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楽天モバイル、「1GBまで無料」という渾身の一撃

 >楽天モバイルが1月29日、スマホ料金の実質値下げを発表した。今回はデータをあまり使わない利用者に照準を合わせ、月のデータ使用量が1GB以下は無料など大胆な値下げである。官邸、総務省にせっつかれた横並びの値下げで「20GBで2980円」で3メガ(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)を突き放す戦略だ。三木谷浩史楽天社長兼会長はこの日の記者会見で、今年の夏には人口カバー率が96%に達することも明らかにし、再び日本のスマホ市場を揺さぶる決意を露わにした。

「データをあまり使っていないのに、むっちゃ高い料金を払っている人がたくさんいる。これはフェアじゃない!」

 都内のホテルでスマホ料金体系の「アップデート」を発表した三木谷会長は声高にこう叫んだ。

20GBで月額1980円
 確かに3メガのガラケー(従来型携帯電話)では、100メガバイト(1億バイト)程度のデータ量で3000円前後の料金を取られる。3メガの一斉値下げで20GB(200億バイト)のスマホが2980円になった今、使用データ量200分の1で3000円は確かに割高だ。

 4月1日から適用される新たな料金体系「Rakuten UN-LIMT Ⅵ」は使用したデータ量によって料金が変わる。20GB超は従来通り2980円だが、3GB〜20GBは1980円、1GB〜3GBは980円、1GBまでは無料になる。

 自宅や職場ではWi-Fiを使い、通勤電車の中で動画を見る程度なら20GB以内で収まるので1980円、ニュースサイトを見てメールやLINEを使う程度なら3GB以内で980円だ。

 逆にプレイステーションなどの高解像度なゲームをガシガシ使うヘビーユーザーは、月のデータ使用量が簡単に20GBを超えてしまう。こうした利用者は3メガが打ち出した「20GB上限で2980円」に収まらず、50GBを超えると月額1万7000円を超える高い料金を支払わなくてはならない。ヘビーユーザーにとってもデータ量無制限で2980円の「Rakuten UN-LIMT Ⅵ」は割安ということになる。

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「繋がらない」と言われた弱点も克服
 それでも「新規参入の楽天モバイルはネットワークが弱く、繋がらない場所が多いのでは」と考えるユーザーが多いだろう。実際、2020年4月にサービスを始めた楽天モバイルのユーザーは約220万人で、3メガの10分の1にとどまっている。確かにサービスを始めた頃は人口カバー率が30%前後で、繋がらない場所が多かった。

 しかしサービス開始後、楽天モバイルは猛烈な勢いで基地局を増やしており、現時点で人口カバー率は73.5%、3月末には80%、そして「夏には96%に到達する」(三木谷会長)という。ここまでくれば、山奥などに行かない限りはどこでもつながる状態になり、3メガと遜色がなくなる。

 昨年、サービスを開始した時点で楽天モバイルは人口カバー率が96%になる時期を2026年としていた。現在の計画では、これが5年も前倒しされたことになる。これはいくら何でも、短縮されすぎではないのか。質疑応答で筆者が問うと、三木谷会長はこう答えた。

「2026年というのは従来のやり方でネットワークを構築していった場合の予定でした。従来はサービスを始める地域のビルを見渡して、あの辺に立ててみようか、という具合にアンテナを張っていきましたが、(どのくらいの面積をカバーできるかや、電波の干渉の有無など)やってみないと分からないことが多かった。我々はデータを持っているので、ピンポイントで効率よくアンテナを立てられる」

「しかも仮想化技術を使っているので、設備投資のハードの量が従来より格段に少ない。これはガソリン車とEVの部品点数を考えもらえば分かりやすい。我々はEVなので安価に早くネットワークが整備できる。楽天グループの総力を挙げてマンパワーを投入し、業者に丸投げではなく、自分たちでネットワーク構築をやっていることも予定より早くカバー率を上げられた要因です」

 1GB未満しか使わない無料の顧客が増えてしまったら、スマホ事業そのものの黒字化が難しくなるのではないか。この疑問に対しては、三木谷会長はこう答えた。

「全然データを使っていないのにお金を取られるというのも変な話なので、ここは思い切ってタダにしましょう、と。ただ楽天モバイルを始めてみて、改めて分かったのは、楽天モバイルに入ってくれたお客さんは、楽天のその他のサービスを予想よりよく使ってくれることです。スマホ事業で稼げなくても、他のところで稼ぐことができる。これは他のキャリアにはない楽天の強みです」

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人工衛星利用して「2年後にはカバー率100%」の計画
 もう一つ、三木谷会長は重大なことを明らかにした。「人工衛星をアンテナに使う地理的カバー率100%のサービスを2023年に始める」という計画だ。人工衛星からの電波なら遮るものは何もないし、地震や津波があっても被災しない。無敵の通信インフラである。イーロン・マスクが経営するスペースXも軌道に無数の人工衛星を浮かべる「スターリンク」計画を進めているが、楽天は3月に出資した米AST&サイエンスと組んで「衛星スマホ」の実現に取り組む。「夢物語ではないのか」という質問に対し、山田善久楽天モバイル社長はこう答えた。

「実証実験はこれからで確かにハードルはあるが、総務省とワーキンググループを作って実現に向けた取り組みを進めている。夢物語ではない」

 完全仮想ネットワークに続き、衛星スマホ。楽天モバイルはテクノロジーへの傾斜を爆発的に加速させている。

(JBpress 2021/01/30 12:20)



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