2023JBC東京予選のプレゼン全文
こんにちは!スパークコーヒーの田中です。
バリスタチャンピオンシップは面白いです。
なぜなら、どんなに良い豆を使っても、「美味しい」と感じてもらえるかどうかはバリスタ次第だからです。
すでに有名なコーヒーは期待値も高く、ジャッジのみなさんがそれを飲みたいと思う気持ちもわかります。
しかし、まだあまり知られていないダークホースを見出すのも、ワクワクすると思いませんか?
例えば2017年のWBCでは、他のファイナリストが全員ゲイシャを使う中、イギリスのデールハリスさんがSL28で優勝しました。
ダークホースの活躍は、私にとっていつもチャンピオンシップの魅力です。
大切なことは、伝えたいコーヒーをバリスタがどれだけハイライトできるか、だと思います。
そしてそれは、お店でやるべきことと一緒です。
どんなに有名なコーヒーを扱っていても、バリスタ次第で台無しになってしまうこともありえます。
逆にまだあまり知られていないコーヒーでも、バリスタ次第でより輝かせることができると信じています。
この大会において、ジャッジのみなさんにもダークホースを見出すワクワクを体験してほしいと思っています。
エスプレッソからご提供しますが、先にミルク用のエスプレッソを抽出します。
後ほどご説明しますね。
私が選んだコーヒーは、エクアドル、ハシエンダラパパヤの、パカマラ、ダブルアナエロビックハニープロセスのコーヒーです。
私のJBC挑戦は3回目。エクアドルのコーヒーに魅了され、3回ともエクアドルを使っています。
エクアドルは、メジャーな産地ではないかも知れません。
しかし、そのテロワールのポテンシャル、栽培品種やプロセスの多様性、そして、向上心の塊のような生産者。
それらの組み合わせにより生み出されるコーヒーは、まさにダークホース。もっと高い評価を受けるべきだと思っています。
ラパパヤの標高は2100mと非常に高く、さらに特別なプロセスによって、複雑なフレーバーを持つコーヒーに仕上がりました。
嫌気発酵の後一度パルピングした果肉を捨てずに、パーチメントと一緒にもう一度タンクで発酵させてからハニープロセスに移行します。
このプロセスのコーヒーは粕谷哲さんのプロジェクトで、他の生産国の幾つかの農園でも「トモダチ」の名前で生産されています。
今年もエクアドルから素晴らしいトモダチが届きました。
このコーヒーを、もっと評価してほしいと思っています。
そのためには、バリスタである私がこのコーヒーをどれだけハイライトできるかが重要です。
今回のトモダチは、品種がパカマラです。
大粒のコーヒーはエスプレッソには難しい、そんなイメージがありませんか?
今日は、冷凍しておいた豆で抽出します。
一般に、大粒のコーヒーはグラインダーにうまく入っていかず、跳ねてなんども刃に当たるため、安定しません。
クリストファー・ヘンドン博士のリサーチにあるように、豆を冷凍すると脆くなり、砕けやすくなります。
しかも粒度分布は細かいところで安定する為、味わいはよりクリーンで甘く、バランスが良くなります。
つまり、豆の冷凍は大粒豆に非常に有効です。
冷凍豆はヘンドン博士の協力を得たアメリカのカイルラメージさんがUSBCで初めて披露しました。
チャンピオンシップでは他にも様々なイノベーションが起こっています。
彼らのような、イノベーターになる事は難しいと思います。
しかしそれより大切なことは、それらのテクニックを豆に合わせて選び取り、適切に組み合わせて実装していくことだと思います。
それこそが私の考えるバリスタのオリジナリティであり、伝えたいコーヒーをよりハイライトすることに繋がります。
エスプレッソは19.5gの粉量で、43gの抽出です。ミルクも同様のレシピです。
お手元に渡りましたらまだ飲まずに、クレマの評価をお願いします。
フレーバーはオレンジ、マンゴー、アーモンドです。
タクタイルはミディアムウエイトでスムーステクスチャ、スイートアーモンドフィニッシュです。
スプーンで10回前後に混ぜると約55度になり、甘さのピークです。どうぞお召し上がりください。
使い終わったスプーンは小さなグラスに入れてください。
ありがとうございます。
よろしいでしょうか。ミルクビバレッジに移っていきますね。
フレーバーは、キャラメル、バナナ、ヘーゼルナッツです。
タクタイルはクリーミーなテクスチャーです。
スプーンで5回時計回りに混ぜてからお召し上がりください。1口目からフレーバーをキャッチしやすくなります。
ジャッジの皆さんなら経験があるかもしれませんが、2杯どりで2回に分けてミルクビバレッジが提供される場合、エスプレッソの抽出後時間の経った後半の2杯の方が美味しいことがあります。
時間が経って炭酸ガスが抜けていくことで苦味が減少します。
酸は強くなり、エスプレッソとしてのバランスは崩れますが、甘さのあるミルクと合わせる事でミルクビバレッジとしてのバランスが良くなります。
ミルク用のエスプレッソは先に抽出して冷ましておきました。
一旦ミルクを少し入れてから注ぐことでクレマの渋みを消し、テクスチャを滑らかにします。
ミルクのルール変更がありましたが、今回は最も相性の良かった岩手県産の低温殺菌牛乳を50%の凍結濃縮で使っています。
焙煎は、大粒のパカマラを焦がさないよう焙煎初期の火力を抑え、トータル9分半で仕上げました。
ラパパヤのコーヒーはいかがでしたか?
大切なのは、伝えたいコーヒーをバリスタがどれだけ輝かせることができるか、だと思います。
ダークホースと呼べるコーヒーはまだまだたくさんあるし、バリスタもたくさんいます。
ジャッジの皆さんには、そんなダークホースを見出すワクワクを感じていただければ幸いです。
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