さぁ、大丈夫。過去の私も救われた。 #企画メシ
これは、コピーライター・作詞家の阿部広太郎さんが主催する、企画でメシを食っていく2021の「チームの企画」から生まれたオリジナルソング「プロローグ」のサビのフレーズだ。
苦手だった、「大丈夫」という言葉
私はこのオリジナルソング制作チームの一員だった。
仕事で動画のディレクションをすることはあっても、作詞やMV制作は初めて。8月から約3ヶ月間素人3人での手探りの制作が始まった。3人といったが、実際は数えきれない人たちがこの曲とMV制作に携わってくれた。山あり谷ありの制作期間だったが、この歌を聴くといろんな人の顔が浮かぶ。きっと、一生歌い続ける歌だと思う。
だけど、私はサビの始まりに使われている「大丈夫」という言葉が苦手だった。「大丈夫」って、なんだか雑に扱われている気がして…。
子どもの頃から誰かに相談すると「あなたなら大丈夫だよ」と言われることが多かった。
幼い頃の私は「大丈夫」と言われた瞬間、次に何を言ったらいいのかわからず、もう手の届かない一人ぼっちの世界へ放り出されたような気分になっていた。
そもそも、苦しい時に「大丈夫ですか?」と聞かれて、「大丈夫じゃありません」と言える人間は、世の中にいったいどれくらいいるんだろう。
デモ音源を聴いた時、他のメンバーよりも少し冷静だったのはこのフレーズのせいかもしれない。こういう、ひねくれた自分も好きじゃなかった。
チームのおかげでひとりでも強い自分になれた
そもそも、「チームの企画」自体が私にとって大きな挑戦だった。普段はフリーランスとして自由に生きているし、ものづくりが好きすぎて気を付けていても言いすぎてしまうことがあるからだ。
それに「企画生が再会するまでのお守りになるように」という目標を掲げて舵を切った私たちだったが、5人だったメンバーが3人になった時の喪失感は大きかった。
でも一番つらかったのは、企画にコミットする時間をうまくつくれなかったこと。仕事や体調不良が重なり、ミーティングを当日欠席したこともある。中途半端にしか参加できないのならチームを抜けたい。そう何度も思ったし、実際に他のふたりに比べて私は担当できることも少なく、私が抜けても作品は完成したと思う。
それでも続けたいと、何とかしがみついてこれたのは、他のメンバーおふたりのおかげだ。
ワークショップやミーティングに突然参加できなくなった時にも決して責めない。どんなアイデアでもいいところを探してくれる。ふたりと過ごす中で、歌詞の
と言われているような気持ちになり、ひねくれた自分にも優しくでき、ひとりの時でも強くなれた気がした。
そして改めて、この歌詞は私には絶対に書けないと思った。本当にチームだから生まれた歌だと思う。
描くことで、変わる解釈
そうして11月初旬にはMVの制作がスタートした。動画のディレクション経験はあったので、ここくらいは頑張りたいと思っていた。そんな時に回ってきた役割が、MVに表示する歌詞を描くことだった(デザイン性を追求したので、あえて書くではなく、描くにしました)。
結果的には結局デザイナーの夫に依頼することになってしまったが、ふたりで何十枚も、何百枚も書き直し、枚数は200枚を超えた。使うペン、文字のテイスト、文字の大小…。誰かに伝えるには、考えることがたくさんある。
いちばん描いたのは、やはりサビ。
描きながら、「大丈夫」という文字はとても優しいなと思った。3文字とも滑らかで、丸くて、おおらか。ちょっと見方を変えたら、「大丈夫」って包み込むような懐の深さがあるのかも。最後の「はらい」も前向きに走り出せそうな勢いを感じる。
そんな何段階もの発見を経て、「大丈夫」の解釈が変わった。昔友達にかけてもらった「大丈夫だよ」も、突き放されたんじゃなくて「温かいエールだったんだな」と気づいて、勝手に孤独を感じていた当時の私まで救われた気がした。
そしてもちろん、過去だけではなく今の自分もこの歌に救われた。以前は涙もろい感動屋だったが、フリーランスになってから「絶対に泣かない」と決めていた。涙を拒絶した分だけ、自分の本心が見えにくくなった気がしていた。だけど、今回曲を書いてくださった企画生の方が、ある講義で自作の歌を講師の方と一緒に聞くというシーンがあってそのシーンがずっと忘れられないでいた。講師の方も企画生の方も素直に感動し涙を流していて、それがとてもうらやましかった。泣かないことが強さじゃなかった。フリーランスになって7年目。そろそろ泣くことを許しても「大丈夫」なのかもしれない。
そう思って聞いたオリジナルソング「プロローグ」は、今年聞いたどの歌よりも、泣けた。自画自賛かもしれないけど、いい歌だなと思う。
歌のおかげで、忘れない言葉に。
以前のnoteにも書いたように、私はとっても忘れっぽい…。というか、慌ただしい日常の中で、自分の感情を置き去りにしてしまうことが多い。だけどこの歌のおかげで、「大丈夫」という言葉の温かさも、「私は私のままでいい」という言葉もずっと忘れないと思う。
改めて、この曲・MV制作に携わってくださった全ての方に御礼が言いたい。できれば、再会した時に。
まだ聞いたことのない方は、ぜひ上記から。
最後に、チームのおふたりへ
ミーティングに参加できないことも多く、特に最後は出張と重なってご迷惑をおかけしました。私だけすごく年上だし、面倒なところもあっただろうな…と思います。
でも、おふたりのおかげで誰かと仕事以外で何かをつくる楽しさ、意見を柔らかくまとめる言葉遣いなどたくさんのことを学ばせてもらいました。
今回は再会は叶いませんでしたが、いつか必ず会えますように。
本当にありがとうございました。
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