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〈読書メモ〉完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み/若林正恭

テレビの画面越しにその姿を捉えた時、幼心ながらになんとなく自分と似た雰囲気を感じ取っていた。

ピンク色のベストを着た人ではなくその隣で控えめにヘヘッとはにかむ「じゃ無い方」と呼ばれるその人に。

私は小説家や芸能人、アーティスト等色んな人のエッセイを読むのが好きだ。画面の向こうで落とし穴に落ち「なんだよもー!」と叫んでる芸能人も、唯一無二の世界観を生み出し世界から注目されているベストセラー作家も、ビルボードの週間ランキングで何度もその名を叩きつけるアーティストも、エッセイやブログを通してと"切り取られた日常"を認知することで「あぁ、私と同じ人間だ」とホッとする。

しかも甘いものが好きだったりスタバに強い偏見を持っていたり、肉離れに苦しんだり…と自分と似た悩みやちょっとした愚痴が書かれていると自然とその人への親近感や共通点を見つけた気になりウフフと嬉しくなる。

今回手に取ったオードリーの若林さんもその1人だ。

あっ…覚えがあるかも

この本は全7章の構成でできていて、それぞれのタイトルが「社会人1年生」「社会人2年生」「社会人3年生」「社会人4年生」「真社会人」「半年後のぼく」「社会人大学卒業論文」となっている。

各章をしっかり読むとその学年に相応した価値観や目線で文章が書かれていて時に「わかるわ〜」と笑い時に「え、考えすぎじゃ??」と驚き、等身大の若林さんとコミュニケーションを楽しんでいた。そしてこの本の凄い所は、若林さんの成長を見れる事だ。章が進む度確実に成長している。生活ベースや趣味については変わらなくても、対人に関しての付き合い方、物事に対しての視野が群と広がっているのだ。

1年生が買ったままのレンズだとしたら、2年生は望遠レンズ、3年生は広角レンズ、4年生は単焦点レンズとグレートが上がり自分らしく使いこなしているのだ。側から見たら滑稽かもししれないけど、出来上がった写真(文章)を見ると"若林正恭"がそこにいた。

1年ごとに見える世界

私が語るだけだとよくわからんと思うので、各章好きな文を紹介するのでその変化を見てほしい。

1年生

その時僕は「別に壺なんか要らないし、何百万もする壺を持っているからすごいってことでもないだろ」と本気で思っていた。(中略)自分のようにそういうことはどうでもいいって人が世の中の大半を占めていると本気で思っていたんです。(中略)この頃、自分の感覚が社会の通念から離れたところにある。と言うことをようやく痛感した。

          完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み p.24,25


2年生

あと、スタバとかでコーヒーを頼む時に「トール」というのが何か恥ずかしい。「グランデ」なんて絶対言えないから頼んだことがない。 

              完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み p.50

3年生

大丈夫と言うことから大丈夫は始まるのだ。

             完全版社会人大学人見知り学部卒業見込みp.91

4年生

その時気付いた。僕が目の前の後輩に投影しているのは後輩と同い年の昔の自分じゃないか。先輩を先輩とも思わなかった世間知らずは当の自分だった。

                                            完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み p.129

僕は東京に帰ってから没頭ノートと言うものを作った。ネガティブモンスターに捕まりそうになったときのために、没頭できるものを用意しとくのだ。ドラキュラが現れたときに、十字架をかざすように。(中略)ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ。

完全版社会人大学人見知り学部卒業見込みp.141,142

真社会人

根拠のない自信。最強だ。状況がダメなのではなくて、状況をダメと捉えてしまうことがダメなのだ。(中略)物質的な豊かさと幸福感はそこまで比例しないという「見切り」は、「自信」の代用品になるような気がする。

           完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み p181,182

「何を言うか?」ではなくて、「誰が何を言うか?」なんだ。

        完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み p.188

社会人大学卒業論文

これからも、結果は出たり出なかったりするだろう。だけど、自分にできることは常に過程を紡ぐことだけだ。そう。社会なんて自己ベストを更新していくだけでいいという自信さえあれば自由に参加していい場所だったんだ。(中略)まだ、足元は覚束ないけど。自分も社会もどっちも素晴らしい世界だ。

        完全版社会人大学人見知り学部卒業見込み p.345.346


提言という名目のまとめ

 結局半分くらい引用でできた記事になってしまった。でも書いている私が満足しているからいい。むしろ本の紹介記事なのだから引用が多くても逆にいいと開き直っている有様である。私だって出来る事なら社会人よりも覆面YouTuberとしてゲーム実況して過ごしたいし、買い物は全部ネット通販で済ませたい。有名人の友達も欲しいし、親方ー!空から女の子が!みたいな運命的な出会いもしたいし、2000年に一度の鬼才みたいな二つ名を授かりたいし、今は5,000兆円欲しい。

若林さんはこのエッセイを通して「遠回りをしても自分は成長するし道は見つかるから大丈夫」と言う事を教えてくれた。捻くれてもいい。スタバのオーダーが上手くいかなくても、自分の幸せの定義が曖昧になってゲームに逃避しても、コロナ禍で友人に会えない上に四六時中親と過ごす事に対するストレスと向き合う事になっている今も、それなりに享受して経験に変換すれば数年後には成長してそれっぽい見掛けにはなるから安心して過ごそう。

さて、あつ森を起動して島整備をしなければ。

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