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「ノアとチキュウの遊び方」10/23稽古場レポート


心の準備。



インタビューの内容に驚いた。

作品に絡めた過去を話すインタビューは見たことがあったものの、読んでいいのかと後ろめたさを感じる過去が書き連ねてあった。



舞台に立つのを一度は諦めた。ずっと舞台をやってみたいと願っていた。
本当の自分を見つけると決めた。

覚悟が、想いが溢れている。


人の数だけ過去がある。
わかっていても、普段は話さない。話せない。
この過去を話せるようになるまで、どんな稽古を重ねて自分と向き合ってきたのだろうと疑問が浮かぶ。
同時に、演劇には人生を変える力があると改めて知る。



10/23 通し稽古へ。

約半年の稽古を重ねている情報は事前に見ていたものの、本当に演技やダンスが未経験が大半なのか?と疑った。


全員、プロだった。

オープニングの歌で、なぜか涙が出てしまう。
合唱団に所属していたころを思い出した。
ひたすらに楽しかった。仲間がいるから出来ること。もう8年もお客様の前で歌っていないことに気づく。
歌っていた期間を歌わなくなった期間が越えようとしている。
少しだけ恐ろしくなった。好きだったものから離れてしまった。
離れる選択をしてしまった。

涙もろさを許せなかった過去も思い出す。
勉強、アルバイト、仕事、少しでもできないと自分を責め涙する日々だった。「泣いても何も変わらないよ」と言われたこともあった。

けれど、演劇に関わる立場になると、涙は抑えなくていいと知った。むしろ出していい。
本当に心が動かされた証拠。


セリフ

時々、いくつかの問いが私たち観客に向けられているように聞こえた。その役を演じる俳優自身に向けられているかのようにも。
「YES」「NO」では簡単に答えられない問い。
まだ答えは持ち合わせていないが、問い続けていかなければならない。

2幕のあるシーンでは、涙が止まらなかった。過去が鮮明に思い出され、その時の感情までも引き摺り出されてしまった。
言いたかったけれど、言えないこと。とある役が過去へ戻って私の代わりに言ってくれているような、不思議な光景だった。


そして、正義についても考えさせられた。正義は楽だ。正しいから簡単に振りかざせるし、正論を言っている自分に酔いしれて止まらなくなる。
私は正しい。だからいくら言ってもいい。だって私は正しいんだから。間違っていないから。相手のためだから。

そんな人物はだんだん、哀れに思えてくる。


表現方法

興味深かったのは、とある役の感情を身体で表したシーン。
会話や独白だけでも成立するが、実際に人が動くことでより役に与える感情が強くなる。

キャストに稽古の過程を聞くとオーディションが春に行われ夏まではダンスや演技の基礎、ノンバーバル(非言語)コミュニケーションを集中的に行い、台本にふれることはしなかったと。

その長い過程があった影響か、演技経験があるかのかのような身体の動きに仕上がっていた。


フィードバック

「ダメ出し」とも言われるこの時間。演出家や指導者が俳優に演技や歌、ダンスについて気づきや魅せ方をアドバイスする時間。

過去に参加したWSで「ダメ出し」と聞いた際「なぜダメが前提で話をするんだろう」とこの言い方が嫌いだった。
ただでさえ人は自分を責めるのに、さらに追い打ちをかけてしまうのかと。

だから、演出家の萌恵さんが「フィードバックします」と発言した瞬間に、安心して発言できる場所だと知った。


通しが終わり、いきなり萌恵さんに「観た感想をいただけますか」と言われて驚いた。

本当に演技未経験が大半だと聞いていたが信じられなかった、と伝える。
「嬉しい!」雰囲気がそう言っているようだった。

そして特に涙が止まらなかったシーンについて語る。
セリフを話さないのに、アンサンブルの動きと表現が恐ろしいほどに胸に刺さる。
答えられない問いと過去を思い出しそうになりながら、なんとか抑えた。

初めましての方々を前に、自分でも言うつもりのないことが言えたのは場の空気が優しかったおかげ。



覚悟と強さ

ハーリーティ役の秋枝明日香さんに話しかける。

オーディションについて話を聞いた。春と夏に行われたと聞いて驚いた。
ほとんどのメンバーがここにいると答えてくれた。

春は応募者を選考し、夏は配役を決めるオーディション。それまではダンスや演技の基礎の日々。



オーディション課題の一つだったダンスについて、「ダンスを踊れた方はいましたか?」と訊ねると「ほとんどいませんでした」と予想通りの答えが返ってくる。



そして一瞬の間。
目に力が入り、彼女はハッキリと呟いた。



でも、全員踊るのを諦めませんでした。


この言葉に詰まった覚悟を劇場で観てほしい。
全てが作品に出ている。彼ら、彼女たちの身体を通じて現れる。





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