【インタビュー】「殺-Murder-」に向けて。
情報を知った時にいてもたってもいられなくなり、企画・出演の石巻遥菜さん(マキさん)へ連絡。
普段、人が見せない感情を堂々と見せる心の底には何があるのか話を聞いた。
-誰かの救いになりたい-
_____今回、3度目のソロ企画ですね。なぜ一人で公演をしようと思ったのでしょう?
劇団を辞めた2、3年前に「自分発信のことをやってみたい」と思っていたんだよね。その形が定かではなく辞めて色々考えた結果、全て自分でやることじゃないかと思って始めたのがソロ企画だったんだよね。
_____劇団では台本の芝居をやっていたんですか?
即興のお芝居だね。でも台本の要素もあったから全て即興というわけではないけど。
_____今までソロ企画は全て即興だったんですか?
1回目は自分で台本を書いた作品、落語、ノンバーバルを合計1時間くらいでやったんだよね。
台本とノンバーバルが重たい作品になりそうだったから、明るいのを入れたくて落語をやってみようと。
_____落語!? イメージになくて初耳です(笑)
何度か落語の経験があったからその流れで(笑)
_____一人芝居の稽古は誰かに観てもらったりするものなのでしょうか?
いや、誰も入れずに一人でビデオ撮って見返すとかだね。「自分の思い通りにやらせてあげる」がコンセプトなので、「〜べきだから〜しないといけない」という自分の声はなるべく抑えて色々判断したり、自分へのダメ出しもしないようにしてる。
_____ダメ出しをしすぎないのも大事ですね。そういえば、1回目と2回目はどんなテーマだったのでしょう?
1回目はエゴ。自分がやりたいことってエゴだと思いがちだけど、とにかくやらせてあげようって。ソロ企画発端の気持ちだったね。自分のやりたいことをやったから、2回目は支えてくれてる人やお客さんに向けて。
お客さんからもらったもので作られていく、その場のお客さんの存在が無駄にならないのがインプロの好きなところ。
お客さん全員で一つの人生が作られて、出来上がった人生はとても愛おしい。
その出来上がった人生を見て、来てくれた一人一人の人生が愛おしいってことを伝えたかった。
だからお客さんから物をかりて作ったって感じかな。
_____前回と同じくお客さんから言葉や物をかりますか?
実はまだ決められていなくて。(取材時は本番2週間前)
でも実際にお客さんから、人を殺したいと思った話を聞いてから始めるようにしようかなと。
_____今回はテーマが過激だなと思って。扱いが難しいものをあえて選んだのはなぜですか?
2回目ソロ企画の最後の挨拶で「次はもっと暗い話を創りたい」と言ってたのがきっかけだったんだよね(笑)
暗い人間だから、いい話ばかり創るとむず痒くなってしまう。
_____そうなんですか!?(笑)
最悪何かが起きても、叩かれても怪我を負うのは自分だけだし、楽だなって(笑)
どうせなら一番暗いところに行こう、と。
_____一人の人間として傷つく可能性がありそうですが。
多少はあるけど、事前に叫んだり負の感情を全面に出す可能性があると事前に案内しているので苦手な人は無理しないでと伝えている。
私は過去に殺意が湧いたことがあって、同じ想いを抱えたことがある人、殺意が生まれてどうしたらいいか分からない人、これから殺意を抱えるかもしれない人に助けになるかなと思っている。
明確に届けたい人が決まっているから、何か言われたとしてもダメージは受けないかな。
もちろん、殺意を抱いたことがない方も来ていただいて何か響いてくれたら嬉しい。
_____揺るがない想いは昔からあったんですか?
自覚はなかったけど、昔から頑固だったんだろうなと思う。とある占いで私は王様で自分の国を作りたいと言われたことがあって(笑)
こうしたいと思ったことはどうしても曲げられない性分だなって最近自覚してきた(笑)
_____自分に我慢したことはあまりない人生だったんですか?
いや、自覚してなかった時期もあるね。周りを考えて自分に優しくない選択をしてしまった経験もある。
_____マキさんが頑固で曲げられない部分があると自覚したきっかけや記憶はあるんですか?
んー...劇団を辞める時に考えたのがきっかけだったかな。コロナ禍で公演中止になったりしたことで演劇や人生のことを考えたかな。
_____私も人生について考えていた時期でした。
(笑) 皮肉にも色んな人が人生を見つめ直すきっかけだったかもね。
今、周りにいてくださる方が「あなたはこういう人だよ」って教えてくれたのも気づいたきっかけの一つかな。
_____2022年、マキさんに初めてお会いした時に「ちゃんと言いたいことは言える人なんだろうな」って思いました。
(笑) 日本っていい子の方がある気がしていて。そこから外れたら本当の自分に気づくのが遅れることもあるよね。
_____話は戻りますが、私は他人への殺意はないんですが自分には抱いたことはあります。マキさんは殺意を抱いた時にどのように昇華してきたですか?
自分への殺意はフランクに抱くんだけど(笑)
_____え(笑) 本当ですか?
そうそう(笑) だいたいできない時に「ほんとヘタクソ」とかって思う。できなくて許せないからタスクをあえて貸したりしてる。
他人に対してはただ我慢してた。
実際に行動してたら今ここにいないし(笑)
嫌がらせも卑怯だしなんか違うなって。ただ封じこめて見ないようにしてきたかな。昇華してないからこんな企画を立ち上げたんだけど。
一生この後も昇華されることはないだろうなぁ。
どうやって昇華するんだろうねって探してるのもこの公演なのかもって思ってるなぁ。
強い想いほど簡単に消えないからね。
_____抱えててもいい場合もあるよなぁって思います。
抱えてるからこそできる表現もあるし、共感されるような人になるのかもね。
_____一人芝居だと色々悩みそうですけど、行き詰まった時に相談したりするんですか?
いや、自分で決める(笑)
息抜きして新たな気持ちで決めることもある。
_____私もいつか一人芝居やってみたいなと思ってたので、すごくいいヒントになりました。
やろやろ! 場所とったらやるしかない(笑)
_____誰かもそう言ってたような気がします...(笑)
忙しい中、ありがとうございました!
-あとがき-
彼女とはとある作品の稽古見学に行った時で出会った。纏っている雰囲気は勢いよく燃える炎のように激しいが不思議と近寄り難い熱さはない、そんな人。
気を配れるし細かいところに気がつくのは、彼女自身が一人で責任を負うソロ企画で培った経験も反映されているかもしれない。
誰かに言えなかった言葉。行動できなかった日。
誰かにとって救いや支えのきっかけになることを祈らずにいられない。
【話し手】石巻遥菜
【取材・文責】中島早紀
【写真】佐々木昌美 (gekichap)
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