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「剣と魔法の税金対策」発売記念  【実話】あるラノベ作家が税務調査喰らった件

はい、というわけわけでございましてね。
初めての方ははじめまして、そうでない方はまいどさんです。
木っ端ラノベ作家のSOWと申します。

この度、2021年1月18日、ガガガ文庫より、
「剣と魔法の税金対策」発売の運びとなりまして、今回はそれを記念した、
ちょっとした企画を行うことと相成りました。

本作「剣と魔法の税金対策」、これどういう話かって言うと、まぁタイトルからおわかりなように、「ファンタジー世界の税金話」です。

全てはお約束のあの会話から始まるのです。
魔王の「我に従うならば、世界の半分をくれてやろう」に、
「マジ? おっけ!」と、応えてしまった勇者。
かくて世界から争いが消えると思ったらさにあらずで、
そこに神の使いの天使が現れるわけです。

てっきり、裏取引をしたことを責めるのかと思われたが、その天使は、天使は天使でも管轄の違う天使。 “”天使でした。
そう、この世界は「税制度」が存在する世界。
神に「納税」しなければならない世界だったのです。

「世界の半分を受け取って、勇者の使命を放棄する」それ自体はどうでもいい、勝手にしなさいと。
 だが、「高額な金品の譲渡」には、税金が発生します。  
 そう「贈与税」です。 贈与税の税率は、その価値によって変わりますが、「世界の半分」ともなれば、その率55%に至ります。

「ちょと待てい」と、
世界の半分もらうつもりだったのに、税が発生して半分以上徴税される。
この事態に憤った勇者、「ならば」とばかりに、税金逃れの妙案を思いつきます。
共有財産ならいいわけよね!」 少女であった勇者、
魔王と偽装結婚することで、税金逃れを企みます。

正確には、偽装結婚ではなく、いわゆる「仮面夫婦」――
かくして夫婦となってしまった魔王と勇者。
しかし、「税金逃れのために結婚までする」ことが、さらなる災禍を招く。
「そこまでするような人たちは、他の税金もちゃんと納めているものか怪しい」 と、
税の天使は「税務調査」の開始を宣告します。

繰り出される税天使のあれやこれやの調査。
相手は神の使いなので、勇者と魔王がどれだけ強かろうが意味はありません。
突きつけられる追徴課税額は、身ぐるみ全部はがされても払いきれないレベルに積上がっていきます。

恐れおののく二人ですが、そこである「幻の職業」の存在を知ります。
「その者、天界との定められし掟、万物の法則、“税法”に通じし者」――
ある事情から、世界最後の一人となったその知識を持つ少女に、助けを求めます。
その少女こそ、“税理士”であった。

かくして、魔王と勇者、そして税理士の三人は、天界から繰り出されるとてつもない課税を逃れるべく、あの手この手の手段を尽くす攻防を始めます。
税金なんか払いたくない、絶対に!
人類の有史以来のテーマ、そしてついでに世界を救ってしまう、壮大なるストーリー・・・なわけですが・・・

なんでこの話を書こうと思ったかというと、答えは簡単です。
私が、税務調査食らったんです。
ええ、一昨年の話ですね。 一年半ほどまえのことです。

いやぁ~、びっくりしましたよ。 7月くらいのことでしたかね。
ある日いきなり電話がかかりましてね?
知らない番号なんで一度は無視したんですが、留守電が入ってて、
「◯◯税務署の者ですが」 ですよ。
最初は詐欺電話かと思いましたがね、調べたらまちがいなく税務署の番号。

でね、それでも「いやいや俺のとこなんかに来ねぇだろ」と、
てっきり何かの書類上のトラブルかなんかで、二、三受け答えしたら終わると思ったんですよ。
実際その前の年に、還付金の振り込みがされてなくて、問い合わせしたりしましたからね。
でも違いました。

 かけ直したらね、
「申告内容について、お伺いしたいことがあります」 
 ときたもんだ。
「あの・・・これって・・・税務調査ですか?」
「まぁそうですね」
 マイガッ!ですよ。


「とりあえず三年分の申告内容がわかるものをご用意ください。ご自宅まで伺いますので」
我が家に来るんかい、と。
還付金が振り込まれていなかったときは、こっちが問い合わせるまで無反応だったのに、そっちの用があるときはウチまで来るんかいと。

でまぁ、来訪する日付時間が決まったわけですが、 恐怖し、震えましたね。
そら震えましたね、震えますよ。
動悸息切れ抑えるために救心飲みましたよ救心。
救心、知ってます?  あれ高いからあんま飲まないんですがね。
それ用いるレベルですよ。

私がなんでそこまでガクガク震えたかと言うと、ちょいと説明しなきゃいけないんですね。
まず基本的に、日本の税金は「申告制度」です。
どういうことかというと、「毎年コレくらい稼いで、これくらい儲かってます」と申告し、それに基づいて税金が発生するんです。

年に一度行うそれが、いわゆる「確定申告」なわけですね。
聞いたことくらいおありでしょう。
ここらへん、お勤めの方とかはまた事情がことなるのですが、作家だの文筆業だの言っても、要はフリーランスの個人事業主です。
私もこれは毎年しなきゃいけません。

ここで、「売り上げ」「所得」というワードが出てきます。
個人事業者にとって、「売り上げ」=「収入」ではありません。
そこから、「経費」を差し引く必要があります。

例えば、八百屋さんなら、まず「仕入れ代金」が引かれますね。
さらに、お店の家賃、従業員の人件費、チラシやポスターなどは広告宣伝費になります。
配送費や、陳列棚なども無料ではありません。
仕事用の作業着や帽子もです。
そういえば頭にナンバープレート付けた八百屋さん、最近見ませんね。

こういう「仕事に必要なものにかかった費用」
もっと言えば「儲けを出すために必要な出費」「経費」というのです。
これを「売り上げ」から差し引いた金額が「所得」になり、そこに税金がかけられるのです。  
さて、ここまでくれば、私がビビった理由も解ってくると思います。
それは・・・「作家ってどこまでが経費かよくわかんない」なとこがあるからです。

作家業に必要なものって、究極まで突き詰めれば、
「紙とペン」なんですよ。
昔の文豪が、なんかそれっぽいこと言ってませんでした?
「作家なんてペンさえあればできるのだ!」的な。
絶対必要不可欠、まで言われれば、それくらいしかないのです。

ということはです。
翻って言えば、「それ以外は経費として認めない」と言われる可能性もあるわけです。
これはキツイんですよ。
作家仕事するために、膨大な量の書籍を購入しています。
先日久々に書店に行きましたが、四万くらい使いました。
あんまり量が多いんで、配送をお願いしたくらいです。

それだけではありません。
あらゆるネタ出しのために、様々なものを資料として購入しています。
映画のDVDやゲーム、プラモデルとかもですね。
いや実際、ゲームの仕事や映画のノベライズ、プラモのメディアミックスなんかもやってんですよ。


さらに言えば、ネタ探しのために、あちこちに出かけるなんてザラです。
国境の島、対馬まで訪れたり、示現流の本場鹿児島に向かったりしましたが、
それも「必要ない」と断定されれば、経費として認められません。
その分の税金を支払わねばなりません。

ぱっと計算し、もし全ての経費が認められなかったら発生する金額は・・・
まぁ正確に言うと、私の所得がバレるので言えませんが、それでも、貯金全部下ろしてもまかなえません。間違いなく枯死します。

これがヤク◯ならまだよかった。
最悪、警察に駆け込むなり、法の助けを求めればいいのです。
でも相手はその法の方です。
国家の権力が、僕のもとに!
日本国内にいる限り、私に逃げ場はない。
俺が一体何をした! そりゃもう一人称もバラバラになりますよ。

あまりにもビビり、不安になっていたところ、また別の人から電話がかかってきます。
こちらはただの私用でした。
友人の作家さんからのものでした。
名前は申し上げられませんが、ぶっちゃけ、私よりも遥かに売れっ子な、
ライトノベル界隈じゃ著名な人物です。

十年も業界をのたくっているとですね、古い友人知人が大作家になったりするんですよ。
まぁそれはさておき・・・ 不安に心揺らめく私は、その方に話したわけですね。
「はっはっはっ、SOWさん食らったかァ~」
と大笑い。

私「時に相談なんですが◯◯さん、あなたの身近の売れっ子作家で、あきらかに税金ごまかしてそうな人教えてくれませんかね?」
◯◯さん「なぜ?」
私「そいつらを税務署に売る代わりに、私は見逃してもらえんかと」
◯◯さん「う~ん絵に描いたようなゲス」

◯◯さん「だから前から言ってたじゃん、税理士さん雇えって」
そうなんです。 私、税理士雇っていなかったんですね。
まぁ税務作業なんて、毎年の確定申告くらいなモンなので、申告も白で行っていました。

 あ、申告には「白色申告」「青色申告」ってのがありまして、
詳しく話すと長くなるんで割愛しますが、個人事業主な作家さんは、基本青色にしています。
 それすらしていなかったんですね。

税法、税制度というのは、大変複雑で、素人が全て把握するのはほぼ不可能です。
なので、専門の国家資格として「税理士」がいるのです。
彼らに指導、補佐、そして諸手続きを代行してもらうことで、
効率的かつ的確な納税が可能となるのです。
事業を営むにあたって、彼らを雇うのは基本であり、それ故に、その契約費用も「経費」として認められています。

ただ、税理士を雇わなかったのにも理由があり、
どうやって探せばいいかわからなかったんですな。
「探す」てなぁどういう意味かと言うと、
やはり作家業はやや特殊な事情があるので、
それをわかっていない税理士を雇った日には、却って面倒なんですよ。

「そんなリスクを背負うくらいなら自分でやるさ」と思っていたのです。
正直、私の事業規模的に、税務作業など、せいぜい確定申告の書類作り程度。
それくらい自分でできると思ったのです。
それが・・・ と、そこでその友人の売れっ子作家が言ってくださいました。


「じゃあ、俺の顧問税理士紹介しようか? いろいろアドバイスしてくれると思うよ」
 

はい、というわけで今回はここまで!
突如襲来した、税務署の税務調査。
果たして、追徴課税はいくらになるのか!
経費は果たして、なにが認められ認められないのか!
税理士さんは果たしてこの窮地を救ってくれるのか!!
続きは「あるライトノベル作家が税務調査を喰らった件その2」で!!

そして、本日より三日連続でお送りする特別企画
「剣と魔法の税金対策」発売記念の、応援イラストが届きました!
拙著「戦うパン屋と機械じかけの看板娘」にて、



イラストを担当してくださった、ザザ氏による描き下ろしイラストです!

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「SAMPLE? SAMPLEどういうコト?」
 と思われた皆様、いいところに気づかれましたね。
ええ、こちら、全3回を読み終わったあとに、ちょっといろいろございますので、ぜひそこらへんも楽しみにしていただければと・・・・・・

 というわけで、また明日!
「剣と魔法の税金対策」(著・SOW イラスト・三弥カズトモ)は
1月18日発売予定でございます!
 皆様どうぞよろしく~

ToBeContinued・・・














































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