標本の湯「live in 35mm film.」
松井周の標本室というサークル(と私は呼んでいる)に参加しています。
3/10〜3/12に元映画館という日暮里にある会場で、「標本の湯」を開催します。※標本の湯公式ページ
会場内で展示・ワークショップが乱立し、カオス空間になる予定です。
私は会場全体を使っての写真の展示と、外を歩きながら写真を撮るワークショップ、両面を展開する予定です。
あいた時間は、会場内で記録写真を撮っています。
はじめに〜松井周の標本室について〜
そもそも標本室がどういう集まりか、と聞かれると
「なにか研究テーマを持った人たちの集まり」
と答えている。
(公式では【劇作家・演出家の松井周が2020年より立ち上げたスタディ・グループです。】とあります。)
松井さんの元に、俳優、会社員の人、大学生の人、ジョブが不明な人、なんだか色々集まっている。
定期的にオンライン上で議論を交わしたり、誰かが実験する場にしていたり、緩やかな交流がおこなわれている。
突飛なテーマであっても演劇的(って便利な言葉ネ)な話題に帰着していくのがこの集団の特徴だなぁと参加していておもう。
しかし必ずしも全員が研究テーマを持っている、とも限らず、研究テーマを探し続けてフラフラしている人もいる。私は2年間フラフラしていた。
標本の湯に至るまで
フラフラしている間も写真を撮り続けていた。
どこかで有名な先生に習ったわけでもない。
使い方が分からないカメラで意味不明な失敗を繰り返し、一時は離れていたりもしたが、手放さなかったのは、カメラが家にあり、祖父の形見だから捨てられなかった、というところにある。
仕事先でカメラを触る頻度が高いのも理由として大きい。
お世話になっていた店長がカメラの入門的な説明をしてくれたし、撮ることの楽しさと気軽さを教えてくれた。
今も、愉快なお客さんとかわいい後輩たちが、自然とカメラの知識を運んできてくれる。
私はフーンとかホーンとか相槌をうつ。なーんも追いついちゃいないけど、さすがにちょっとは知識がついた。
散歩の業務がある。
と言うと語弊しかないのだが、レンズの作例を撮ってくる仕事がある。
「入荷したレンズ、こんな写真が撮れますよ〜」というレンズの特徴ができるだけ伝わる写真を4枚、Twitter用に撮ってくる。
つまり時間内に4枚、撮れ高のある風景写真を撮ってくるというミッションなのだ。
はじめのうちは使える写真(とはなんぞや、という問いは一旦置いておく)がほとんどなかった。
今は天気さえよければすぐに撮れる。
日差しを探して、レンズと被写体(風景)がよく見えるためならなかなか滑稽なポーズだってする。
10秒経てば日差しが変わってしまう、そのなくなってしまう、を数多く経験してきたからこそ、日差しがあれば逃したくない。
仕事場ではデジタルカメラ×オールドレンズを触ることが多いが、私生活ではほとんどフィルム写真を撮る。
理由は単純。いいデジタルを買うお金がないから。
悲しい。
だけどフィルムだってお金がかかる。
価格の高騰で安くても1本1500円、現像代+データ化代で1500円。
36枚撮るとだいたい3000円掛かる計算だ。そこに郵送代や交通費やらが掛かってくる。
フィルムを買い、フィルムを持ち歩き、現像所に持っていき、仕上がりを待ち、やっと送られてくる。全ての工程が手間で大変だ。
更になにかの拍子で何も写っていない可能性だってある。
その全てが愛おしい。
ブレた写真、目を瞑った写真、設定をミスって真っ暗になってる写真。
ダメダメで下手くそで、だけど1枚も間引けやしない。
35mmフィルムの隙間の時間を思い出してしまうし、言葉では尽くせない「なんかいいね!」がある。
どんな場所、どんな関係性の相手と撮った写真も、「なんかいいね!」マジックが存在するのだ。
と、思ってるのは私だけかもしれないけれど。
家の写真について
ご自宅のお気に入りの場所の写真をお借りします。
場所、といっても広い範囲である必要はありません。
お気に入りの本がある本棚の一角、使い込んだフライパンの上で焼けたお好み焼き、生けたばかりのお花、友人がインド旅行で買ってきた象の置物に堆積した埃、みたいなミクロなものでもいいです。
人の自宅にはさまざま生活があり、癖の塊だと思っています。本人にとって合理的でありすぎるあまり結果的に非合理である面白さがあると思っています。
このワークショップを開くにあたって、友人である佐藤一馬の自宅を一度撮らせてもらいました。
佐藤の自宅にはウソみたいにデカいゲーミングPCと、拾ってきた空気清浄機と、山ほどのTシャツと、ドピンクに強く発光するライトがありました。
究極の自然体になっている人物を撮ることはできるのか、という試みだったので、できるだけ私はその場所に存在したくなく、佐藤には普通に生活をしてもらって時折写真を撮ったのですが、どうやっても撮るとき私は佐藤の自宅に私として存在してしまいます。
なにかが起きてしまう。
きっとあなたの自宅でシャッターが切られたとき、なにかが起きていると思います。
それを、一緒に再現させてください。
写真を再現するとき、記憶に介入することができるのか。できるとして、「なんかいいね!」になりたい。
ワークショップにあたって
・事前に自宅の一部が写ったお写真をご準備ください。
データでも、プリントされた状態でも、ガラケーで撮った写真を見せていただくでも、なんでもかまいせん。
・1対1のワークショップになります。
標本室からメンバーが1人同行します。私に話しにくいことなどございましたら、いつでもメンバーにお伝えください。見学の方が参加する可能性もございます。
→途中退場も大丈夫ですし、疲れちゃったらその場で解散くらいのゆるさでご参加いただいて大丈夫です。体調不良・ハラスメントに抵触すると判断した場合など、小池から解散をお伝えすることもございます。
・会場で集合、外を1時間程度散歩します。
所要時間は90分を予定しています。
防寒対策をお願いいたします。
→寒すぎたら会場に引き返しましょう…。室内でも撮れるはずです。
・写真を撮らせていただきます。
再現するとき、あなたを撮らせていただきます。
→写されたくないところ、ものがあれば仰ってください。
・事前/事後それぞれアンケートを取らせていただきます。
→撮影の前後での変化の記録が目的です。
・写真を現像し、データをお渡しいたします。
お時間を2週間〜1ヶ月ほどいただきます。
お送り先をお伝えいただきます。
space-est-321@ezweb.ne.jp からメールをお送りします。
その際残したくない写真がございましたらお伝えください。速やかに削除いたします。
お送りする際に、私側で残したくない写真があれば削除させていただきますので、お送りしたお写真はご自由に使っていただいて構いません。
※外へ発信が目的の撮影ではございませんが、お写真をSNSなどにアップさせていただく可能性がございます。NGの場合はお伝えください。
できるだけ対等な立場でワークショップを行えるように細心の注意を払いたいです。
ご自宅のお写真をお借りするというのも、なかなかハードルの高いお願いだと思っております。
アンケートに記入いただくことも、連絡先をお伝えいただくことも、当たり前のことではないと思っております。
並行して展示を行うのは、写真のイメージを共有できたらいいな、私の生活の一部も置いておきたいな、という気持ちがあります。
ワークショップの流れ
タイムスケジュールはまだ確定ではございませんので変更があるかもしれません。
3/11と3/12の2日間行う予定です。
①10:30〜12:00
②14:00〜15:30
③16:00〜17:30
の3回を予定しています。
予約開始はもう少し先になります。
参加費は500円になります。
はじめに、会場の3階で全体の説明とアンケートの記入をしていただきます。
日暮里南公園(片道10分程度)を折返し地点として、写真を撮っていきます。
会場に戻ってゴールするか、タイムオーバーになるか、36枚のフィルムを撮り切るかで終了です。あるいは、冷えやら花粉やら疲労やらで耐えられなくなったら帰りましょう。
会場で解散となります。
後日、メールでデータをお送りしたあとに再度アンケートをご記入ください。その写真を撮ってご返信いただきます。
小池側でも似た内容のアンケートを記入しますので、交換しましょう。
写真は、コンビニなどで簡単にプリントできる方法も検討中です。
以上がワークショップの流れになります。
おわりに
1期に参加する段階で、「3年間は続ける予定です」と聞いていた。あっという間の3年。来年以降は続くか終わるか分からない。
1年目は外にアウトプットしていく機会も少なく、コロナ渦で会うのはオンライン上だけ。「よくわからない」と辞めていく人も多かった。
2年目、3年目はオンラインからオフラインへと、少しずつ交流が行われるようになり、さらに外への交流へと広がっていった。
力みまくる俳優としての脳が羽休めできる、ひとつの居場所として過ごしてきました。
正直参加者が増えれば増えるほど赤字になっていくこの企画。フィルムなどに拘っているから首を絞めるのです。
だけどいつまでできるか分からないから、今やるのだと思います。
3年間の集大成、って大仰すぎるけれどちょっくらやってみます。
来ていただけると嬉しいです。
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