見出し画像

生きたあとに遺る軌跡
死んだ時間を追い抜いて
純白と走っていき、頂点を押し上げた
そこから未来が垂れている
葬られた宇宙の全ての動きは
あらゆる空き間に蔵されている

別れや矛盾に悩んだ僕の服の
無闇に編まれて絡まった糸
それらを一つずつ解いていった
模様の成り立ちを確かめながら
そうして拓かれた余白は
爆発しそうな何かに満ちていて、
終わらない物語を語り尽くしていた
''世界は深く、弘く、精妙にして、
限りなく美しく、希望が常にある''
白濁した泉に無邪気に沈みゆく僕は、
亡霊に魅入られ、何も残すまいと
悦んで身体を差し出す

''私は永劫変わらぬ愛を見つけた''
と構える僕に、英雄は
''想へばいいんだよ''
と笑って、僕の頭を撫でる
約束の夏
その言葉が旭のように頭上へと昇り、
降り注いで僕を起こす

共に生きた時間を弓にして、あなたに矢を放つ
''愛している''
穏やかに微笑み、退いていく
その様がどこまでも悲しい

生きたあとに遺る軌跡
死んだ時間を追い抜いて
純白と走っていき、頂点を押し上げた
そこから未来が垂れている
葬られた宇宙の全ての動きは
あらゆる空き間に蔵されている

槐の葉が活き、白光が見え隠れする
陽の光が水面に乗り、慎ましく揺らめく
蝶の雌雄が時を越える
それらが虹彩に滅しても、俺は走り続ける


詩:鶴田新一

歌:https://youtu.be/6OyruSk-lRk

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?