税務DD入門講座

税務DDについてちょいちょい聞かれることが増えたのでDDをまだやったことが無い人向けに書いていきますね。

税務DDとは、M&Aで買収の対象となった法人の税務リスクを洗い出し、買い手に対してレポーティングするお仕事です。通常は財務DDの一環として行われることが多いです。その場合はFASや監査法人が財務DDを担当し、税務DDを税理士法人が担当することとなります。

DDには、セルサイド(売り手)/バイサイド(買い手)のDDがあり、基本的には後者の買い手側が主導になって進めるDDが殆どです。
前者は高く売るためにクリーンであることを証明するために行われることが多いのでリスクを過少に見積もる傾向があります。また、すでにセルサイドDDがされていれば、それを参考にした上でバイサイドのDDが行われたりもします。
また、スコープによって、ハイレベル(この場合のハイレベルは”ざっくり”という意味合いでスコープを絞ったもの)であったり、フルスコープだったりとDDの範囲が変わってきます。スコープの違いがフィーの違いに直結してくると考えて貰って大丈夫です。

M&Aにおける意思決定においては税務DDの結果というのは一つの要素でしかないので、税務DDの結果だけをみてその法人を買う買わないを決める訳ではありません。あくまで税務DDは税務リスクを洗い出すことが目的であり、一定程度以上の税務リスクについては定量化を行った上で、売買価額に反映したり、表明保証に条件を織り込んだりします。

ここでいう"税務リスク"というのは簡単に言うと将来税務調査が入った時に指摘される可能性のあるリスクと考えてください。なので、納税者の視点というよりは、第三者目線で会社の情報を見ていく必要があります。
ただし、税務調査と違って証憑をひとつひとつ確認していくのではなく、申告書などの限られた情報から効率よく税務リスクを発見する必要があるため、より想像力を働かせながら情報を精査する必要があります。

通常、税務DDに携わるのは法人や部署によっても変わります4~5年目以降のある程度経験を積んだスタッフ(職階でいうとシニア以上)が担当することになります(M&Aのみを専門に行っている法人や部署であればもう少し早く携わることができるので、M&Aのみをやりたい場合にはそういうところを目指した方が早いです。)
なので、業務難易度としては、基本的には法人税申告が一通りできるレベル感だと考えてください。

税務DDで大変なところは短期間(短ければ2週間、長くても1か月程度)で成果物を作成しなければいけないところです。その分、限られた時間で、ハイクオリティなアウトプットを作成する能力が身につきます。

やりがいを感じるところは、自分が携わった仕事が新聞やネット記事になることですかね。もちろん守秘義務があるので、どんな仕事に携わったかを外で言うことはありませんが、自分が携わった案件も何度も新聞に載ったりしてます。そういう意味では申告書作成とは違って、分かりやすく成果が残るような業務です。

また、DDに付随する業務としてはストラクチャリング業務もあります。M&Aは単純な株式譲渡で行われる場合もありますが、税務上有利なスキームを構築し、提案することもあります。こちらはDDよりも更に高度な知識が求められるので、もうちょっと上の職階の人たちが中心に進めることが多いです。

今回は入門編ということでこの辺で。

ではでは。

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