『学校に行かなくても豊かな人生を送れる』現役校長の立場から語る、学校の中に留まらない学びのあり方とは。〜前編〜
みなさんこんにちは!SOZOW PRチームのひじです。
早いもので、もう年の瀬ですね。みなさんは今年、どんな1年でしたか?
年内最後のnoteは、島根県隠岐の島の中学校で校長先生を務める傍ら、学校外でも不登校の子たちのために活動をしている渡部校長と、SOZOW代表小助川の、非公開対談の様子をお届けします!
本記事は、前編の内容となります。
渡部校長は現役の校長先生でありながら、お子さんが過去に不登校だった時期があり、その時の原体験から『学校に行かなくても豊かな人生を送れる』というメッセージを学校内外から発信されている方です。
学校内での取り組みに限界を感じ、学校外から教育を変えていく活動をしようとしている中、たまたま目に留まった小助川のプレゼン動画を見て「自分と近しいことを考えている人がいる」と感銘を受けたそうです。
それをキッカケに、2人が繋がったことが今回の対談の発端となっています。
(実は2人とも名前が『まさし』という共通点もありまして、本記事はWまさし対談となっております。笑)
渡部校長には、先月11月に正式開校したSOZOWスクールの応援メッセージにもご協力いただきました。
2人のまさしは現代の教育についてどんなことを考えているのか…?
私自身、当日の対談に同席させていただく中で、お2人ならではの視点から今の教育の課題点や、今後の教育の可能性が見えてくるように感じました。
それでは、早速気になる対談の中身に入っていきましょう!
子どもたちが学校に行ってない時間を、もっともっと豊かな時間にしていきたい
渡部校長:よろしくお願いします。今日小助川さんと対談出来ることを楽しみにして来ました。
僕は現在、日本海に浮かぶ小さな島、島根県隠岐の島の小さな学校の校長をしています。全校生徒数31人ほどの学校です。
実は今年度末で校長を退職し、今年の6月に立ち上げた一般社団法人アナザーステージの代表理事としての仕事に集中していく予定です。
アナザーステージは学校に行かないことを選択した子どもたちに特別な時間・空間と体験を提供するアクティビティ・クリエイト法人です。
子どもたちが学校に行ってない時間を、もっともっと豊かな時間にしていきたい。学校に行かない子どもたちの応援団としてやっていきたいと考えています。
ずっと教育に関わっているからこそ、学校に変わってほしいという思いがある
渡部校長:次女の子育て経験が、原体験ですね。うちの娘は中・高と学校に行ってない期間が長かったんですが、今は立派に社会人として自立しています。
その経験を経たときに、ふと思ったのは「学校って一体なんなの?」ということ。僕らは今まで学校教員として、「学校に行かないとダメだよ」と主張して来たけど、学校行かなくなって立派になれるじゃんと。
娘の不登校がキッカケで、これからの教育のあり方に想いを馳せることになったんです。
そうなったときに、内側からではなく、外側から学校に働きかけるポジションをとりたいなと。僕自身、学校は素敵な場所であってほしいと思っているのですが、今の学校には時代の変化にそぐわない部分が多くあるように感じています。
子どもたちが、学校という場所を「嫌だ」という空気を感じる場所になってしまっているんです。僕はこれまでずっと教育に関わっているからこそ、学校に変わってほしいという思いがある。でも中から変えることは難しい。だから僕は、学校を外側から変えていきたいという気持ちがあるんです。
渡部校長:この夏、学校に行ってない子たちが全国から4人ほど集まって、隠岐島でキャンプをやったんです。その時、島の方々が色んな形で力を貸してくれたんですが、「不登校の子たちのために何かしてやろう」という姿勢ではなくて、「子どもたちが何か一生懸命やってるから、応援しようよ」という感覚が島の人たちにあるんです。
最初は島に来てから、ゲームをやりながらうつむきがちだった子たちが、島の人たちと関わり合いながら変わっていくんですね。
たとえば、おばちゃんが持って来てくれた魚を、子どもたちがびっくりして見つめていた。勝手に魚をさばき始めるんですが、その姿に魅了されている子どもたちの表情が、みるみる変わっていきました。
他にも「私は海では遊びたくありません」と言っていた女の子が、1時間後には海で大騒ぎしてるんです!
大切なポイントは、この子達は、変わったわけじゃ無いんです。元々あった本来持っているエネルギーが、人や自然の力を借りて再燃したというだけなんですよね。保護者の方々も「この子がこんな笑顔なのは、保育所以来でした」というようなことを仰っていたりもしました。
僕らは、居場所・箱物をつくりたいという考え方ではないんです。最近盛んに言われている「居場所づくり」という言葉には違和感があって。子どもを箱に閉じ込めず、もっと好き勝手に色んなところに行かせていいじゃないかと。
だからこそ、家でも・図書館でも・畑からでも参加出来るような、SOZOWスクールに魅力を感じたんです。物理的な居場所に囚われないような学びが大切だと思っています。
【社会を居場所にするプロジェクト】という取り組みを僕らはやっているのですが、例えば子どもが学校に行ってない昼間の時間に、1日中図書館にいたって良いと思うんです。
ただ、田舎では、昼間に学校行ってない子たちは異物扱いされてしまうこともあるのが現状です。
でもね、社会全体が居場所になれば、いつどこで過ごしていたって良いじゃないかと。僕たちは【社会を居場所にするプロジェクト】を通じて、色んな町の施設と協力して、町の中に子どもたちの居場所をたくさん作っていくムーブメントを起こしていきたいと思っているんです。
小助川:それは素敵な活動ですね。微力ながらSOZOWも首都圏中心に力になりたいです!
学校に行きたくない子が増えている現状について
渡部校長:かつて、学校は威厳のある場所だったと思うんです。だから、先生にパワーがありました。これは国力を強くする機関として求められて来た結果だと思います。学習をする機会が学校だけに閉じられていた時代はたしかにありましたよね。
でも、今は教員の言っていることもネットでですぐ調べられる時代。それくらい時代が急速に変わって来ていると思います。
ただ、学校に関しては過去の旧態依然としたシステムが、今も色濃く残っている。それに加えて学校・教員の体質というのがあると思うんです。
たとえば、小さい子どもに先生ごっこをさせると「ちゃんと並んでください!話聞いて!」など命令言葉を使うと思うんです。小さい先生みたいですよね。
何が言いたいかというと、「教員がよかれと思って使っている言葉というのが、子どもたちを知らず知らずの内に窮屈にしてしまっている可能性がある」ということなんです。
先生の、全体をきちんとさせないという思いが、子どもが子ども同士をコントロールしたり、うまく行かないことを指摘し合うような冷たい空気感を生んでしまっているんですよね。
こういった空気感を苦しいと感じてしまう子どもたちが、学校に合わなくなってしまっているように思います。
けど、先生は一生懸命やっていると思うんです。そういうことを生み出してしまう、今の学校システムを変えなければと強く思うのですが、既存の校長としてそれを成すことは難しかったんです。
小助川:私も娘が学校に行きたくないと言ったとき、色々と学校教育について調べることがありました。
教育行政ってどういう構造になっているんだろうと良くみてみると、これは中から変えるのは本当に難しいなと感じたんです。だったら、私は民間で頑張ってみようと思いました。まずは小さく子ども中心の学びの場をつくってそれを大きくしていき、ゆくゆくは学校とも連携していきたいなと。
渡部校長:学習指導要領の改訂を担当したときに、それ自体は尊い仕事だと思ったんですが、実際の現場の授業は面白く無いことが多かった。
文科省の方々も頑張ってくれているとは思うんですが、彼ら自身も自らの学校での成功体験に基づいてしまっているんですよね。だからこそ、中々根本からシステムを変えることが難しい。
小助川:知り合いに文科省の方がいますが、想いは素敵です。ただ、仕組みが盤石すぎて、実際に何かを変えるということは難しい。
一方で、日本の教育の良さとして識字率の高さなどが挙げられますよね。
私たちは、学校の弱みだったところを、補完関係の立ち位置になっていけるんじゃないかと。たとえば、午前は学校に行って、午後はSOZOWスクールに通うなどとか。そういう世界観を目指していきたいですね。
前編の対談内容はいかがだったでしょうか?
後編の対談内容は、以下のテーマで進んでいきます。
2024年1月4日(木)更新です!お楽しみに。
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