで、論理的に理解を進める前にすでに人間の脳で処理されてしまうような情報のことです。最初に与えた印象は後で変えたとしても長期間脳に残るといいます。

例えばサービスのUXやユーザー・タッチポイントのUIにおいていちばん最初にユーザーに使いづらいという印象を与えてしまうだと、「Don't Make Me Think」という書籍でKrugは指摘しています。UI、UXにおいてはシステム1を(もちろんシステム2も)意識したタッチポイントや導線づくりは非常に重要です。

メールの送信元(from)の話に戻ります。システム1を利用する場面はTPOによると考えられ、ウェブサイトのデザインや道路標識についてはユーザーが考える前に理解できるようなデザインを構築することは有効でしょう。
しかしながら、メールの送信元については個人名が書いてあることで、読み手が取引先や友人からのメールであるとある種の誤解を与える狙いがあるのではないでしょうか。

メルマガはユーザーとの関係を構築するコミュニケーションの一部ですので、こうした施策が長続きするとは思っておりません。信頼を損ねてしまうでしょう。少なくとも私は、近い将来こうしたメールが規制の対象となるのではと考えています。

以下、追記(2022/12/17)

「いちばんいやらしいWebマーケティングの教科書」企画を改めて考えると、Webマーケティングにはここまで書いてきたようなユーザーの「勘違い」を誘発している例があまりにも多いです。こうした感覚のだましを「施策」「ティップス」「ノウハウ」のような言葉で語られるようなことが多いように思います。本来はSteve Krugmのようにユーザーに考えせずにストレスなく使用できるウェブUIの実現程度に留めるべきで、勘違いをさせるところまでは有害ではないかと考えています。

関連するツイートで、掲載が漏れていたものを添付いたします。

こういうのはたまにありますね。私が卒業した大学の教授向けシステムは、「作業完了」の横に「削除」ボタンがついていて教授がボタンを押し間違えて成績反映が遅れる事故がありました。


これもコンテンツマーケティングなんでしょうか。
マーケティング・コミュニケーションの観点ではまずい気がします。短期的には、問い合わせが増えても企業に対するイメージは悪くなるでしょう。


これはネタ。ですけど、ついついクリックしちゃいますよね。

これもネタ。ですけど、注意してページを作っていないと同じような例はあると思います。


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