「あつまれ どうぶつの森」に見るゲームと企業の関係性
2020年上半期に最も売れたNintendo Switchのゲーム「あつまれ どうぶつの森」。3月の発売以降順調に売上を伸ばし、国内での累計販売本数は500万本を突破しました。この数字はNintendo Switch向けタイトルでは歴代最高の販売本数(ファミ通調べ:https://www.famitsu.com/news/202007/01201444.html)です。5月の任天堂の決算短信では、3月末時点での世界累計販売本数は1177万本に達したと発表しています。
このような大ヒットゲーム「あつまれ どうぶつの森」は、企業にも注目されているのをご存じですか?
本記事ではゲームの世界に進出した企業の例をいくつか紹介し、ゲームと企業マーケティングの可能性を考えていきたいと思います。
まず、本題に入る前に「あつまれ どうぶつの森」について簡単に紹介します。
「あつまれ どうぶつの森」は、シリーズ初の無人島が舞台となっています。プレイヤーはたぬきちというキャラクターによる「無人島移住パッケージプラン」に参加。整備されていない無人島に住み、家を建てたり、植物を育てたり、住民を招き入れたり、と島をどんどん発展させていくことができます。またゲームでは現実と同じように時間が進行し、時間毎、季節毎に変わる自然を楽しめます。
今回プレイヤーはたぬきちからスマホを渡され、撮影や捕まえた魚、虫などの確認をスマホでできるようになりました。他にもデザインを身につけたり飾ったりできる「マイデザイン」や、道路や川など島の景観をカスタマイズできる「島クリエイター」というアプリもあります。「あつまれ どうぶつの森」において自分だけの島を作るため、まずは「島クリエイター」の解放を目標とするプレイヤーが多いです。
「あつまれ どうぶつの森」の特徴のひとつは、服や家、島の景観など、カスタマイズの自由度が高いこと。#あつ森写真部、#あつ森マイデザイン、#島クリエイター、などSNS上ではさまざまなプレイヤーの島の様子が投稿されています。
また自分の島に誰かを招いたり、誰かの島を訪れたり、他のプレイヤーと交流できるのも魅力の1つです。現実では難しくなってしまったコミュニケーションの代わりとして、「あつまれ どうぶつの森」が人気となっています。
憧れのブランドをゲームでまとう
オリジナルの服や家具は、マイデザインで作成することができます。マイデザインはコードを公開して、他のユーザーへの配布も可能です。現在、アパレルブランドを中心にさまざまな企業も、独自のマイデザインを配布しています。
例えば、「ANNA SUI」や「MARC JACOBS」、「VALENTINO」などのハイブランドも、コレクションのマイデザインを公開しました。各ブランドのマイデザインは公式HP、TwitterやInstagramから確認できます。
また「あつまれ どうぶつの森」では毎月、イベントを開催しています。
イベントでは期間内に一定の条件を満たすことで、限定の家具や衣裳を手に入れることができます。
6月に行われたイベントは「ジューンブライド」。ウエディング仕様のアイテムを手に入れ、ゲーム内で結婚式を挙げるプレイヤーもいました。
ウエディングドレスを手掛ける「Yumi Katsura」もイベントに合わせて、ウエディングドレスやカラードレスなどのマイデザインを公開。Instagramでは#あつ森結婚式として、180件あまりの投稿が集まりました。
行けないかわりに再現
配布されたのは服だけではありません。
日本のポーラ美術館や太田記念美術館、台湾の国立故宮博物院、アメリカのメトロポリタン美術館なども所蔵されている作品を公開。ゲームの中で、自分だけの美術館や博物館を作ることができます。
他の島を行き来できることを利用して、イベントの開催も。
累計動員数8万人を誇る日本最大級の占いイベント「占いフェス」は、オンラインでのイベントを開催しました。何人もの占い師がzoomや、「あつまれ どうぶつの森」にて鑑定を実施。イベントが作成した島、うらないフェス島は先着順での訪問となり、競争率が高い島となりました。
社内会議や企業説明会を「あつまれ どうぶつの森」で行う会社もありました。
アーチ株式会社は、会社説明や業界就職に関する情報交換などを行うため、スタッフの島を1日だけ公開。参加した就活生にはレアアイテムのお土産も配布され、情報交換と遊びを両立した取り組みとなりました。
「あつまれ どうぶつの森」を介した新しいビジネス
ゲーム内では果物を採ったり魚を釣ったり、虫を捕まえたり。さまざまなことができます。時間帯や季節によって手に入れられる種類が変わるため、ゲームの設定時間をずらすという裏技も。しかし、夢中でプレイしていたり、時間をずらすことによってデメリットもあります。ゲームの中では時間の経過によって雑草が生えたり、持っているアイテムが腐るという現象が起こってしまいます。
特に雑草は、せっかく整えた島の景観を損ねてしまったり、抜く手間がかかったりと厄介なもの。そこで海外で誕生したのが、雑草の除草代行「WeedCo」です。
海外の掲示板「Reddit」にてtybat11をというユーザーが「WeedCo」の設立を発表すると、掲示板では7万回以上閲覧され、話題となりました。「WeedCo」ではgoogleのドキュメントページを使ってスタッフのスケジュールを公開。そのスケジュールを確認して、どうぶつの森での除草作業を依頼できます。
「あつまれ どうぶつの森」内でインテリアのコンサルタントを開始すると発表した企業もあります。
それがイギリスのインテリア専門企業「Olivia’s」です。
公式のブログからメールを送り、コンサルタントを依頼。
「Olivia’s」では、担当者がプレイヤーの島に訪れた後、現状のコーディネートの良い点や改善すべき点を個別でアドバイス。初回はおおよそ1時間程度となっています。
必要があれば追加のアドバイスや担当者の再訪問の依頼も可能です。
ゲームの世界において、ビジネスは増えるのか?
企業がゲームに参入した例は、「あつまれ どうぶつの森」以外にもあります。それが「Second Life」です。
2003年からサービスを開始した「Second Life」は、多い時には400万人のユーザーが登録していたコミュニケーションプラットフォームです。
「Second Life」の中では、現実と同じように看板や建物を立てることで企業が宣伝を行いました。
しかし、何をしてもいいという自由さが、逆に何をしたらいいか分からないという現象を引き起こし、ユーザーは3万人程度まで減少。2007年には日本企業も参入していましたが、早々に撤退しています。
「Second Life」とは違い、「あつまれ どうぶつの森」では、ローンを返済する、図鑑を埋めるといった目的が存在するため、ユーザーは長い間プレイすることが出来ます。
あまりの人気ぶりに、「あつまれ どうぶつの森」をプレイできるSwitchの本体が品薄となっている現在。Switch本体の在庫が復活することで、さらに「あつまれ どうぶつの森」のプレイヤーは増えると予想されます。
これからも色んなアイディアがゲーム内で生まれ、企業のマーケティング戦略の選択肢の一つになっていくのではないでしょうか。
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