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知床遊覧船事故から学ぶべき経営観と報道の責任

 知床遊覧船事故に関する報道は、素人社長のずさんな経営と人格にばかりが焦点となり、悪者を攻撃することで、溜飲んを下げる図式に偏っている気がします。

 この社長の経営観に、問題があるのは確かですが、事故を起こした原因となぜ、乗客を救出できなかったのかを、もっと真剣に追求しなければならないのではないでしょうか。

「落ちたら終わりだよね」は「飲酒事故はあるよね」と同じ

 水温が4度の海水に投げ出されたら、あっという間に低体温症になり、気を失なってしまいます。この事件で注目しなければならないのは、船に救命ボートや筏(いかだ)を積んでいなかったことではないのだろうかと思うのです。
 
 私の仕事に関して例えると、冷水を信仰するサウナーは多く、「シングル」とは10度以下の水風呂のことを指しまず。

 温浴施設の水風呂の設定は20度前後に設定しますが、18度以下なら、水風呂が冷たい店として認知され、マニアウケは良いのです。

 更に、専門店の中には、水温を8度〜9度に設定した施設「シングル」を提供している施設がありますが、マニアがガンガンに、サウナで発汗した後でも10秒以上は、身体が痛くて入っていられない代物です。

「kazu1」は何故、救命ボートを積んでいなかったのか

 遭難した船が、救命ボートを積んでいなかった理由は、積んでおく義務がなかったからです。そのような、法律や条例がないことが問題なのです。

 南の海で、海温が高い海ならまだしも、北の海で船が沈めば、終わりと分かっていながら、そのような決まりがないことは、沈むことを全く想定していないのと同じです。

 マスコミは、そのことの問題を追求しなければなりません。

飲酒運転前提の経営計画

 二十数年前、スーパー銭湯の経営計画をたて、スーパー銭湯をオープンさせました。事業のコアなコンセプトは、ビールをどれだけ飲んでもらうかでした。

 目論見は見事に当たりました。

 施設のオーナ会社は酒屋なので、温浴施設のビール消費に目をつけて計画をしたのだから間違いないのです。入浴者の8割以上は、車で来場することを前提に計画をたて、200台分の駐車スペースを確保しました。

 今では、考えられませんが、飲酒運転は当然のこととしてでなければ、立てることのできない事業計画です。

 恐らく、この頃開店ラッシュだったスーパー銭湯のビジネスモデルは、どこも同じでした。どんな大型の居酒屋も敵わない、地域一番のビールの売り上げを叩き出していたスーパー銭湯があちこちにあったのです。

 しかし、痛ましい福岡の飲酒運転事故の影響で、道路交通法が改正され、飲酒運転の意識が変わってからは、このビジネスモデルは成立しなくなリました。当然のことだと思います。

 しかし、この時も飲酒運転をしていたのが福岡市の職員だったので、マスコミの矛先は、公務員がどのくらいの量の酒を飲んで運転していたのか、そこばかりがクロースアップされていました。

 酒気帯びは許されるが、飲酒はダメという世の中の風潮をおかしいと、もっと早くに気づくべだとは、誰もが分かっていたのにです。

 その後起こった、飲酒運転撲滅キャンペーンが、その後の、規制の強化につながりました。マスコミが正すべきはこの点なのだと思います。

 当時年間6,000人以上あった死亡事故は現在その半数以下になっています。もっと早くに取り組んでいれば、防げた命が多くあります。

 スーパー銭湯のビールの売上は減りましたが、ビジネスモデルが間違っていたことは言うなでもありません。

 レジオネラ菌とお湯の殺菌問題や温泉爆発事故とガスの問題

 温浴業界だけでも、分かっていながら放置されていた問題はたくさんあります。よく考えれば今、現在も放置されている問題もありますが、多くの犠牲が出ない限り、蓋をしてしまう。

 これは、どの業界も同じことではないでしょうか?

事故を起こさないことは大事ですが、起こってしまった時にどうするのか、そのために欠落していたものは何なのか?

問題の真相を深掘りして、報道してほしいと思います。

海の素人であることが問題ではない

 もう一つ、報道で気になるのは、社長が元陶芸家、とか、旅館経営者で海のことは知らないとかばかりを、放送のネタにしているマスコミの態度です。

 観光船の運営会社の社長が、海に精通していないことを問題にする必要は全くないと思います。問題は経営者としての危機管理能力を含めたマネジメント力の弱さです。

 お酒を飲まない、酒屋の社長、フライパンを振ったことがないレストランの経営者、井戸や温泉掘削の仕組みを知らない温浴施設のオーナー。

 社長が必ずしもその業界の叩きあげである必要はありません、その道のプロを採用し、任せれば良いのです。

 問われるのは、事業をその責任者に任せることができるか否か、その判断能力と、任せた以上はその責任は自分が負うという覚悟があるかです。

 そうすれば、自ずと現場への関心は高まるはずです。

 残念なが、この社長は覚悟がないから現場への関心が薄く、忠告も聞けなかった。そして、同じ匂いの経営者はごまんといます。

 そういった人が、この事件の本質に気づくような報道姿勢であってほしいと思います。

 

 

 



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