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宇宙でのストレス緩和について

皆さん、こんにちは!

今回の記事では、8月11日に開催されるThink Space Habitat vol.6 はじめての宇宙建築 in TOKYO に先立ち、「宇宙でのストレス緩和」について紹介していきたいと思います。
※ 8/11 開催のイベントお申し込みはこちらです↓
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皆さんはテクノストレスという言葉をご存知でしょうか。
コンピュータを使った仕事に対応できないことで不安になってしまうことや、逆にコンピュータに依存しすぎてそれがないと不安になってしまうことを言います。また、最近ではSNSやオンラインゲームへの依存などにより日常生活や人間関係に異常をきたすような依存症のことも指すようです。読者の皆さんの中にも、少し心当たりのある方がいるのではないでしょうか? 
これも一種のストレスです。

ストレスには様々な種類が存在します。ストレス社会と言われる現代を生きる私たちにとって、それらのストレスは生活する中で日々感じるものであり、頭を悩ませる存在となっています。

そういったストレスから逃れようと騒々しい地球での生活から離れ宇宙へ飛び出したとしても、宇宙には宇宙でのストレスが存在し、ストレスという悩みの種からは逃れることは出来ないようです。

ミール計画や国際宇宙ステーションで活躍したNASAの宇宙飛行士Michael Barratt氏は、あるインタビューで
「国際宇宙ステーションでの最も大きなストレス源は、おそらく任務を作業計画に間に合わせることです。(中略) 大抵の乗組員は自分のミッションが遅れることにもっとも大きなストレスを感じます。『ああ、神様。私たちは50,000トンのロケット燃料の上に座っていて、空に放出されようとしているのだ。』といったことよりもね。」
と答えていました。

宇宙で働く宇宙飛行士にとっても、仕事のストレスが大きな負荷となる事は地球上と変わらないようです。


では、宇宙飛行士の方々はどのようにしてストレスを緩和しているのでしょうか?

まず、ストレスが人体に悪影響を及ぼす仕組みについて簡単に知っておこうと思います。人間はストレスがかかると、脳内にノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出され、これらの濃度が前頭前野で高まります。そうすると神経細胞間の活動が弱まり、やがて止まってしまいます。神経細胞間の活動が弱まると、行動を調節する能力が低下します。次に視床下部から下垂体に指令が届き、副腎(ホルモンを出す部分)からストレスホルモンであるコルチゾールを血液中に放出されます。これが脳に届くことで、より一層行動を調整する能力は低下していきます。こうして自制心はどんどんとバランスを崩していきます。

では、ストレスが人体に悪影響を及ぼす仕組みを理解したところで、宇宙飛行士の方々のストレス緩和に関係しそうな話題をいくつか見ていきましょう。


《閉鎖環境とストレス》

ストレスホルモンであるコレチゾールに注目し、JAXAと資生堂が共同で行った閉鎖空間におけるストレス実験について見ていきましょう。

本実験は、上の写真のような 閉鎖環境適応訓練設備といわれる設備に8人の志願者が2週間滞在する形で行われた実験です。
下の図は、被験者が閉鎖設備に滞在していた間の唾液中のコルチゾール量を計測したものです。

コルチゾールには、起床時に増加し夜にかけて減少する日内変動リズムがあることが知られています。この上のグラフから、閉鎖設備滞在直後及び退出前日にコレチゾール量が大きく増加していることが分かります。

この上の図は、顔の左右対称さから歪み度を検出したものです。

これらの結果によると、ISSを模した閉鎖環境ではストレスホルモン(コルチゾール)は全体的に増加しています。また、入室後暫くの間は慣れない閉鎖環境によるストレスによりコレチゾール量が大きく増加し、その影響が数日後の表情のゆがみ度に出ているのではないかと考えられます。

《ストレスと緑視率の関係》
緑視率とは、人の視界である左右120度と奥行き5メートルの範囲で緑が占める割合のことを言います。緑の有無がリラックス(休息)・リフレッシュ(切替)といった行動において重要度が高く、視覚疲労の緩和・回復やストレス軽減,空気質改善などにかかわってきます。とくに、緑視率が10~15%の環境にいるとき、ストレスが平均11%以上軽減され、パフォーマンスの向上がみられます。その一方で、緑視率が高すぎる(15%超あたり)とかえって不安感やストレスを感じるようです。近年ではアルゴリズムやAIによって植栽の配置をcm単位で調整し、緑視率を最適化する技術も出現しています。
こうした事から、宇宙空間でも適度に植物があることが人々のストレスの緩和に大きく貢献すると考えられます。


《ヒーリング効果の期待できる音》
自然音(雨、風、川の音等)、体感音響(心音、チェロの音等)には体に音を振動として響かせる効果があります。特に約150Hz以下の低い周波数の音は体で感じやすく、体を緩める効果があります。
例として、チェロの奏者は自分の演奏する音を耳だけでなく、チェロを抱く体からも体感振動として受け取っているそうです。チェロの低い音を振動として再生し、体に伝わる音響システムとして完成することを目的とした体感音響システムの開発が1970年に始まっており、また現在では小型化した体感音響システムが家庭でのヘルスケアや医療、福祉介護、美容の現場で利用されています。
音楽には相当なストレス解消効果があるようで、イギリスの音楽ユニットMarconi Unionは 2011年にセラピー用の音楽「weightless」を作曲しています。(https://youtu.be/UfcAVejslrU) この動画は5000万近い再生回数を誇っており、今なお世界中でストレスを抱えている人々を癒し続けています。
自然音がない宇宙では、音楽を聴くことが人々の癒しにかなり貢献するのではと考えられます。


《香りによるストレスの抑制》
ストレスが脳に及ぼす影響に対するコーヒーアロマの効果を調べることを目的に行われた実験があります。
コーヒーの香りを経験したことがない成熟ラットを以下の四種類の条件下
・対照群
・ストレス負荷群
・コーヒーアロマ群
・ストレス負荷+コーヒーアロマ群
で24時間飼育した後、脳を摘出して遺伝子と蛋白質の発現解析を行いました。その結果、ストレスによる遺伝子の発現変化はコーヒー豆の香りで抑制されたことが明らかになりました。つまり、コーヒーアロマが抗酸化作用やストレス緩和作用をもっているということです。
宇宙で地球を眺めつつコーヒを楽しむことができれば、それがいちばんの贅沢でありストレス解消法かもしれませんね。



ここで、Michael Barratt氏のインタビューに戻ります。
「 乗組員のストレスを和らげるには、夕食の時に一緒に集まって、音楽を聴いたり、冗談を言ったり、経営陣の愚痴を言ったり、地上基地のことやお互いのことをからかって笑ったりするのがいいのです。」

宇宙飛行士にとっても、私たちが友人達と居酒屋なんかでよくやるような事が一番のストレス解消になるのかもしれませんね。
地球上と違うのは、その時にお酒が飲めないということくらいでしょう。



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第6回目となるThink Space Habitatは 『宇宙農業施設の設計』をテーマに
8月11日 日曜日 13:00~16:00(12:45開場)
場所はX-NIHONBASHI(東京都中央区日本橋室町1丁目5番3号 福島ビル7階)にて行われます。

皆様のご参加を心よりお待ちしております!

↓Think Space Habitat vol.のイベント申し込みフォームはこちら↓
https://docs.google.com/forms/d/1nHQ5eBWuMzTgPWO6p6vJFm9MtJYKgGHnrosxrRXkliY/edit

【参考文献・画像出典】
ストレスと脳
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/029758.html
http://fleurdelys.main.jp/wp/officeplants/

JAXAと資生堂の共同研究
http://www.jaxa.jp/press/2018/02/20180220_shiseido_j.html

ストレスと緑視率
https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/word/15/327920/101000034/?ST=health
https://bae.dentsutec.co.jp/articles/greening/

オフィス空間におけるストレス緩和の効果が期待できる条件
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/36663/1/46_87_8.pdf
オフィス空間における室内緑化のストレス緩和に関する研究 「評価グリッド法による室内緑化オフィスの評価構造の分析」

アルゴリズムと緑視率
https://bae.dentsutec.co.jp/articles/greening/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000007230.html
ヒーリング効果の期待できる音、リズム
https://japan-brain-science.com/archives/1351
http://sound-healing.jp/impact-of-sound.html
https://news.livedoor.com/article/detail/9182654/
http://nautil.us/issue/16/nothingness/this-is-your-brain-on-silence
http://www.blog-animo.net/sound/2015/03/post-6fdd.html
香りのヒーリング効果
https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/019258.html
NASAのベテラン宇宙飛行士が教える、ストレスに潰されないための準備と心得
https://www.lifehacker.jp/2015/03/150310gravity_zero.html


研究調査:亀田
文責:ほづみ

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