🪡 秋の夜長、どう過ごそう？

秋は短い。季節のひとつとしてカウントしていいのか怪しいほど、冷たい風と共にすぐに通り過ぎて行ってしまう。それが秋。毎年、今年こそはと目を凝らしてみるけれど、日々の忙しさに紛れて満足がいくほど掴むことはできない。

近ごろ、日の入りが早くなってきた。
私がアルバイトをしているお店は、年中入り口を開け放しており、外の様子がいつも視界に入り込んでくる。だから、私は日の入りが日々少しずつ早まることを誰よりもよく知っている。そして、季節の移り変わりに取り残されそうな私がいることも嫌と言うほどわかっている。時々、このまま時間だけが流れていってしまう気がして、漠然とした不安を前に涙がこぼれてしまう。

今年の秋の夜長は、何をして過ごそう。何か新しいことを始めてみても、ぎこちないだけで心の底からは楽しめない気がする。でも、私なりの秋の夜長の過ごし方を見つけたい。私に自信とゆとりを与えてくれるきっかけが欲しい。

そこで、私は気がついた。ただ、自分の心が落ち着くことをしよう。それだけでいい、単純なことだ。

たとえば、やらなきゃいけないことは山のようにあるけれど、とりあえず見ないふりをして好きな音楽を聴く。ただ、涼しい風を受けながら聴きたい曲を聴きたいだけ聴く。そんな秋の夜長を過ごし方もありではないか。しばらく経って、気が向いたら山を崩してみるのもいいし、そのまま寝たってきっと死にやしない。たまには肩の力を抜くことも必要だ。

夜のお散歩は、お出かけするのとは違う楽しさがある。暗くて顔があまり見えないからか、心から素の自分でいられる気がする。いつものくだらない話も何倍も面白く感じてしまう。この時だけは、世界が自分たちだけのものに思える。時間や決まりに縛られずに、行き先も分からない電車に飛び乗りたい。そんな突飛なことを本気で考えてしまうのが、私たちの夜のお散歩。

好きな飲み物を横に置いて、お気に入りのノートに覚えていたいことをただつらつらと書く。生まれてから随分経ったけれど、記録することの大切さに気がついたのは割と最近のことだ。いつの日からか、忘れることが怖くなった。いつかの私のために、足跡を残すことを忘れてはならない。

ぜんぶぜんぶ普通のこと。でも、人は案外そういう記憶ほど簡単に引き出せてしまう生き物なのかもしれない。私はそうやって、地道に季節と歩みを揃える努力をする。

秋は一瞬で過ぎ去ってしまう季節。よく目を凝らしていないと見過ごしてしまう季節。それでこそ秋だ、と思う。