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ISNCSCIを評価する意義

理学療法評価にはすべて目的があります。では脊髄損傷の鉄板評価であるISNCSCIの評価をする意義とはなんでしょうか?

今回はISNCSCIを評価することで得られる有益な情報についてご紹介します。

初めまして。理学療法士のそうちゃんです🏄‍♂️。noteをご覧いただきありがとうございます。Twitterでも脊髄損傷に関する情報発信をしておりますので、よろしければご覧になってください。脊髄損傷について有益と思われる情報を発信しておりますのでお役に立てれば幸いです。

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はじめに

ISNCSCIについてのnote、【完全版】脊髄損傷の鉄板評価はコレだっ!!を書いたのですが「そもそもなぜ評価する必要があるのか?」を知っててもらうことでさらに有益な評価となるので、今回はその話をさせていただきます。

*noteのリンクを貼っておきますので、是非読んでみてください!


ISNCSCIとは

American Spinal Injury Association(略称はASIA)が推奨する、脊髄損傷の神経学的分類の国際基準のことで、脊髄損傷の運動障害と感覚障害、および重症度を評価するために使用される検査です。

「脊髄損傷では超スタンダードな評価ですので必ず評価してください」ってのは以前のnoteでお話しました。


ISNCSCIを評価することで得られる有益な情報

理学療法士は必ず評価をします。評価結果から理学療法プログラムを立案します。近年ではEBPTの実践が求められてますね。

評価とは

評価は、身体の諸機能の状態、疾病により患者の日常生活動作(ADL:Activities of Daily Living)、あるいは、生活の質(QOL:Quality of Life)がどのように変容したかを把握するためのもので、評価が行われたその時点での対象者の状態や、経時的に行うことにより対象者の状態の変化を知ろうとするものである。評価は検査測定とその評定により行われ、理学療法を進める上での出発点となり、対象者の障害像を的確に把握するために欠くことのできない重要なステップである。                     引用:理学療法士ガイドライン(公益社団法人日本理学療法士協会)

つまり評価する目的は、疾患によって患者さんの生活がどのように変わったのかを把握する、状態の経時的変化を把握する=障害像を的確に把握するためなんですね

理学療法計画作成とは

評価において理学療法士として対応すべき問題点を抽出した後、医師の治療方針、対象者および家族のニーズ、理学療法士が勤務する施設の特性を考慮した上で、対象者に提供され理学療法計画すなわち理学療法プログラムが作成される。理学療法計画作成において基盤となるものは、経験あるいは学問的知識にもとづいた機能予後判断であり、それにしたがって短期目標および長期目標が設定される。作成にあたっては、疾患の種類と重症度、生命予後および医学的治療計画等の医学的項目に加えて、機能障(impairment)、能力低下(disability)、社会的不利(handicap)および機能予後等の障害に関する項目、さらに各個人の生活の質といった事柄を考慮する必要がある。   引用:理学療法士ガイドライン(公益社団法人日本理学療法士協会)

理学療法プログラムを考えるためにはなくてはならないのが評価です。

評価なくして理学療法介入なし

っていうのはまさにそうなんです。そして理学療法プログラムの作成の基盤となるのが経験あるいは学問的知識にもとづいた機能予後判断となるわけです。つまり、理学療法介入するにあたっては予後予測が重要となります。

理学療法士ガイドライン(公益社団法人 日本理学療法士協会).pdf 268 KB ファイルダウンロードについて ダウンロード

ようやく前置きが終わりました。

ISNCSCIを評価することで得られる有益な情報とは、予後予測をするための情報が得られるということです。だから評価するんです。


論文紹介

超有名なLANCETという医学系雑誌があります。学術雑誌としての影響度を評価する指標にImpact Factorがあり、なんと59.102(2018-19)という驚異的な数字。

そのLANCETに掲載された「外傷性脊髄損傷後の歩行予後予測」に関する論文です。

Joost J van Middendorp,et al:A clinical prediction rule for ambulation outcomes after traumatic spinal cord injury: a longitudinal cohort study,Lancet 2011; 377: 1004-10


✔︎ 論文の要約

van Middendorpらは、外傷性脊髄損傷は、歩行の早期予後予測は難しいので、歩行自立の可能性を評価するために予測ルールを開発したんです。

受傷後15日以内年齢L3とS1のMotor scoreおよびLight touch scoreからPrediction rule scoreを算出し、受傷後1年後の屋内歩行自立の確率を求められるようにしました。

✔︎ Prediction rule scoreの算出方法

画像1

上の表をご参照ください

✅Range of test scores

年齢:65歳未満=0、65歳以上=1

Motor score:0点〜5点

Light touch score:0点〜2点

✅Weighted coefficient

Range of test scoreの数値と掛け算します

例えば、年齢が70歳の場合、Range of test scoreは1点なので、”ー10”を掛けるので1✖️(ー10)=ー10となります。年齢が30歳の場合はRange of test scoreは0点なので、”ー10”を掛けるので0✖️(ー10)=0となります。年齢の影響を反映させるためですので、65歳以上はー10点引かれてしまうということです。

Motor scoreとLight touch scoreも同じように計算してください。

*計算する際は左右の点数の良い方を採用してください

✅症例提示(架空です)

画像2

この症例のPrediction rule scoreは”18点”となります

ここまでできればあともう少しです

下の図をご参照ください

画像3

縦軸 ▶︎ 1年後の屋内歩行自立獲得の確率

横軸 ▶︎ Prediction rule score

では先ほどのPrediction rule score”18点”がどのくらいの確率なのかを確認してみましょう

画像4

およそ83%程度でしょうか、まあまあ高い確率ですね。

この論文を利用することで受傷後15日以内の評価で1年後の屋内歩行自立の可能性が確認出来ます。これは予後予測をする上で貴重なデータであることは間違いありません。是非急性期病院のセラピストは利用して欲しいですし、受傷後15日以内のL3とS1のMotor scoreとLight touch scoreは最低限評価してもらい、回復期病院への申し送りに情報を載せてもらいたいと思います。今のところMotor scoreは載せてくれているんですが、Light touch scoreが載っていたことはほとんどありませんので。


まとめ

脊髄損傷者の鉄板評価であるISNCSCIを評価する意義は、早期に歩行の予後予測をするための数値的データ(Motor scoreとLight touch score)が得られるためです。

是非臨床で活用していきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

このnoteをYouTubeでも解説しました。よろしければご覧ください👇

https://youtu.be/mRRB_2TwgB8


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