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見た夢がエグい。

邪気祓いのため
空海ブレス画像をアップしつつ
詳細、いきます。

※今回、超長いよ

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何か気になることがあると
相談があり、そちらへ赴いてみると。

山の上の家。

男の子が4人と母親、母親の姉妹、そこに執事やメイドなどが住んでいる。山上だというのに、それなりの広さと格式を備えた豪邸で、いわゆる貴族華族の流れなのだろう。

話を聴いてみると、この山を一旦降りた先、隣りの山の上には昔から遺跡があるそうで、数年前にそこを中心とした新興宗教ができたが、最近その人たちの様子が何だかおかしいという。

街で積極的に布教するのみならず、先日は家まで勧誘の人員がやってきたそうだが、とても良い人に見える一方、なにか違和感があったと。

いわゆる「押しが強い」のとは異なり、柔らかな物腰の向こうに、一度イエスと言ったら骨まで食い尽くされそうな、どす黒さを感じたとも。

向かいの山では、今年は大祭が行われるらしく、それで家族や家に危害が及ぶと困るので、調べて欲しいという話だった。

この家の子どもたちは、みんななつっこくて可愛い。話を聴いた後、少し遊んで欲しいというので、母親に許可をもらって別室で遊んでいたら、全員と仲良しになった。

仲良くなったところで、この家のこと、山のことについて、子どもたちからさりげなく話を聴いてみる。

この家系は古くから、この山上の洋館と共にあって、代々女系家族だったらしい。

「僕たちが生まれて、ものすごく喜ばれたんだよ」

確かに突然4人も男児が揃えば、再び事業や興業にも力を入れられると、周囲は期待も高まるに違いない。

ただ、上から2番目の子は物凄く体が強く、上から3番目の子は生まれつき体が弱いそうで、そこのバランスが取れていたら最高だったのにね、と本人たち含めてネタのように話ているらしい。

母親の姉妹、彼らにとっては叔母に当たる面々は、いつも物静かで優しいので、彼らも好きだと言う。

かたや紅茶が、かたや珈琲が好きで、いつも片手にカップ、片手に本のスタイルで座っているらしい。

「大人ってすごいよね、それで飽きないんだからさ」

長男が言うには、兄弟は全員、体を動かすのが好きで、そのための部屋もあるし、執事やメイドが器用にも色々教えてくれるので、スポーツもたしなんでいるらしい。

が、当然、普通に走り回ったり隠れんぼしたりも好きで、そちらは、この山の中で適宜遊び場があるのだそうだ。

「なかなかスリリングに遊べるところもあるんだ。今度連れてってあげようか。あ、母さまには内緒ね」

是非頼むよ。大丈夫、言わないよ。

その後も、勉強について、生活について、ヒアリングを続けていると、依頼者の母親がノックと共に入ってきた。

「日暮れも近いし、本日は泊まっていかれたらいかが?」と言う。今なら未だ、山を降りるに困らない明るさは保たれるだろうが、まだ聴いておきたいこともある。そこでお言葉に、甘えてみることにした。

子どもたちと戯れながら、食堂を含めあちこちの部屋を訪問させていただけたが、少し気になる気配がある。それも邸内ではなく、どうも屋敷のもっと下。山の中、地面の中に、何かあるのか?

他の部屋にも、気になる箇所があった。訊けば、その部屋の床には開かずの扉があって、何代も前から、どうやっても開かないことで有名らしい。

上に家具を置いて完全に塞いでしまおうかと決断した矢先、この家の旦那さま、今回の依頼者の夫が急死して、関係ないだろうとは思いつつ、それっきり部屋にも入っていないということだった。

「もしかすると、これまでにも同じように、ふさごうとして亡くなった先祖が、結構いたのかもしれませんし」

だからずっと、ほったらかしにするしか手がなかったのかもしれないと、彼女は言う。寝室は、ここから離れた場所にご用意がありますから、安心してくださいねと、彼女の浮かべる笑みは少し寂しそうだ。

眠っている間に、夢をみる。

隣の山の上に、信者らしき人が集まって祈りを捧げているが、彼らのまとうエネルギーは黒い。呼び出しているのも、光の何かではなく、闇の何かのようだ。

禍々しい感じは、世界を終わらせたい方の誰か、何かなのか?気になるのは、こちらの山の中でも、それに呼応して何か起きている感じがあること。もしかして、向こうの山にある遺跡に呼応する何かが、こちらの山中にもあるのでは?

なるほど、覚えていないのだろうが、依頼者も同じような夢を見ている可能性が高い。だから、遺跡を祀る新興宗教の人たちに不信感を持ち、こちらの家まで何か被害があるのでは、と感じるのだろう。

翌朝、細かいことは伏せて、依頼者に最近悪い夢を見なかったか尋ねてみると、詳しく覚えていないけれど、新興宗教の信者たちが大挙してこの山へ登ってくる夢をみたような気がする、とのことだった。やっぱり。

とりあえず、それら情報を携えて、お礼を述べつつ「また来てねー!」の子供たちの声に送られながら山を降りる。

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さぁ、ここからは別方向から情報を手繰ろう。

聞き込みなどの調べでわかったことは、その宗教には特定のお祭りの日があり、毎年その日になると、山の上の遺跡で大掛かりな儀式がおこなわれているということ。

そして今年は、できて5年目の大祭になるので、普段は別の場所で眠っている「神の本体」を揺り起こし格別の祈りを捧げる、今までにない儀式が行われるということ。

調べる中で信者の方々の気配もうかがってみるが、見る限り全員が柔和で、物腰も穏やか。心に支えがあると、人は強くなるのかなと思える一方で。

グッと深くまで感覚を伸ばすと、皆みぞおちの奥に真っ黒い球状のエネルギー塊があり、日常では大人しく見えているだけで、かなり危うい状態であるようにも思える。

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彼らが祭祀場に使っている山の上の遺跡は、公的なもので、彼らの私物ではないため、いつでも誰でも登ること、入ることが可能で、山の麓には、公的な説明の立て看板も建てられている。

簡単に言えば、古の偉人の墓所。
あまりに偉大過ぎて常人に理解されず、とある事件で犯人扱いされて強引に流罪、さらに刑期満了時、元々偉人の活動拠点であったこの山に連れて来られて、開放されるのかと思いきや騙されて殺されるという、酷い話。

時の中間役人が好き放題していた結末らしく、さすがにその件の後、該当役人たちは罷免され、行方は遥として知れないらしいが、時すでに遅し。偉人の亡骸は山上に放置されていたらしいが、地元の人間がそれを見つけて、さすがに気の毒に思い、その場に手厚く埋葬。

ただの土まんじゅうだったはずが、時間が経つに連れて大きめの石がいくつか重なり合うように土まんじゅうを覆って墓になり、遺跡になった、という話らしい。

教祖として崇めるには、良い感じの歴史と対象と言えるかもしれない。祟り神としての素質、岩が勝手に動いたかのような神秘性。

しかし、山上にスキャンをかけると、気色悪い気が充満しているようにしか感じられないので、上がるのはやめておこう。

山中にも、良い感じのエネルギーは感じられない。自然のエネルギーというのは、放っておけばエントロピーの関係で様々な滞りが薄まる方向にながれ、よほどの谷や窪地でない限り、ドンヨリした気が溜まり続けるなんてことは、起きづらい。

ましてや、山だ。凹んでいる場所に比べたら、断然スッキリしてておかしくないのに、この状態。わざわざ重苦しいエネルギーを溜め込んだとしか思えない。

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その大祭の日には、信者がこぞって山上へ上がり、その山中の溜まり力や、古からの偉人の無念を開放するのかもしれない。古からのエネルギーは弱っていても、結構な数の信者が、5年の間「崇め奉る」祈りを注入して今に至っているとすれば。

何か復活するとか、信者たちが全て、その偉人の手先となって何かやらかすか。あり得ない話ではない。そうなれば、何某かパニックになるような事態も想定されるだろう。

正直に言えば、その祭りの期間、屋敷を離れて街よりも遠い何処かに避難していただくのが、1番安全だと感じられる。

隣の山のエネルギーをスキャンして思ったのは、あの家族が住んでいる山の地下に感じられた黒い何かと、かなり似通っているということ。

もしも、その偉人と呼ばれた存在が、隣同士の山を繋いで連携させ、動かせる仕組みまで作っていたとしたら、どうだろう。

まるで夢物語のような話だが、古来、偉人というのは発想もエネルギーも段違いだ。何なら双方の山ごと吹っ飛ぶような仕掛けかもしれないし

と、ここまで考えて少し悩む。この妄想話、どこまで聞き入れてもらえるか。

そんなトンチキな話を聴くために雇ったわけではありません、お帰りください、となれば、変な夢を見たことまで含めてなかったことになり、彼らは何の対策もしないまま、あの屋敷にいることになるだろう。

まぁ妄想はさておき、大祭の段階で信者がどんな乱痴気騒ぎを起こすかわからないので、その数日間は旅行を兼ねてお出かけされたらどうですか?が、説明としては正解か。

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改めて、お屋敷を訪ねる。結論として、大祭の時はお屋敷を離れた方が良いという話を、まず振る。

その理由としての調査の結果、各々の山のエネルギー、信者の様子などまで、見えない話を織り交ぜながら話す。これで信頼されないなら、仕方ない。そうでないと、私が考えるのが面倒なので、逃げてくださいと言っているみたいだし。

「それは難しいと思います」と依頼者が話す。頭ごなしに、こちらの話を否定してこないので、今度はあちら側の理由を聴かせていただく。

それというのも、この屋敷の地下というか、山の中には、大きな遺跡があるはずなのだという。このお屋敷の人間は、その遺跡の守り人で、唯一の仕事は「この屋敷にいること」。それだけで遺跡の安寧が保たれ、何も起きずに過ごせていくと、口伝されているのだという。もちろん、この話は部外秘。だから前回はお話できなかったと。

「まだ、信頼できる方かどうか、わかりませんでしたから。前回の様子を見て、また今回のお話をうかがって、この方ならわかってくださる、明かした方が話が早いと思いました」

ここに来て、私は先ほど伏せておいた内容も全て、話すことにした。当たり障りの出そうな妄想部分、正確には「想定されるトラブルの原因」と「予想されるトラブル事案」なのだが。

「なるほど、そういうことですか。よくわかる気がします。ただ、私たちが屋敷を離れてしまうことで、更に事態が大きくなる可能性があります。とはいえ、その役目とは別に、子どもたちだけは逃がしたいのも本心です」

三姉妹が体を張って今回の事態を収め、子どもたちは執事とメイドに託すつもりか。

「この地下の遺跡は封印されているので、私たちの体を通じて、守りのエネルギーを流し込んでいれば大丈夫なはず、なのです」

その封印がされた時期について尋ねると、祖父の時代が最新だという。孫の代、一代置いた次の代の時には、封印や結界は再度強めておくのが安心な流れなのだが、様々に理由もあろう。

そこで、ここ最近というか、依頼者の代になってからの話を改めて聴きとる。再封印でなくても、封印強化の話は、出ていなかったのか。

「私のパートナーは、この家に婿入りしてくれた人だったのですが、本当は、その人と一緒に、決められた手続きをおこなうはずでした」

依頼者いわく、そのパートナー、旦那さまは、その手続きをやるから男児が生まれて来ないのだと説いたらしい。本来、次の世代がこの世に姿を現す前に手続きをおこない、しっかりと自分の代に守り人の役割を降ろしてから、日常生活における子孫作りへと進むのが、代々の過程だったそうだ。

「私たちの家系は、本当にずっと女系でした。毎度、話のわかる外部の方に婿入りしていただき、なんとか家系を保ってきたのです」

旦那さまがいるとはいえ、後は全て女性。正直に言って心細いこともあったし、これからもずっと、このままなのかと、深く苦悩していた時の、パートナーからの提案だったという。

せめて、1人でいい。男児の後継ぎが欲しい。その思いで依頼者は提案を受け入れ、1人目が生まれてから手続きをしようと決めた。

「果たして、初の男児が誕生しました。あまりの嬉しさに、気が狂わんばかりに泣きました」

先代以前から、苦労も続いていたのだろう。世間さまには「女腹」と、いらない揶揄をするものもいただろうし。とは、思うが。

ルールを破れば、綻びが出るのが「見えない手続き」だ。それ以外は何をしても良い、そういうご加護と引き換えなことも多いし。

依頼者は続ける。
「その後、手続きをおこない、ご覧の通り子宝に恵まれましたが、全て男の子。2人目の体の弱さ、3人目の異常なほどの健康さ。やはり順番を違えたのは、間違いだったかと悩みもしましたが」

パートナーいわく、子どもなど、いろんな体質のものがいるに決まっているじゃないかと。4人目が、弱くも強くもない体質で生まれたことで、その懸念も無くなっていったという。

「そうして、もう子どもの増えることもないかと、開かずの部屋を片付けて、という段階でパートナーは急死しました」

やはり、地下の封印が弱ったのか。そう思いつつも、既に何一つ、やり直せない状態に陥ったまま今に至り。「この屋敷にいれば、封印は守られる」というところだけは死守したい、そんなところなのだろう。

パートナーの急死から程なくして、隣山の新興宗教が盛んになり、関係はないと思っていても不安で不安で…と、依頼者の表情が曇る。

ちなみに、パートナーのご出身はどこですか?と尋ねると、あまり聞かない地名が飛び出してきた。調べる。あれ。偉人が流罪にされていた辺りと思いきり被ってないか?

更にパートナーのお写真あれば、と拝見する。…こりゃ驚いた。向かい側の山の怪しい気配と、同じモノをまとっている。ご主人、亡くなられているんですよね?埋葬はどちらに?

「この屋敷の少し外れに、代々の先祖家人のお墓がありまして、そちらに」

そうなんですね。この辺りで、子どもたちがバリッバリに痺れを切らせて「遊ぼー!」と集まってくる。

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もう、ここの家人は封印を守る役割はできていまい。手続きを踏まずに子どもを作らせるのが、封印を壊す1番の手だと、わかっているモノのさしがねだ。古来、必ず存在してきた「そそのかすモノ」に、してやられたのだろう。

しかし、子どもたちに腕を引っ張って連れて行かれながら、背中越しに話せる内容ではない。そもそも話したところで、誰のテンションも上がらない。

他人から与えられる絶望こそ、1番の自滅材料だからね。

とりあえず、数日後に控えた大祭に向け、旅立ちの準備だけ始めた方がいいですよとだけ言って、玄関を抜けて外へ、連れていかれるままに。

仲良し4人兄弟は、前回僕らの遊び場を見せてあげる話したよねー?と無邪気に、私の腕を引っ張り、藪の奥、こんなところ良く道がわかるな?というところへ案内してくれる。

ガサっと薮を抜けた瞬間、おかしい。

家の中で感じた黒く濁った気配が、ひどく強まった。まさか、君たちの遊び場って。

「見て見て、ここ!凄い迷路なんだよ♪」

「僕ら、少ししか入れないけど、見るだけで楽しくなるから、この辺りで走り回ったりしてて」

「僕は体が弱めだから、見てるだけが多いけど、面白いんだよ。1番にーちゃんは、かなり奥まで道がわかるんだって」

その、1番にーちゃんと目が合う。1番身長があって、とはいえ、まだ120㎝程度か。おとなしめだけれど、きちんと自分があって、とてもクレバーな長男らしい子だ、と思っていた。

今の今まで。

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なんてこった。この岩窟の中は、向こうの山の遺跡と、エネルギーが繋がっている。

元々、偉人と言われる魔術師のような彼が、仕掛けた場所だったようだ。そういう映像が流れ込んでくる。

それに気づいて、この家系の人たちは、彼が実体を失った時、こちら側を封印したのだ。恨みまじりに、大変なことをしてしまわないように。

地元民が、いくら今は亡き偉人の魂の平穏と安寧を祈ろうと、彼自身、自分が死んだとは認めていない。そりゃそうだろうね。様々な蘇りができる魔術師ってのは、古来ちょこちょこ登場しているし。

そういう脳内映像とは別に、ちゃんと目の前に見えている1番にーちゃんの話も、聴こえてくる。

「大変だったよ。幾世代に渡り誘惑してきたが、ここの代まで、誰も慣習を破らなかったのだからね」

違う。1番にーちゃんではない。弟たちも、にーちゃんどーした?と引き気味だ。

だから、流罪の地で生まれた男を、最初からエネルギーの運び役として選んだのだな?と問えば、その通りだと。

物理的に自分のエネルギーがたっぷり入った人間を使って、女系の跡取りを説得し、まだ守り人のエネルギーが全く降りていない状態で、子どもまで作る。

「わかるか、私のエネルギーだけがたっぷり入っているのだから、後で私と一心同体になれるのは、間違いないだろう?仕掛けは上々というわけさ」

偉人のヨリシロになる子どもは、1人いれば十分だ。だから、2人目以降が守り人のエネルギー入りだろうが何だろうが、全く問題はない。ということか。

「そうだな。そうして、この岩窟で日々、兄弟と遊ぶ。さすが、良き守り人の家柄だな、兄弟たちは、ここの邪気にも妖気にも全く動じることなく、単なる遊び場として付き合ってくれた。おかげで、1人コソコソと動き回る必要もなく、岩窟の奥にある祭壇も、また準備は万端だよ」

1番にーちゃんの笑い方は、今までの奥ゆかしさと可愛らしさこの混ざるものではなくなっていた。まぁ、邪悪ってことでもない。ただ、淡々と大人びていた。

もうそんなに恨んでいるでも、怒っているでもなさそうだけど、何故、この大祭で何かをやらかそうとしているんだい?と、尋ねてみた。

「なかなか肝が据わっているな。陰陽師とはいえ、ビビリもヘタレもいるんだが。褒めてやろう。そして、教えてやろう。もう、ワクワクが止まらないのだよ」

いや。いい。わかった。
大祭の日、信者がこぞって向こう側の山へ上がる。あちらの山に残る、偉人さんの全エネルギーをみんなで背負って、次はこちらの山に来るんだな。

そのまま、全員こちら側の祭壇で荷を下ろす。そこにはヨリシロになる1番にーちゃんがいて、コッソリ移動されている彼らの父親のエネルギー、つまり流罪の時の力も全てまとめた状態で、完全復活を果たすつもり。

当然、大きなエネルギー変動で屋敷なんか吹っ飛ぶ可能性もあるだろう。生きてる人間は、何なら全て潰して吸収か?

「失礼なことを言うな。今の時代、理解者や協力者はとても大切なんだよ。私が希代のスーパースターとして現れた時、誰にもブラボーされないなんて、つまらなすぎるじゃないか」

なるほど。そんな話をする、1番にーちゃんの変わりように、私の背後に固まって隠れている、すっかり萎縮した三兄弟を軽くかばいながら、それでどうする、全部わかった私や兄弟は殺すのか?と問う。

「そんな非合理なことはしないよ。君の話など、街の誰も信じないだろうし、狂信的な者は、むしろその話に狂喜乱舞するんじゃないか?教祖復活!と。邪魔をしようとするなら消す、と言いたいところだが、君、全然敵意も何もないし」

まぁ巻き込まれてるだけで、敵意も何もあるわけないし、依頼者にだけは全部説明して、これ以上私には無理です、と言って帰るだけかな。まぁ1番くん以外の子どもを預かって、養子の手続きをするくらいは、別料金でするか。

「はは、冷静だな。ただ、ちょっと残念なお知らせがある。ほら、むこうの山の方、藪の間から見えるかい?」

ぶっちゃけ、細かいところは見えていないが、もう真っ暗なはずの山肌に、いくつも炎が見えている、ように見える。

「あれは、信者たちでね。これから、とんでもない程の狂気と歓喜に満ちた大祭が始まるだろう」

え、大祭は、1週間後の開始じゃなかったのか。

「本当にそのつもりだったんだよ。けれど、思うより速く準備が終わったよ、と信者にチラッと言ってしまったら、聴こえていないはずなのに、勝手に日取りが繰り上がったんだ。凄いね、愛の力って」

映像が見えてくる。向こうの山頂から、諸々のエネルギーを運ぶ準備ができ次第、あちらでの祭りを終えて、今度はこちらの山へと信者が集ってくる。

完全に狂気に支配された人々は、迷うことなく、この岩窟に来て次なる段階を待つのだろう。何が問題って、早ければ夜明け辺りには彼らが来てしまうわけで、そこまでに現実的、物理的な対策は無理だということ。

「言っておくと、まずみんなを殺すつもりはないから、全員残っていても大丈夫だとは思う。ただ、信者に正気が残ってないと、サバトっぽくなるかもねぇ」

そうでしょうねぇ。人間の方が怖いからなぁ、こういう時って。とりあえず、私にできることは、依頼者に話をすること。ヨリシロ予定の1番にーちゃんは、一旦、一緒に戻っても良いのかな?

「あぁ、構わない。私の息子である面が強く出ない限り、この子は、いつものこの子さ。2度と『いつも』が来なくなる前に、存分に別れを惜しませてやればいい。さて。全てを聴いた時、彼女がどんな顔をするのか、どう動くのか、興味がある。遠隔で覗いていても良いかな?」

なかなか悪趣味かとは思うけど、見ているだけなら、良いのではないですかね。本当は、私が決めることでもないんだけど。

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ここで話が終わったので、屋敷に戻る。結構時間を食ってしまい、心配をかけてしまった依頼者に、急展開について話す。

逃がしたいなら今すぐ、2番目から4番目の子どもだけでも、私が連れて出ますよ、という前置きをしてから、岩窟絡みで見た全てを話す。

あまりの顔色の変化に、こちらが驚く。人間って、こんなに短時間で赤くなったり、青くなったり、白くなったりできるのか。

それもそうか。自責の怒り、悲しみ、絶望。どれが去来しているか計りかねるけれど、人として、また守り人として、難しい生き方を頑張って届いた場所が此処となれば。よく泣き崩れもせず、パニックも起こさないものだ。

依頼者は、全て聴き終わってから、わかりました。と言った。

私にできることは、先ほど申し上げた通り、ヨリシロにならない3人の子どもたちを、一時お預かりして、里親を見つけることくらいです、という内容にも、ただ「ありがとうございます」と言った。

いつのまにか、部屋の隅で話を聞いていた姉妹たちが、立ち上がった。私しか子どもを授からなかったのに、馬鹿な真似をしてごめんなさいと謝る依頼者の頭を、髪を、2人は優しく撫でていた。

どういう展開になるかを待っていた私に、姉妹が口々に「本当にありがとうございました」と言った。理由や状態がわかっただけで、根本的な解決にならなくてすみません、と言うと3人とも呆れたように笑顔になった。

「こんな難しい展開に巻き込んで、こちらこそすみませんでした。私たちは、守り人の一族です。後のことは、自分たちで」

その口調の、自分たちで、と切れた言葉の先にある、強さと覚悟を見た気がして、私は謝礼をいただいて、おいとました。ばいばーい!と無邪気に手を振る4兄弟。

かろうじて陽の残る山道、前回は泊めていただいたな、と既に懐かしく思い返す。

ここで帰るとは、つれない、冷たい。そう思う人もいるだろうけど、人にはできることと、できないことがある。更にやれるか、やれないかも、その時による。そこを読み間違えると、自分が「ならなくて良い犠牲者」になったりするからね。

急ぎ降りて、何とか真っ暗になる前に街に戻れた。向こう側の山頂に、煌々と燃え上がる炎が見えている。ここは、田舎街。車もない私は、今から街を出るわけにもいかないから、何かあれば一連托生。やれやれだ。

すると。屋敷側の山から、あらぬ大音量の悲鳴が聞こえてきた。いや、どういうこと。誰の?みんなそんなに大きな声は出ないよね…まさか。

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そう思うや、大きな爆発音。それは、今まさに大祭が行われている山頂から起きた。こちらは、生きている人間の悲鳴が細々聞こえてくる。そもそも、キャンプファイヤーみたいなことをしてるんだろうな、という大きな炎が見えたいたので、そこが吹き飛んだことで山火事に発展し始めた。

続いて、屋敷側の山頂も火を吹く。こちらにも爆薬が仕掛けてあったのか?見ていると、更に地響きが起きて一部、山が崩れ出している。さっき、兄弟に見せてもらった岩窟辺りか。こちらも山火事になって、街がえらく明るくなり、とんでもない騒ぎになる。

どちらの山も爆発したとは一体どういうことだ?!しかも、どちらも消防車は無理な場所。燃えるに任せるしかないのか、なんとかならないのか。

結局、山火事が雨を呼んだのか、丸一日燃え続けてから、火事は収まった。信者のほとんどは逃げ帰っていて、数人の犠牲で何とかなったらしい。遺跡は、見事に吹き飛んで平らかになっていたそうだけど。

屋敷の方は、山頂付近全体が木っ端微塵に近い吹き飛びようで、遺骸もあるのかないのか、全くわからない状態だったそうだ。

なんとなく、何が起きたのか、わかる気はしてるけど。生死に関わらず、多少なりとも皆さま、お幸せに。そう思って、今日も新たな依頼をね、見るんだ。

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