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リアルの補完としてオンラインを使った仕組み(2/2)

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ファンと選手それぞれの想いの伝え方

高坂⚾:コンテンツ事業として、チームや選手というコンテンツの価値向上に注力しなければいけないと思っています。今まではコンテンツを生かしてスタジアム周辺に住む人たちに来場いただくことが中心でしたが、価値を高めていけばスタジアム周辺に住んでいる人たち以外にも、価値を提供できることは考えられると思うんですよね。

スタジアムからの距離に関係なくコンテンツに価値を感じていただければ、事業としてはそこに対価を生じさせることができます。なので、コンテンツの魅力をどうやって高めていくのか、ブランド力をどう高めていくのかという、すごく本質的だけれど抽象的になりがちなところですが、ここをちゃんとやれる事業会社がこの先も生き残っていけるのではないでしょうか。現在の球団社長・河合はこの領域の知見が高く、マリーンズとしてしっかり向き合ってやっていこうと、号令をかけてくれています。

どんなアクティベーションをするとユーザが反応してくれるか、コンテンツをどう見せるとそこに盛り上がりが生まれるかを、しっかり考えなければいけないと思っています。今は、新型コロナウイルスの影響が起きる中で社内のあらゆるメンバーが多くの知恵を絞り、さまざまな取り組みを行っています。試合が行われていない期間に「withMarinesプロジェクト」というプロジェクトを立ち上げて、試合がない中でも過去の試合をYouTubeライブでアーカイブ配信したり、動画をつくって家にいても体を動かせるようなコンテンツをつくったり、TwitterやInstagramを使って選手のオフショットや、この時期だからこそできる取り組みをたくさん行いました。

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また、6月から無観客試合、そして来場数制限の中での有観客試合が行われる中でも、感染予防対策と並行して様々な取り組みを行いました。
例えば無観客試合でもTVやOTT配信を通してマリーンズを応援してくださるファン向けに販売したリモート応援チケットは数万枚の販売につなげることが出来ましたし、同じく無観客試合の外野席に大きな的を置いて、ホームランターゲットとしてスポンサーアクティベーションに取り組み、大きな反響を得ることもできました。

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こういった取り組みで、今はまだ社内で準備をしているものもあるのですが、一つ一つの施策にユーザがどう反応するのかは、定量的にも定性的にもしっかり見るようにしています。

井上🍔:野球に関わらずスポーツというものを見たときに、コンテンツとしてどこにファンが面白さを感じるのかって大事な問いだと思っていて、例えば、スポーツとしてのゲーム性、野球であれば点を取って取られてという中でホームランという一発逆転があって、最後に9回裏はどうなります?!という話が面白いと思っている人たち、あるいは一個一個のプレーが面白いと思っている人、ここでこのカーブに対して体が崩れながらもホームランみたいな、ワンショット、ワンショットは切り取れるじゃないですか。イチローのレーザービームもそうですけれど、そういうプレーのこと。あるいはチームワーク、あるいは選手個人の人間性みたいな、あまりいい例が思い浮かばないんですけれども個人として好きだということ。あるいは球団のカラーが出ているみたいな、いろんな打ち出し方があって、もしかすると今の高坂⚾さんの話だと、その一個一個を投げながら今はファンの反応を見ているのかもしれないですけれど、実際問題どこなんだろうなと個人的にあまりいい答えを持っていないんです。

今、やられているwithMarinesだと、プレーや選手としての個性を打ち出していっているのかなと思っているんですけれど、その辺はどうですか。

高坂⚾:スポーツコンテンツは何が面白いか考えていくと、コンテンツ自体が感情を持っている人だということと、あとはライブ性だと思ってます。コンテンツが人、、、これは言い方はちゃんと考えたほうがいいと思いますが、選手だって人間なので応援されるとやっぱり違うみたいなんです。それはそうだなという感じですよね。大きな声援をもらっている中でプレーをして、その声援に応える形で自分1人では出せなかったようなパフォーマンスを選手が発揮する、そうしてファンが投げかけたものがちゃんと返ってくるのが他にはない価値だと思っています。

もう一つのライブ性は、その時々、その瞬間に、まだ次の瞬間の答えが分からない。ホームランをいつ打つか分からないし、次も三振を取るのか打たれるのか分からないというライブエンターテインメントとしての魅力の二つなのかなと思っています。

これらを、どう魅力と感じるのかは受け手によって違うでしょう。人によっては選手の裏側、境遇や選手自身の悩みがすごく自分とシンクロして好きになる人もいるでしょうし、単純に爆発する熱量が楽しいという人もいて。ニーズはそれぞれですが、この二つの特徴を押さえながら、しっかり適応できるような仕組みをつくることが重要なのではないかと思います。

そういったことを踏まえると、無観客試合は難しい状況でした。今はスポーツ以外でも、Zoom飲みとか、まさにこのディスカッションもZoomでやっていますけれども、ちょっとしたコミュニケーションを取ることはできるんですが、無観客試合の中でファンの声援を選手にどう伝えるか。今までプレーの瞬間にスタジアムで、高い熱量でインタラクティブコミュニケーションが取れていたのが、無観客試合だとできなかったり、間引き試合だと限られてしまう。今回無観客試合の期間中は、Zoomをビジョンに映してみたり、応援団と連携して事前収録した応援歌を本来流れるであろうタイミングに合わせて流してみたり、スマートフォンから歓声や拍手を送られるYAMAHA社のリモートチアラーを導入もしましたが、どうやって選手とファンが熱量を共有しあうのかということは、引き続き考えていかなければいけないと思っています。

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井上🍔:どこの試合だったかは忘れたんですけれど、ファンの人がマスコット人形を送って、それがネットに流れていて、それが日に日に増えていって。

高坂⚾:韓国の野球リーグですね。

井上🍔:ファンが「俺も一緒にここで応援しているよ」みたいなことを言うことによって、無観客でも選手たちは一緒に応援されているという感情を持つのは、面白いと思いました。

高坂⚾:私たちも引き続きトライはしていくんですが、やはりリアルの場にまさるものはなく…。とにかく今の制約の中でできる限りのことをやっていこうと思っています。ここをちゃんと発展させることができれば。元々、新型コロナウイルスに関係なくスタジアム外でマリーンズの試合を見てくれている人はたくさんいますからね。

益戸🧢:そうですよね。

高坂⚾:その人たちの声を選手に伝える手段、チームに伝える手段の仕組みを、今回の試行錯誤を通して新しくつくることができれば、この先も続けていけることになるんじゃないかと思います。それはもちろん、応援だけではなくて本来はスタジアムにいるからこそ感じられる、ホームランを打ったときや、三振を奪った時のファン同士盛り上がりも含め、です。

井上🍔:一体感とかね。

益戸🧢:まさにライブビューイングですよね。

高坂⚾:はい。ここもなかなか難しい部分です。これまでスタジアムにいる人は、5人ぐらいでビールを飲みながら観戦して、ホームランを打った瞬間にみんなでハイタッチして盛り上がる、みたいな楽しみ方がありましたけど、リモートだとなかなか難しい。でも、元々スポーツ実況ってインターネット上で盛んに行われているじゃないですか。国内だと2ちゃんねる(5ちゃんねる)でも実況板がありますし、ここ数年はTwitterのハッシュタグもその役割を果たしています。マリーンズの場合は「#chibalotte」というハッシュタグがあるんですけれど、試合を見ながら書き込む人がたくさんいるんです。だから、もともとスタジアム現地じゃなくて場を共有する仕組みはあるんですが、それでも当時からちょっとしたタイムラグがあったり、本当のリアルな熱量はハッシュタグ上だけだと伝えきれなかったり、感じきれないので、もう少し方法を探れないかなと、今は思っています。

井上🍔:もしかすると慣れなのかもしれないなと。もともと僕自身が野球を見に行っていて思うのが、正直言うとプレーの一個一個を見るんだったらテレビのほうが絶対にいいんですよ。

益戸🧢:見やすいですよね。

井上🍔:正直、ホームランを打ったときの球は、球場に行っていたら早すぎて見えないんですよ(笑)。一方で、清原がおそらくホームランを打つだろうなという、東京ドーム全体が打つぞみたいな感じになっていて、しかも清原がホームランを打ったときの、あの爆発的な地鳴りのような一体感は、そこの場にいないと無理だなと。

ただ、それを100%伝えなかったとしても、7~8割ぐらいがこういうオンラインや、あるいは球場外でも共有できれば、それはそれでもしかすると十分なのかもしれないなと。いいところ取りじゃないですけれど、いいプレーを見ながらも一体感で盛り上がれるみたいなことができると、すごくいいなと思います。

高坂⚾:おっしゃるとおりですね。完全なる置き換えというよりは、リアルの補完としてオンラインを使った仕組みが、強化できるといいのかなと思っています。

井上🍔:オフライン、オンラインという言い方にするのか、リアルライブとリモートライブという言い方にするのか分かりませんけれど、今は無観客という形で、リアルライブができないじゃないですか。そうすると、ますますリアルライブっていいよねという話になるんです。これはめちゃくちゃポジティブに考えると、「え、ロッテの試合を、生で見にいけるの?」みたいな感じになって、ますますプレミアム性が高まる可能性もあります。

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一方で、リモートライブのほうが、実は柔軟性が高いかもしれないじゃないですか。1列にぶわっと並ぶお客さんの真ん中の席かみたいなときに、「すみません、すみません」というのがリモートだと要らなかったりもするので、そういう良さと課題がよく分かるようになったからこそ、このシチュエーションではこういうふうにしましょうと。

これがもっと加わっていくと、ファンの可能性が数百万人から突然1億人になる可能性もありますし、何十億人になる可能性もあって、俺はついに来月ロッテの試合を生で見に行けるんだよねみたいになったり。

益戸🧢:リアルライブの価値が上がりますよね。ちょっと業界は違いますけれど、学習塾の1例として探究学舎という学校があるんです。そこっはもともと三鷹に教室があったんですが、いち早くオンラインに切り替えたんですよね。オンラインに切り替えることによって、生徒数が爆発的に伸びたんですよ。

通常の学習塾とは違って子どもがわくわくするような偉人とか、ジョブズの話をされていて、心をつかむんです。そうすると、まさに野球の話じゃないんですけれど、授業という一つのコンテンツと、学校の教室にいる先生というコンテンツができる。今はZoomで授業をやっているのですが、授業外でもクラスをSNSでグループをつくっているので、そこでの友だちとのつながりもできる。

これが晴れてコロナが明けた後に三鷹の教室やキャンプに行くことによって、やっとあの先生と会えるとか、やっとあの友だちとリアルに会えるという価値がめちゃくちゃ上がると思うんです。なので、オンラインというリモートライブをうまく活用することによって、リアルライブの価値が高まってくるんじゃないかなと。

高坂⚾:そうですね。やり方次第でまだまだリアルライブの価値をしっかり高められるし、そうしていかなければいけないとは思っています。あとは、リモートライブと井上🍔さんがおっしゃっていましたけれどもリアル以外の楽しみ方をしっかり増やすことができれば、楽しみ方の幅が広がる=ファンの幅も広げることができます。今のマリーンズのファンは統計上100~150万人ぐらいいるのですが、それを今の仕組みでは簡単に10倍にすることはできませんが、そこを目指していけるようなことに取り組む良い機会に今はあるんじゃないかと思っています。

個の魅力がチームの魅力

井上🍔:まさにそうですね。あと1個お伺いしたのかったのは、千葉ロッテというチームとしてチームのファンを増やすことを命題に考えているのか、選手個別のファンを増やしていくことなのか、重要度というか力の掛け具合に興味があります。

当然のことながらチームはすごく大事なんですけれど、今後のことを考えるとコンテンツとして比較的、個が重要視されていく社会になっていきそうな気もしていて、移籍とかがあるとなかなか難しいんですが。例えば、今は150万人という話がありましたが、選手一人一人が20万人のファンを持てば複数回答ありというのもあるのですが、単純に9人で180万人じゃないですか。あいつ100万人のファンを連れているぜという人が移籍するだけでも、全然、違う形になったりとか。

益戸🧢:YouTuberを抱えているUUUMさんとかは分かりやすいですよね。チャンネル登録数が何万人いる人たちが、がさっと集まると、UUUMとしては何万人のファンがいますみたいな。

高坂⚾:今の時代の流れとしては個の力が発揮しやすくなってきていて、スポーツでいうと個人アスリートの方がすごくやりやすくなっているんじゃないかなと思います。一方でマリーンズのようなチームコンテンツを抱える事業会社の場合はどうなのかというと、これは個人的な考え方にはなるのですが、引き続きチームとしての魅力を高めることが重要じゃないかと思っています。これは、もちろん個の力を軽視するわけではなくて、スター選手をしっかり育てていかなければいけないんですが、個としての価値にさらにレバレッジを掛けるのであれば、そこはチームの魅力を高めることなのかなと思っています。個一人一人だけでは価値の上限があったとしてもだとして、チーム全体で見たときに、マリーンズの選手だから応援したいと思ってもらえるような仕組みにしていたほうが、事業会社としては安定します。

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井上🍔:それはそうですよね。

高坂⚾:今でも、FAで選手が移籍するとその選手にひも付いて応援するチームが変わる人もいますが、長くファンでいてくれている人であればあるほど、マリーンズの選手だから応援する、ということが多くなります。そういう人たちをしっかり増やしていきたいです。

これからの観戦スタイル

井上🍔:地域密着は、絶対にそうしたほうがいい気はしています。また話がずれますが、今後、リモート的な形でライブを視聴する環境を、もっと個人的には整えていきたい中で、解決できる課題の一つに遠方のファンをうまく囲い込むことができるかと思っているんですが、いわゆるアウェーの試合。

益戸🧢:野球だとビジターって言いますね。

井上🍔:ビジターの試合って、ファンの人は行くのか、それとも千葉だったら仙台ぐらいまでは行くけれど、さすがに札幌までは行けないなみたいな、そういう感じなんですかね。

高坂⚾:熱狂的なファンの方は、来ていただけますね。パ・リーグだと、札幌、福岡とか、本当に北から南までだいぶ移動距離があるんですが、仕事の合間を縫ってマリーンズを応援することが生活の一部であったり、ビジター観戦が年数回の家族旅行です、となっている人もいます。

ですが、それが数千人、数万人の単位で存在しているかというと、なかなか難しくて。そういう人たちは大変ありがたいんですが、そうじゃない人たちがもう少し気軽にリモートでもマリーンズを応援できる環境ができていくといいなと思っています。

井上🍔:まさに、そういうのをスペースマーケットで提供できるといいなと思っていて、それこそ分かりやすいじゃないですか。千葉ロッテマリーンズのファンの方が千葉周辺にいるんだったら、特に海浜幕張の辺りに応援スペースを持ち掛けて、そこでしか体験できないものを置くのも一つありだし、今後は無観客試合や、あるいは入場制限がかかったときにもそういったことができます。

個人的にやりたいことが一つあって、選手がこういうことを体験しているんだということを一緒に体験するというのは、この5年で絶対にできるようになると思っています。

例えば、応援している投手が投げた球をバッターボックスでキャッチャーとして受けるとかが、VRとARをうまく活用すればできる気がしています。50kmのスライダーをテレビでは見られるんですけれど、そうではなくて俺はここで受けたいんだみたいなことが、スタジアムの近くに専用の場所があってできるとか、応援しているときに一挙手一投足で目の前でVRで広げられるとか、そういうことをやりたいですね。

高坂⚾:キーワードで出ていたリモートライブという視点でいうと、まさにそういうところが今後研究を経て、サービスとして実装されていくと思います。今、マリーンズは、テレビは日テレNEWS24、OTTはパ・リーグ一括でRakuten TVとDAZN、SoftBank(スポーツナビ)で配信していますが、そういう放映・配信パートナーと一緒に、今の試合中継プラスアルファの価値をつくっていくことを、もっと考えていかなければいけないと思います。マルチアングルという考え方であったり、今、井上🍔さんにおっしゃっていただいたようなVRやARとして、よりリアルに見ている側が体験できるようなものをつくっていくのは、まさに社内でもいろんな議論をしているところです。パ・リーグ6球団ではパ・リーグTVという独自の映像配信も行っているので、そこでトライアルすることも考えられます。

また、映像配信に限らないリモートライブの参加感づくりでは、今回無観客試合でスタジアムに行かなくても応援している証として、リモート応援チケットを販売しましたが私たちが想像していたより多くの方に購入いただけたので、こういった仕組みを強化・発展できたらいいなと思っています。

いま、ファンの想いは

井上🍔:さすがに、これはできないと思いますけれど、キャッチャーとリアルタイムでつながっていて、「みんなに投票です。次はストレートを投げたほうがいいでしょうか」とかね。

益戸🧢:逆にそういう試合があってもいいですよね。通常試合じゃなくて交流戦の交流戦みたいな。

井上🍔:ファンサービス的な感じで。

高坂⚾:ファンの楽しみ方の一つとして、自分が監督になった気持ちで観戦するということはありますよね。プレー一つ取ってもそうですし、ドラフトもそうですよね。だから、そういう瞬間をより盛り上げるための仕組みは考えてみたいと思っています。

井上🍔:野球は特にそうですけれど、応援しに来ている人は全員が監督じゃないですか。みんな自分の意見を持っていて、「だから交代しろっつたんだよ」みたいに言っていたりして、そのときも「交代派の皆さん」みたいな感じで。

高坂⚾:ファン向けの意向調査は定期的に実施していまして、中長期の顧客ターゲットの見直しや事業ポートフォリオ再策定のために、4月に大きめの調査をファン向けと外部パネルで実施したんですね。そこで、今のファンに試合観戦に求めるものは何ですかとか、どんなふうに楽しんでいますかと聞いたところ、スタジアムを友だちと一緒に楽しみたい、ストレスを発散したい、応援したいみたいな熱量が高いアクティブな人たちが多かったんですけれが、一方で静かに観戦したいという方も男性中心にいたんです。

井上🍔:ちょっと意外ですね。

高坂⚾:観戦応援スタイルに近いものはという問いに、圧倒的に多かったのは応援歌を歌ったり手をたたいたりしながら観戦したいという人で、試合をじっくり見たいとか、静かに観戦したいという人は必ずしも多くはないんですが、男女で分けてみると静かに観戦したいという人が男性だと女性の倍以上いるんです。だから、先ほどの監督目線みたいなことは、もしかしたら男性のほうが強かったりするのかなと。

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益戸🧢:分かる気がします。

高坂⚾:女性のほうは憧れの選手を応援したい、が多い傾向はあります。

益戸🧢:エンタメとして見ているのか、スポーツとして見ているかの違いかもしれないですね。

高坂⚾:性別だけでもこれくらいの差が出てくるんです。今はそこで終わらせず、ずっと高いロイヤリティを示して何年も来場している人、ここ数年で来場が伸びた人、離反してしまった人、ずっと低頻度のままの人と、MECEになるような顧客分類で改めてユーザ特性を洗い出し、ユーザ行動の構造解析も進めているので、より詳細な特徴や、打ち手が見え始めています。

井上🍔:そういうファンの在り方を見据えた中で、本当に今年後半、あるいは来年はどういう事業をつくっていくのかは面白そうですね。

高坂⚾:そうですね。マリーンズもそうですし、他球団・クラブも含めて、スポーツ事業は経営環境的にはかつてないほど厳しい状態を迎えていて、先行きが見えにくい中、シーズンが開幕しています。もちろん目の前の収支をどうやって改善させるかはしっかり取り組みますが、それが結果としてスポーツの未来をつくっていくような仕組みのトライ&エラーとなればいいなと思いながらやっているので、あまり浮き足立たずに、というか、構えるところはじっくり構えて取り組んでいきたいです。

益戸🧢:ありがとうございます。結構、いい時間になっていますね。

益戸🧢:では最後に、今後のスポーツ業界、特に野球、パ・リーグ、マリーンズは、どのように面白くなっていくかをお伺いして、対談の最後の一言をもらって締めにしたいと思います。今後、パ・リーグ、千葉ロッテはどういうふうに面白くなって、どういうところに期待すればいいですか。

高坂⚾:残念ながら去年までのようにリアルの場で存分にスポーツ、マリーンズを楽しめる環境になるまでは、時間がかかると思っています。事業に携わる私たちは、チケットやスポンサーシップなど既存事業の回復に取り組むのと並行して、今日お話しさせていただいたような考え方に基づき新しい事業に取り組み、変化に適応し持続的に成長できる事業・球団をつくっていきたいと思っていますので、その姿をファンの方々には見て楽しんでいただきたいと思っています。いや、一緒につくっていきたいという方が正しいですね。ファンの方からもアイデアや意見をもらいながら一緒につくっていきたいです。それが、今のスポーツファンの皆さんに面白く思ってもらえるところなのではないかと感じています。

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益戸🧢:ありがとうございます。今回の対談は「Challenger’s IDEA」というテーマです。高坂⚾さんは、まさにこれからのチャレンジャーだと思いますが、お話を伺ってきょうはいかがでしたか。

井上🍔:みんなが気になっているスポーツ、特に日本人はプロ野球が大好きですから、プロ野球はこれからどうなるのか個人的に興味があったんですが、分かったことは、もう既に潜在的に課題としてあったものが、今回のことがあってぐっと前倒しになって顕在化してしまって、それに対して、今、考えないと駄目ですよねというふうになっているというところが、一つ当たり前ですが思いました。

それに対して、既に幾つか対策というか、見えているところがあるのは非常に前向きだし、ここで元の社会には戻らないですが、ある程度、観客が戻ってきたらある意味で前よりも面白い楽しみ方ができ、ファン層も増え、恐らくプロ野球全体としても、もっと盛り上がるだろうなと、今日はすごく前向きになりました。

高坂⚾:そう思っていただけたのであれば、すごくうれしいです。

井上🍔:めちゃくちゃアイデアがたくさんあって、それが全部ヒットするかどうかは分かりませんが、改めて球団側も課題はたくさんあると思いますし、恐らく選手側はもっとそう思っているかもしれないけれども、俺らはもっと頑張らないといけないなと思われた時期だと思っていて、それはすごくいいことです。

逆に言うと今は技術も発展してインターネットという環境もあって、個の力がもっともっと爆発的に増やせる、チャレンジできるようになっていて、まさにそれはわれわれのビジョンでもあります。そういうことができるのは素晴らしいことだし、それをサポートできる球団、あるいはリーグであってほしいと思いました。

益戸🧢:ありがとうございます。

高坂⚾:プロスポーツは、しっかり公式戦を開催し続けることで、この環境下の象徴・希望になると思っています。今日はこんなことを取り組みたい、という話をたくさんしたのですが、今、最も大切なのは公式戦運営において適切な新型コロナウイルスの感染予防に努めることですので、その点、緊張感を持ってやっていきます。今日はありがとうございました。 

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写真提供:千葉ロッテマリーンズ

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