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一週遅れの映画評:『七人の秘書 THE MOVIE』許しを請うためのガバさ。

 なるべく毎週火曜日に映画を観て、一週間寝かしてツイキャスで喋る。
 その内容をテキスト化する再利用式note、「一週遅れの映画評」。

 今回は『七人の秘書 THE MOVIE』です。

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 そんなわけでじゃの、今日はこのままおばあちゃんで映画の話をしていこうとおもうんじゃがの? 大丈夫かのぉ? ついてきてるといいんじゃが。
 
 今日の映画はの『七人の秘書 The MOVIE』と申しましてなぁ。2020年にテレビドラマで全8話が放送され、今月の最初ごろに映画を見据えたドラマスペシャルが放映された作品なんじゃ。政治家や大病院の理事長、銀行の頭取なんかの秘書をやっとらっせる別嬪さんが、悪事を働く人間を懲らしめていく……というお話なんじゃ。
 つまりは秘書として入り込みながら、その立場を利用したりして秘密を暴き、主に横暴な権力者を相手にしていくわけなんじゃが。これがまぁ恐ろしいほどにガバガバのガバなんですじゃ。わしも大概の荒唐無稽フィクションには触れてきておるが、それでも「ガバいのぅ」と呟かずにはおられんかった。
 
 これは今年の『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』でも話したんじゃが、(一週遅れの映画評:『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』キャラメルポップコーンは、おいしい。)こういった権力者をとっちめる作品というのは怖いんじゃよ。つまりな、世の中の悪~いことは、ぜ~んぶ裏で操ってるヤツがおる。そいつが得したりするために、弱いもんがひどい目におうとる。だからそいつを叩きのめせばみんなが幸せになる。
 なんともまぁ陰謀論みたいな世界観で作品が作られておるんじゃ。もちろんほとんどの人はこれがお話だってわかっとる、だけどな、一番怖いのはこれを真に受ける人間が確実に一定の割合でおる、いうことじゃ。
 そういった危険性をどうしても孕んでおる、そしてこれらの作品はテレビドラマで放送されたのが映画化もされるという「まだまだ一番訴求力のある」ルートに乗っていることに、どうしても恐ろしさを感じてしまうんじゃよ。
 
 まぁそういった意味では、ほらあれじゃあれ、前のクールで大ヒットしたリコリコリコリコリコリコリコリコリコ……なんかカスのスタンド使いみたいになってしまったのぅ。あれなんかも社会の(というか組織の)描き方が大概ガバい、という方向で”も”話題になっておったが、あれにも同じ気持ちが無かったと言えば……多少は思うところがあると言うしかなんじゃ。
 
 ただここではの、「ガバい」ことがセーフティとして働いてると思うんじゃ。つまり適当で雑な社会なら、確かにそういった陰謀論が真実になるかもしれん。だけど実際の社会はここまでガバくない、だからこれは「フィクションの陰謀」なんじゃな、といことがすごくわかりやすい形で出力されておる。
 
 ところで全然関係無いんじゃが、ガバ作品の特徴として「USBメモリがほぼ魔法の道具」ということに気が付いたんじゃ! リコリコリコリコしかり、この『七人の秘書』しかり、ついでに『HIGH&LOW2』しかり。ガバ作品アキネイターじゃったらとりあえず「USBを挿したら解決しましたか?」と聞いてくるじゃろうなぁ。
 
 映画本編の話をなんもしとらんの。地方で土地と経済を牛耳ってる男が、己の権力と欲望にまみれて悪事を働き。秘書たちに成敗されました……と、しか言いようがないんじゃ。ただわしは映画を見るにあたってドラマ版を全話見たんじゃがの、正直かなりキツかったんじゃ。それと比べれば映画版の方がちょっとマシだった感はあるのぅ。
 わしがたまに口にする「裏事情を知りたがるのは、弱者の欲望」というジャズミュージシャンで文筆家でもある菊地成孔の言葉があるんじゃが、テレビ版はまさにその通りで「弱者が弱者として苦しんでいるのは、なにか裏にある悪事のせいだ」という、甘美な妄想を雑に映像にしおるだけだったんじゃ。
 
 けどもな、映画版では悪事の8割ぐらいをバラされた権力者が「それの何が悪い、私が儲かれば地元に金が回ってくる。そうやって若者がこの町に留まれば、みんなのためになる」と自身を正当化する弁舌をする。それを聞いた地元の人間は思わず拍手をしてしまうという、弱者が弱者であるがゆえに小ズルく利己的である面を持っておることを描いたり。弱者面をしてるやつが、別の計画に加担して出し抜こうしている部分が描かれたりと、さすがにテレビ版よりは厚みのある話になっておったかの。
 
 そうじゃそうじゃ、とは言っても一人のキャラクター。韓国人と日本人のミックスという設定の朴四朗(パク・サラン)という人物。彼女周りの話はテレビ版でもちょっと面白かった気がするのぅ。超すごいハッカーという、物語的には「都合よく何でもできる」位置にいることで、出番も多くて。わしは彼女がちょっと気に入ったからその点では楽しくみれたのぅ。
 
 あとな、映画だと大立ち回りのシーンで秘書たちのうち5人が並んで立つんじゃが、着てるドレスの色が「赤/青/黄/白/黒」で「あ、これやってんな? そういう風に見ろってことなのね」とようやく合点がいったのも、テレビ版より映画版の方が良かった理由のひとつじゃの。仲間のうち一人がその大立ち回り中に、金属製の即席グローブを手にはめて「ガチンガチン!」と打ち鳴らすとこなんかは、完全に『デンジマン』じゃったしの。
 
 まぁそんなところじゃの。朴四朗(パク・サラン)というキャラクターの良さ一点だけで「ギリギリ見て良かった」という感想になんとか滑り込んだようなもんじゃな。
 
 ……ところでこれ、全体を通して「ガバいばあちゃん」っていうギャグなんだけど。どうやら完全にスベっとるようじゃの。ふぉふぉふぉふぉ。

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 次回は『私に天使が舞い降りた!プレシャスフレンズ』評を予定しております。

 この話をしたツイキャスはこちらの18分ぐらいからです。


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