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Think Space Habitat vol.3 『宇宙建築×農業』レポート

宇宙都市、空飛ぶ車、バイオハッキング ―――

かつてSFの中でしか見られなかった光景がにわかに現実味を帯びている現在、
特に注目されうる二つの分野である、『宇宙建築』と『細胞農業』について
各分野の人々と大学生、社会人が語り合うトークイベント
「Think Space Habitat vol.3 宇宙建築×農業」
2月17日  X-NIHONBASHI にて開催されました。


Think Space Habitatでは、
宇宙建築を考えるうえで必要なこととしてあげられるテーマについて、
その分野の専門家を講師として招き、TNLやOUTSENSE(詳細は記事最後に記載)のメンバーと、参加者の学生、社会人を交えて講演、ディスカッションしています。

前回vol.2では「宇宙建築×スポーツ」をテーマに
電気通信大学で超人スポーツの研究をされている野嶋先生をお招きし、
宇宙都市におけるスポーツの重要性などについてディスカッションしました。
(前回のレポートhttps://note.mu/spacearchi/n/ne083f4ee9740)

今回は、インテグリカルチャー株式会社/shojinmeat projectにて、
細胞培養技術を用いた食料生産、細胞農業に取り組んでいる羽生雄毅さんにお越しいただき、株式会社OUTSENSEにて宇宙建築の設計・デザインに取り組んでいる
堀井柊我さんを交えて、宇宙都市における農業・細胞培養についてディスカッションと講演を行いました。

↑TNLの説明

はじめ、TNLメンバーと堀井さんとのディスカッションは、
宇宙都市における農業の存在について、「資源が希少な宇宙空間においては熱、排気、結露などが管理され、農業もリサイクルされる過程に取り込まれていくため、それらを制御するために、よりIoT化が進んだものになると考えられる。また管理しやすい農業として、水耕栽培や細胞培養が重要になるのではないか。」という意見で締めくくられました。

↑OUTSENSEの堀井さん

次に行われた羽生さんの講演は、
JAXAの検討している宇宙農業の要件定義から始まりました。
元素循環効率を最大化し、極めて限られた資源で生命維持することであり、
それをもとに提唱された100人が20年生活することを目的とした
JAXA式宇宙農業基本セットは、米、大豆、サツマイモ、蚕(サナギ)、塩、ドジョウ、コマツナなどの青菜で構成されています。
「現在、宇宙へ行ける人々は訓練された人々であり、一般の人々が宇宙へ行くとしたらこれらでは耐えられない」と語る羽生さん。
「一定以上、定住者が増えた場合のたんぱく源として、培養肉の需要は出てくる」そうです。ただし、これは一種の高級品扱いになるとのこと。

↑羽生さんによる講演

会場にいらっしゃった方が、宇宙飛行士がミッション後に「100万円だしてでも肉が食べたい」と話したというエピソードも紹介してくださいました。


また、宇宙における食料の現地生産について、
「培養食料、昆虫・菌類、藻類蛋白、植物工場をあげ、各手法の食体験としての重要度や、栄養の偏り、生産の安定性から植物工場と藻類蛋白と培養食料の組み合わせが最も有望と考えられる」とおっしゃられていました。

タイムラインとしては、当初の特殊な訓練を受けた数名が宇宙に定住する段階では菌類や昆虫、藻類の生産、食がメインであり、細胞培養や宇宙農業がおこなわれるのは一般人が定住するようになってからとのこと。


また細胞培養の具体的な技術については、
これまで培養液が非常に高価であったが、近年安価になってきており、
家庭にあるようなスポーツドリンクやサプリの栄養からつくり、家庭で細胞を培養することもでき、すでに高校生が細胞培養を家庭で行っているそうです。
「A5などの等級や、部位にかかわらず様々な肉がすでに培養でき、もちろん人肉も可能です」と話されていました。

現在羽生さんは、細胞培養の方法をわかりやすく解説した同人誌の販売や、ニコニコ動画への培養過程のアップロードなどもされており、オープンソース化への取り組みも熱心に行ってらっしゃり、素晴らしいなと思いました。

↑会場みんなで話し合う様子

その後、質問の時間では、
参加者の方から出た「味なども変えることはできるのか?」という質問に対し、
現在の肉の等級(A5など自体が、サシ(脂身の入り方、質感)や肉の詰まり方を基準に、おいしいかの指標としているだけであり、今後細胞培養の一般化が進めば、純粋に「おいしいか、どうか」という感覚、心に焦点が当たるであろうと回答されていました。

また細胞培養の動物を傷つける必要のなさから、食肉の倫理的な問題が解決されるだろうという会場からの指摘に対しては「人の肉も培養可能であり、倫理的な問題は解決するため、ここでもそれ(例えば人肉食)を良いととらえるかどうかという心の問題になってくる」とおっしゃっていました。


様々な倫理的、技術的問題が解決されることで、それに対して様々な解釈が生まれるというのは、宇宙建築にも起こりうることだと思われます。
今後、我々の周辺に現出するであろう様々なSF的テクノロジーに対して、それをどうとらえるかという課題は今後ますます重要になっていくと考えられます。
宇宙建築と細胞培養という異質な2つの分野は、ある意味で「エモさ」に左右されるという共通した未来に行き着くのかもしれません。


参加者の皆さんにお答えいただいた事後アンケートで、
次に聞きたい内容として「宇宙倫理」というご意見が多く見られたのは
そういったことに関して、みなさんの中でも考えを巡らせて頂けた結果なのかなと感じました。


最後までお読みいただきありがとうございました。

これからもみなさんがワクワクするような記事を更新していきます!
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次回のThink Space Habitat vol.4 のテーマは『宇宙建築×学生』です!
宇宙建築について、ワークショップ形式で学んでいく活動を予定しています。
学生の立場から宇宙に関わっていくキッカケが得られると思います!
開催日: 2019年3月24日(日)
※詳細は後日発表いたします※

春から大学生の方、学生、社会人の方、皆さん大歓迎です!
皆様のご参加をお待ちしております。

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○インテグリカルチャー株式会社
2015年10月に設立。
汎用大規模細胞培養システム "CulNet System™"を用いた有用成分、化粧品、食品、細胞培養肉の研究開発などを行う。
http://integriculture.jp/?lang=ja

〇主催者情報
・宇宙建築学サークルTNL
宇宙で暮らすを実現するというコンセプトのもと、宇宙建築という視点から活動を行っている学生団体です。東北と関東に拠点を置き、全国の学生が集まり日々宇宙と建築について議論しています。宇宙建築賞の運営も行っています。

・株式会社OUTSENSE
私たちは、人が宇宙に暮らす時代を創造しています。
「折り紙」を応用した独自技術で、空間の展開収納を可能にし、月施設の構築を目指している今話題の宇宙ベンチャー。
あなたをどこにでも住めるようにする。そう、それが宇宙でもね。

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