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歌姫ダイバーシティ、今宵も歌謡曲に魅せられて

■「魅せられて」出発の、なるほど!ザ・ワールド経由、FUNK FUJIYAMA行き。

どうも!オーキです。
毎月1回の音楽雑談も今回で4回戦目を迎え、まとめタイトルがつきましたー!
その名も「歌謡曲に魅せられて」。言わずと知れた昭和歌謡の名曲から拝借させていただきました。

「魅せられて」といえばサビの盛り上がりに向け、クジャクの羽のように袖がシンクロして開くのが定番ですが、ジュリーこと沢田研二さんのTOKIO(1980年)とかもパラシュート背負っていたり、当時は衣装もミニマルな舞台装置みたいに、歌の世界観を効果的に表すエッセンスのひとつとして考えられてたんでしょうね。

ちなみに、衣装といえば80年代の人気番組「なるほど!ザ・ワールド」の楠田さんの衣装もぶっ飛んでいてよかったですよね。実用性ゼロ、クイズ番組のアシスタントには収らない独立した銀河系のように、アイデンティティーを放っていた記憶があります。
本編には関係ないけど遊び心に富んでいる感じが、見ているこっち側にも伝わって一緒になって楽しんでいる感覚になるから、よりワクワクして番組を見ていたのかもしれません。

そういう「遊び心」が着火点となって、80年代のテレビやアイドル、カルチャーに反映されていたのではないかと思います。音楽シーンも、レコードを聴くから魅せるエンターテイメントとしてMVやダンス要素、日本語ラップなど活性化していったのかもしれません。

そうおもうと、メジャーシーンに米米CLUBが登場して「FUNK FUJIYAMA」を歌うSONYのマルチディスクプレーヤーのCMを目にしたときは「何だろうこの大人達は!?」とまるでサーカスを見たような、現実離れした面白さがあったのを思い出しました。
しかもそのCMのキャッチコピーが「音楽見物」で、商品だけではなく「見る楽しさ」もある米米を表しているコピーにもなるし、時代のトレンドまで短く言い表すような上手いキャッチコピーだったりして、いま書いてて驚きました。

聴いて、見て、踊って楽しむマルチエンターテイメントで魅せるバンドが放った「FUNK FUJIYAMA」のキャッチーなファンキーさにヤラれた小学生の私は、CDショップに自転車を走らせました。数あるエンターテイメントの入り口のひとつに米米CLUBがいたことに、あらためて気付かされた気がします。滝に打たれたような感じすらあります。メジャーバンドという括りだと、今は米米みたいなバンドって他には居ないのかもしれませんね。

「FUNK FUJIYAMA」(米米CLUB/1989)

さて、魅せられてからのバックトゥーザ’80sとなりましたが、真昼の蜃気楼のように、フロム・ザ・エイジア(@佐賀)から今月も風の吹くまま気の向くまま、おもに歌謡曲のことを雑談しようと思っています。よろしくおねがいします!

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♪「魅せられて」(ジュディ・オング / 1979年)

優雅なサビのメロディーからかけ離れた、想像以上に極まったテンションで迫ってくるイントロの迫力と、サビ以外の少し不思議な歌詞も味わいたい1曲。

注目フレーズはココ!「♪レースのカーテン引きちぎり体に巻き付け踊ってみたくなる~」登場人物は心のままに奔放で無邪気な女性なんでしょうか…。恋にのめりこんでいる時の浮足立った感じがしたら、この歌詞で自分を確認する。そんな自戒の念が込められたフレーズかもしれません。

というわけで、今回は「歌姫ダイバーシティ」と銘打って魅せられて版、女性アーティストの祭典、NAONのYAON 。女性アーティストと歌謡曲に注目していきたいと思います。

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■昭和歌謡のあざとかわいいソング。山本リンダ「きりきり舞い」

日曜の夕方18時、「ウララ ウララ ウラウラで~」山本リンダの歌マネをする、ちびまる子ちゃんを思い出します。同じく西城秀樹さんも、ヒデキ好きなまるちゃんのお姉ちゃんから教えてもらったといってもいいぐらい、まるちゃんから教えてもらった昭和の歌謡曲ってけっこうあったんだなと思います。

♪「狙い撃ち」(山本リンダ/1973)

まるちゃんから火が着いて山本リンダさんの「狙いうち」がTVなどでリバイバルした当時も、年を感じない変わらないスタイルと美脚を披露し、肉食系というより猛獣系といったほうがよさそうな歌と狙いうちダンスに圧倒されたという印象だったのですが…彼女の「きりきり舞い(1974)」を聴いてからは、私の山本リンダ像が一変しました。
これが天才バカボンが言ってた「西から昇ったお日様が東へ沈む」ということか…。リンダに見せてもらった気がしました。

ORANGE RANGIにも同名の曲がありましたが、「きりきり舞い」今聴いてもまったく古くない洗練されたポップスで、70年代の初頭に渋谷系をかなり先取りをしていた山本リンダの1曲です。

情熱的に激しく踊るリンダさんが歌っているとは思えない、フレンチポップシンガーのようなコケティッシュな歌い方に、耳が困惑すること間違いありません!
2分余りのリンダカルチャーショックを体験してみてください。

♪「きりきり舞い」(山本リンダ/1974)

歌い方からして「狙い撃ち」とはまったく違う山本リンダ像が見えたと思います!
グッドメロディーで良質なポップスの前では、フラフラ~と男女問わず魅力的なリンダに引き寄せられてしまう曲ではないでしょうか。

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■ポップなメロディーに浮かぶ女性の業。
歌詞に隠れたギミックから、アンサーソングを導き出す!

しかしそれ以前のヒット曲「どうにもとまらない」「狂わせたいの」「狙いうち」数々のヒット曲でみせた系ソングとは違うからと油断してはいけません!曲調は甘めですが、何を歌っているのかよーく耳を澄まして歌詞を聴くと、男性が女性に求めてしまう癒しや安らぎは微塵もありません。

一度狙いをつけたら絶対に逃さない「どうにもとまらない」「狂わせたいの」「狙い撃ち」肉食系3段活用の応用編だと思って聴いてみてください。リンダスピリッツがしっかり歌詞に受け継がれています、小悪魔どころですまない感じが伝わってくるはずです。

♪~
はらはらさせごめんね いいこでなくてごめんね 
浮気ぐせはなおらないのよ

夜風が甘いだけでも 祭りが近いだけでも
からだ中が燃えてしまうの

たいくつな時はしにそうになるのよ
突然悪いささやききこえ 私はあなたを
捨てて 捨ててしまう
きりきり舞いであなたの 人生さえも狂わせ
悪いことをしたと思うわ

(きりきり舞い / 作詞:阿久悠/ 作曲:都倉俊一)

この状態は彼女から「食うか食われるか」迫られている渦中にいると言ってもいいでしょう。いや、リスナーは食べられるのを待つオスのカマキリ同然かもしれない。きりきり舞いしなきゃいけないのは、実はリスナーの方だったのです!ドーン。
色香に浮かれていたら最後、笑うせぇるすまん喪黒福造の思うツボだった…もう一回ドーン!みたいな。

この女の子は「浮気ぐせはなおらないのよ」って出だしから言い切ってますよね。
強力なパンチラインすぎて、反撃の一手すら封じられてしまったのも同然です。
面と向かって好きな人からいわれたとしたら、瀕死のカマキリになる、きっと。

作詞は、昭和歌謡のストリーテラー阿久悠先生です。正気と少しの狂気をちらつかせる感じ、狂気のチラリズムが絶妙ですね!

そして、さらに歌詞を読み進めていくと、「♪人生さえも狂わせ~」という一見すると怖いフレーズが登場します。

すでに勘のいいリスナーは、お気づきだと思いますが…
まだ気付いてない人は、このフレーズ板書!テストに出ます!!
ここは曲の構想を読み解く、重要なフレーズなのです!

そもそも、可愛いかったリンダがなぜこんな小悪魔になってしまったのか、その理由が
このフレーズの中に明かされているんです。

同じコンビで作詞・作曲をしている山本リンダさんの「狂わせたいの」に対するアンサーソングになっているんじゃないかと推察されます。
自分の目で確かめたい方は、「狂わせたいの」の歌詞を読んでからまた戻って来てください。

ちょうど今話題のテレビドラマ、物語が佳境に入った坂元裕二さん脚本の「大豆田十和子と3人の夫」が、同じクールで物語を第1章と2章にわけて話題になっているように、

ヒット曲「狂わせたいの」に対して、作詞かと作曲家が遊び心で作った、第2章となる曲だったんじゃないかと思います。コナンのような名推理で、先ほどまで瀕死のカマキリ状態だった方も、爽快な気分になったのではないでしょうか?

極上のメロディーはリリース後、様々なアーティストにカバーされています。
イモ金トリオのハイスクールララバイの泣きメロが好きな方、ニュー・ウエーブやテクノポップ好きは近田春夫&ハルヲフォンのカバーや、シティポップ好きは、やくしまるえつこさんのカバーなど聴き比べてみるのも楽しいと思います。

♪近田春夫&ハルヲフォンver.

やくしまるえつこ Ver.

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■可憐な容姿と声のギャップにシビれる。藤圭子の「新宿の女」

日本を代表する女性アーティストのひとりといえば、10代の頃からヒットチャートの常連で天才シンガーソングライターとして、幅広い世代から支持される宇多田ヒカルさんだと思いますが、彼女の母親で演歌歌手だった藤圭子さんのドキュメンタリーを見てからというもの、藤さんの歌を思い出しては度々耳を傾けて、心をシビれさせています。

歌手デビューはヒカルさんと同じく10代で、容姿はアイドルみたいに可憐な美少女なのに、歌い出すとドスが効いたハスキーボイスで、ダイナミックに演歌を歌いあげるギャップ差に戸惑ってしまい、二度見を三度してしまうぐらいに訳がわからない感じになります。

あえてギャグで例えるなら…(思いついたままキーを打ってます)、サバンナ八木さんの「ブラジルの皆さん聞こえますかー」と叫ぶギャグ。あれを実地でやるとして、その距離=顔と声のイメージは、どちらも果てしなく遠いんです。

音源を聴いた後に、個人的には女優の北川景子さん似の可憐な人が歌っている姿を見ると「この人がうたっているの!?」と、サンボマスター現象が脳内で起こるはずです。

「演歌の星を背負った宿命の少女」としてデビューを果たし、堂に入った歌い方と節回しで、17歳の少女が歌っているとは思えない、歌に説得力があります。天才歌手と言われた歌声を聴けば、時代を超えてヒカルさんと同じく今も幅広い世代の人の心を震わせる「本物」を感じる曲じゃないかと思います。

♪「新宿の女」(藤圭子/1969)

♪~
バカだな バカだな だまされちゃって
(新宿の女/藤圭子)

この部分を聴くたび、悲哀に満ちていながらもダメな自分を笑い飛ばしてくれる感じがして、こじらせすぎて焦げ付いてしまった恋愛がフラッシュバックしても、「色々大変だったね」とそっけなくも心根はあったかいスナックのママに話を聞いてもらってる気分になります。もはや10代とか言ってられない、年齢は関係ない説得力のある歌声です。

しかしこの曲で一気に時代のスターとなった後はデビューから10年ほどで一度引退をされています。理由はノドを酷使しすぎてポリープの手術を受けたところ、彼女ならではのザラついていたハスキーボイスが、きれいに出るようになってしまい自分が思うように歌えなくなってしまったからだといいます。

作家の五木寛之さんが歌を聞いて「これは正真正銘の怨歌である」と表現したともいわれる藤さんの歌声ひとつで描いていく歌の世界観を存分に味わってみてください。

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■「女の子は誰でも」東京事変の音楽で魔法をかける

「きりきり舞い」を歌う山本リンダさんを知って、声色と歌い方で歌の表情を変えることも出来るし、声ひとつで変幻自在に「変身」することもできてしまいます。

そう思うと、シンガーソングライターのaikoさんや椎名林檎さんは、曲中に「あたし」「~でしょ」「~じゃなきゃ厭よ」など、まるでリスナーに向かって喋っているようなフレーズを時に可愛いく、セクシーに声色を変えながら歌っています。もしかしたら、歌っているというより「曲を演じている」感覚に近いのかもしれません。

そこでピックアップしたいのが、2020年に再生したバンド東京事変の「女の子は誰でも」です。この曲は椎名林檎さん本人が出演する化粧品のCMソングでした。今までのバンド東京事変にはなかった曲調で、CMを見て林檎さんが歌っていることに驚いた人もいたのではないでしょうか。

東京事変でゲシュタルト崩壊を起こす、これまで使わなかったという「女の子」という歌詞にヨーロッパ映画の音楽みたいなアレンジが素敵な1曲です。

♪「女の子は誰でも」(東京事変/2011)

椎名林檎さんといえば、いまも鮮烈に残るのはソロの時代の「ここでキスして」をギターを弾きながら巻き舌っぽく歌い、ヒールでペダルを踏む姿のカッコよさに衝撃を受けました。

その後もナース姿でガラスを割ったり、ロックな感じなのかと思えば艶っぽい着物姿になったりビジュアルも含めて、椎名林檎というアイデンティティーを毎回エンターテイメントショーに仕立てて、お客さんを楽しませているアーティストだと思います。

タイトルから「女の子」という言葉が入ったこの曲は、一聴すると東京事変らしくない曲です。歌詞を書いてきた林檎さんも今まで使ってこなかった言葉だったそうで、2011年当時バンドとしても脂がのっていたという話からも、固まってきたバンドサウンドに新しい変化を起こす「魔法」をこの曲でかけたのかもしれません。

曲のアレンジもバンドで行わず、映画やドラマ音楽を手がける服部隆之さんが手掛けています。ミュージカルのような華やかなアレンジに映える、林檎さんの歌声を聴いていていると
アラフォーも「女の子」に戻る魔法をかけてもらったような気分になるから不思議です。

♪~
女の子は誰でも魔法使いに向いてる 
(女の子は誰でも/東京事変)

「女の子は誰でも」を聴いた後は、対極に位置する曲「喧嘩上等」の歌い方を聴き比べてみてほしいです。同じ林檎さんが歌っているの?というぐらい、声の豹変ぶりのギャップに驚かされます。この歌では藤圭子さんのような圧巻のハスキーボイスに痺れます。

♪喧嘩上等(東京事変/2006)

東京事変の2曲いかがだったでしょうか?どちらも全く違う声のアプローチで、どんな曲でも歌い、演じ分けられる椎名林檎さんのエンターテナーぶりが存分に楽しめます。

東京事変はメンバーそれぞれが曲をつくれるからこそ、椎名林檎ソロとまた違った歌い方だったりバンドから生まれる多彩な楽曲となるんですね。アルバム「音楽」でも聴き比べを試してみてください。今までの東京事変とは違うゲシュタルト崩壊が起こるかもしれません!

と言うわけで、今回は女性アーティストと歌に注目してみました!
来月も気になる歌謡曲をシェアしたいと思います!では!

2020年元旦零時、新曲の配信と共に突如再生を表明、以来EP「ニュース」をはじめ、ドラマやニュース番組、映画の主題歌、ゲームプロジェクトのテーマソングなど次々に新曲を発表してきた東京事変。
遂に10年ぶりとなるオリジナルフルアルバム、その名も「音楽」(読み:ミュージック)が、6/9“ロックの日”にリリースされる。
2年の歳月をかけて制作され、満を持して発表された本アルバムのリリースを記念し、スペースシャワーTVでは6月のイチオシアーティスト「V.I.P.」として東京事変を総力特集いたします!


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