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2022夏スタディツアー参加リポート8/26 JAXA筑波宇宙センター 宇宙飛行士健康管理グループ

【SMJYCのスタディツアーに参加!】

 弘前大学医学部医学科1年の吉田菜月です。ずっとあこがれだったスタディツアーについに参加することができました!当日のスケジュールは以下の通りです。

13:00 TX駅(つくばエクスプレス駅)集合
13:30 受付、レクチャー開始
16:00 記念写真撮影
16:30 質疑応答
17:30 解散

 私は今回初めてJAXAに行きました。漫画や写真で見たことのある景色を目の当たりにしたときから、解散するときまでずっと興奮状態でした。もうとにかく楽しかったです。

【部屋に入ると…】

 レクチャーを受ける部屋に案内されると、JAXAのHPや記事で拝見したことのある憧れのフライトサージャンの方々がいて、とても感動したのを覚えています。 レクチャーをしていただいたのは、速水 聰さん(参考:速水 聰:星出宇宙飛行士の健康を地上から見守る|話題の人|三田評論ONLINE (keio.ac.jp))です。フライトサージャン(以下FS)とは、航空宇宙医学の知識を持ち、パイロットや宇宙飛行士の健康管理や医学運用、航空宇宙医学に関連する研究開発を行う専門医のことです。1人の宇宙飛行士につき1人の専任FSが担当し、飛行前、飛行中、飛行後の体調管理をサポートしたり、国際会議に出席して国際調整を行ったりします。より詳しい説明はJAXAのホームページをご覧ください。


【レクチャー開始!】

  そうこうしている間に、レクチャーが始まりました。実際のFSの方々と、フライトサージャン支援医師の方々からリアルなFSの日常をお聞きする機会に恵まれて、本当に光栄でした。まず、第三者視点からはギャップのある詳しい仕事内容について教えていただきました。やはり実際に現場で働いている方の話は説得力があります。速水さんは2021年4月23日から11月9日までISS(International Space Station:国際宇宙ステーション)船長としてクルーの指揮をとった、星出彰彦宇宙飛行士の専任FSを務めました。リハビリテーション医学を専門とし、2017年4月からJAXAでお仕事をされています。FSの役割として、
①国際調整-国際会議などに参加し、各宇宙機関のFSと交流する。
②飛行前
 ・体力検査
 ・NBL(Neutral Buoyancy Laboratory:無重量環境訓練施設)、NEEMO(NASA Extreme 
  Environment Mission Operations:NASA極限環境ミッション運用)、サバイバル訓練に同行し体調管理
③飛行中
 ・身体測定(身長、体重、視力など)
 ・EVA(Extravehicular Activity:船外活動)の準備
④帰還
 ・リハビリ
があると教えていただきました。アメリカではアメリカで対応できるFSが基本的に業務をこなし、関係ができてくると診察を任せられるようになるそうです。打上げ日の一週間前から打上げ日まで宇宙飛行士と寝食を共にします。業務は思い通りにいかなかったり地味なことが多いけれど、これがあるから楽しめたとおっしゃっていました。一番印象に残った話は、FSに必要な能力です。それは、平均以上の臨床能力、高いコミュニケーション能力、言語能力です。言葉の壁、非医者との壁の間に入るためにはこの2つがとても重要だそうです。JAXAの医学運用チームは27名+αいて、そのうちFSが6名だそうです。精神科、神経内科、リハビリ科、麻酔科、心臓外科、家庭医など多様な専門医が集まっています。宇宙医学はまだまだ発展途上で、宇宙での人間の体について分かっていないことがたくさんあります。そのため、様々な専門知識が集まることで宇宙医学をどんどん究めることができます。
 また、将来の宇宙開発のビジョンも話題に上がりました。
【民間企業の宇宙ビジネスが台頭】
     ↓
【FSがJAXAの専門職としてだけではなく、民間企業での需要が高まる】
     ↓
【JAXAは宇宙ビジネスの台頭を支援していく】
アメリカのNASAとSPACE Xを見ていればわかるように、国と民間が手を取り合えば、宇宙開発はますます促進されるでしょう。そんな未来に思いを馳せることができてとても幸せです。
 その後の質疑応答では様々な話題が飛び交いました。宇宙飛行士に文系の方も応募できるようになったなど宇宙飛行士の多様性の話や、民間企業の宇宙産業参入に伴う法整備の必要性など、どれも興味深かったです。
私にとって一番印象的だったのは、これからFSを目指すFS業務支援医師の方々の話です。1人目の方は宇宙開発に携わりたいという思いがずっとあり、FSになることを目標とするだけでなく、例えば英語の勉強に励んだり、救急など他の専門も幅広く勉強することで、チャンスを広げる作業を続けているとおっしゃいました。2人目の方はもともとスポーツドクターを目指していましたが、数年前から宇宙に興味が出たのでFS業務支援医師を志してみたところ、「1人の健康な人を健康なまま責任をもって診診る」というのは、スポーツ医学に通ずると気づいたそうです。私自身がFSを目指していることもあり、FS業務支援医師になるまでの過程やFSを目指す理由などからとても刺激を受けました。お二人に共通していたお話は、宇宙とのつながりを持ち続けること、常にアンテナを張り続けることで自分にとって絶好のチャンスが巡ってくるということです。夢を追いかけるうえで忘れてはならないことだと思いました。
 また、レクチャー全体の中で度々将来のFSの姿について触れる機会がありました。今までは宇宙飛行士という超健康体の人たちが宇宙に行っていましたが、これからはそうとは限りません。その時どんな医学基準が必要なのか。放射線量を考慮したFlightのタイミングの基準作りは絶対に必要です。また、専任FSとしての業務に加え飛行認定前の医学検査や訓練中の体調管理はどう行っていくのか。民間の宇宙企業がどんどん活発化したとき、JAXAはどのような役割を担っていくのか。FSは、これから活性化する宇宙観光と健康の懸け橋となるような存在になっていければいいとおっしゃっていました。研究の面では、宇宙で子供を産むことはできるのか、など将来の話をし始めたら無限に続いていく気がしました。宇宙のいいところで、私の好きなところだなぁと思います。

【記念写真撮影タイム】

 話が一段落したところで、記念写真を撮ることになりました。全体での写真だけでなく、速水先生のブルースーツを着させていただきとても感動した時間でした。参加したみなさんも興奮冷めやらぬといった感じで、手が空いている方々にガンガン質問しに行っていました。宇宙飛行士のミッションを支援した人、これから宇宙業界を担っていく人、宇宙にあこがれを抱く人。その空間は宇宙好きであふれていて、とても貴重で幸せでした。この空間の積み重ねが、世界中で昔からずっと行われてきたから、今の宇宙開発があるんだなとしみじみ思いました。

【感想&まとめ】

 今回は自分の夢を明確にするとても良い機会で、FSという仕事のリアルを実感することができました。そしてたくさん刺激を受けて、やはり宇宙っていいな、最高だなと強く思います。皆さんも、自分のやりたい分野に早いうちから飛び込むことで、たくさんの刺激を受けてほしいと思います。

文責:吉田菜月(弘前大学1年)



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