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地域在住脊髄(頚髄)損傷者がイレクターを導入するには?

イレクターは脊髄損傷者・頸髄損傷者(以下、脊損者)にとって非常に重要な福祉用具のひとつです。動作能力が環境に大きく依存する脊損者にとっては、イレクターがあることで動作自立が獲得できることも少なくないためです。

通常は病院に入院中の脊損者であれば、私のような理学療法士や作業療法士がご自宅に出向き環境調整のお手伝いをするわけですが、環境を確認し必要に応じてイレクターを導入した方がよければ入院期間中に発注▶︎納品▶︎環境が整った状態で自宅退院までお手伝いできますが、入院期間中にセラピストによるそこまでの介入がなされなかった脊損者にとって、地域で生活している状態で1からイレクターを注文するのは大変なことだと思います。

そこで、今回はイレクターについてお話しようと思います。特に地域在住の脊損者が1からイレクターを導入するにはいくつものハードルが存在します。

そのハードルを乗り越える手助けがこのnoteでできると幸いです。

では始めます!

YouTubeはこちら👇

https://youtu.be/aFUYRg52mx0


そもそもイレクターとは?

はじめに”そもそもイレクターってなに?”という方に、最初にイレクターの説明をします。私が説明する前にイレクターといえば『矢崎化工株式会社』なので、ホームページをご覧になられるとすごくわかりやすいと思いますので、以下にURLを貼っておきますのでご覧ください。

♨️浴室の設置事例集♨︎

🚹トイレの設置事例集🚺

ご覧になられましたでしょうか?

このようにパイプとジョイントを組み合わせて、ご自宅環境に合わせて作成してもらえるのが大変便利なところです。脊損者にとって環境調整されていないお風呂やトイレは使用できませんが、イレクターがあることで自立できる可能性が高まります;もちろん全ての脊損者がイレクターを使用すれば自立できるわけではありません。多くは完全損傷者の環境調整で使用します。

ではどうすればイレクターを導入できるのでしょうか?

その疑問についてお答えします。時系列に沿ってご説明しますね。


イレクターを導入するには

イレクターを導入するまでの大枠を最初にご説明します。

今回は身体障害者手帳による補助金を申請する場合をご説明します。自費購入の場合のメリットは短期間で作成できるのがメリットで、購入金額が高くなるのがデメリットです。当院では自費購入の方は今までにいらっしゃいません。

Step1:まずは工務店を探しましょう!

Step2:工務店に図面作成・見積書を作ってもらいましょう!

Step3:お住まいの役所に提出しましょう!

Step4:支給券を受け取りましょう!

Step5:矢崎化工株式会社へ作成依頼しましょう!

Step6:納品!

ざっとこのような流れです。では詳しく説明します。


Step1:まずは工務店を探しましょう!

脊髄損傷者の退院支援のお話で、今までも私のnoteやYouTubeでも再三お話して来ましたが、脊髄損傷の専門家と言うのはやはり各分野でいらっしゃいます。それは医療だけではなく実際に環境調整をしてくれる工務店さんも同じことが言えます。工務店選びで重要なのは「今までに脊髄損傷者の自宅環境調整をしたことがある工務店を選ぶこと」、これに尽きます。

ではどうすれば良いかですが、2つの方法をご紹介します。

自分で探す場合

まず1つ目は、お住まいの地域(別にお住まいの地域でなくても良いですが、近い方が何かと楽かと思います)の工務店を探し、HPがあれば施工事例などが載っていると思うので、是非HPをチェックしましょう。良くあるのは脳卒中患者さんの施工事例は良く載ってます。なぜかと言うと、脊損者よりも圧倒的にお客さんになる方が多いからですね。脊損者がお客さんになることはかなり少ないと思います。だから未経験の工務店も多いのです。

非常に良くない工務店は、経験したことがないにも関わらず「できますよ、大丈夫です」と言ってくる工務店です。これは最悪です。何が最悪かと言いますと、こちらの説明が通じないために何度も何度も何度も説明しなければならないのでものすごく時間がかかるんです。中には身体障害者手帳での申請をしたことがない場合もあったりするので、手続きにめちゃくちゃ時間がかかります。私も一度ものすごく痛い目にあったので、脊損者の場合は同じ工務店に頼むようにしてます。

このように工務店選びはものすごく重要なので覚えておいてください。

それでもわからない場合は、知り合いのリハスタッフが居れば、直接聞いてみるのも良いかと思います。先ほど同じ工務店に頼むと言いましたが、本来は病院から工務店を紹介してはいけない決まりになってます。なんとなくその意味を分かっていただけるかと思いますが、なので「個人的に教えて!」と言うニュアンスで聞いてみるのは良いかなと思います。実際のところ、脊損者の環境調整ができる工務店はだいたい決まっていると思うので、逆に工務店に聞いてみても良いかも知れません。

■矢崎化工株式会社の営業所に聞いてみる

2つ目は直接矢崎さんの営業所に聞いてみてください。矢崎さんは全国各地に11支店をお持ちです。お住まいに近い支店に連絡をとってみてください。そこで「イレクターが欲しい」との旨を伝えると、矢崎さんの方から取引のある工務店さんを紹介してくださると思います。実際にはこの方法が簡単で無難かと思います。

下の写真に各支店の連絡先が載ってますので、イレクターを作成したかったら一度ご連絡を取ってみて下さい。

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⭐️Check Point⭐️脊損者の環境調整の経験があるか?できれば複数回経験がある工務店をオススメします

さあ、工務店が決まりました。では次は自宅に来てもらいどこにどのようなイレクターを設置するのか?を決めなければなりません。実はここが最大の山場です。なぜでしょう?

どのような動作環境や動作方法が良いのか?

これは工務店はわからないと思います!だから理学療法士や作業療法士のノウハウが必要になってきます。で、地域在住の脊損者にとってセラピストのアドバイスって言うのは貰いにくいですよね。退院すると繋がりが断たれてしまいますから。だからここが最大の山場です。

ではどうすれば良いのか?これは正直言ってわかりません。例えば訪問リハビリを受けている脊損者であれば来てもらっているセラピストに相談するのは一つの手ではありますが、じゃあそのセラピストが脊損者の自宅環境調整の経験があるかと言われると、ない可能性もありますよね。うーん、これが非常に難しい課題かなと思います。

なので今少し考えているのが、zoomを利用した環境調整のアドバイスができないかな?なんて思ってます。まだまだ構想段階ですが、実際にTwitterのDMで一度このようなご相談を受けました。オンラインで適切なアドバイスをすることはかなり難しいので、どうすれば円滑に適切なアドバイスができるのかを詰めて考えないといけないなと思ってます。

ですので、今私が言えることは、HPやSNSを使ってとにかく情報収集することだと思います。似通った障害レベルの方がどんな自宅環境にしているのか?のような情報がネット上にたくさんあれば困る脊損者が減ると思います。ここは是非当事者の方もどんどん自宅環境の情報をアップして欲しいと思います。

⭐️Check Point⭐️:脊損者と仕事をしたことがある工務店選びですが、すぐに見つかれば良いですが、なかなか見つからない場合は時間ロスが大きくなってしまいます。自分で探せそうになければ病院スタッフか工務店、矢崎さんに直接聞きましょう


Step2:工務店に図面作成・見積書を作ってもらいましょう!

工務店が決まれば、次は工務店に自宅に来ていただきトイレあるいはお風呂(イレクターはトイレや風呂しか作ってもらえない訳ではないです。今回は良く作成するトイレと風呂を例に挙げてます。)の寸法を計測して貰います。そして図面を引いてもらいます。一旦作成してもらった図面を確認し、正式な図面と見積書を作成してもらいます。正式な図面や見積書は工務店が矢崎さんへ連絡してくれて、工務店がトイレやお風呂の寸法を矢崎さんにお伝えし、矢崎さんが図面と見積書を作成してくれます。

ここまででおよそ”1週間”程度の時間を要します


Step3:お住まいの役所に提出しましょう!

図面や見積書ができれば、それを役所に提出しに行きましょう。この時に身体障害者手帳・はんこをお忘れなく!

役所では〇〇申請書のように、例えば車椅子を作成する場合には車椅子の申請書、入浴補助用具であれば入浴補助用具の申請書のように、物品によって申請書が異なります。

後述しますが、日常生活用具は歩行支援用具と入浴補助用具に分けられてますので、いずれかの申請書を書いて役所に提出して下さい。申請書を提出することで、Step4で登場する支給券を受け取れます。

▲補足:特に回復期では時間が限られているので、図面と見積書を受け取ってから役所に提出するまでの時間は提出する方の都合になりますので、ここが遅れるとそのまま時間のロスにつながります。これは良くあるんですが、ご家族が提出するのを忘れてて「そういや役所の返事遅くない?」みたいな感じで未提出なのが発覚し大慌てになるなんてことも少なくないので、書類提出の時間ロスは避けた方が身のためです。

⭐️Check Point⭐️:提出までの時間は提出する方にかかってます!できるだけ早く提出しましょう!


Step4:支給券を受け取りましょう!

図面と見積書を役所に提出すれば”およそ2週間”程度で支給券と言うものが役所から発行され自宅に届きます(役所によっては支給決定通知書を工務店に届けてくれる。これによって支給券が発行されたことが事前に分かる)。最近では支給券を紛失される方も多いらしく、役所から工務店に郵送する場合もあるそうです(支給決定通知書ではなく支給券そのものを工務店に送る場合もある。特に郵送先がご高齢世帯などの場合)。

支給券を受け取ったらどうするか?ですが、工務店に支給券が届いたことを連絡しましょう。あとは工務店がやってくれます。

■そもそも支給券とは何か?

支給券は非常に重要なんですね。いつどのように使うかと言いますと、製品が出来上がって自宅に届いた時です。支給券受領日はんこを押して工務店に渡します。工務店はその支給券を役所に郵送します。そして役所から工務店にお金が振り込まれるという流れになってるんですね。つまり支給券は”お金”みたいなものです。なので絶対に紛失しないように気をつけて下さい。工務店に振り込まれたお金を今度は工務店から矢崎さんに振り込まれるというのがお金の流れになります。

⭐️Check Point⭐️:支給券が届けば工務店に連絡しましょう。支給券は製品が届くまで大切に保管して下さい


Step5:矢崎化工株式会社へ作成依頼しましょう!

矢崎さんには工務店から連絡してくれます。つまり支給券が届いたことを工務店に連絡すればあとは工務店がやってくれます。Step2で矢崎さんに図面を作成してもらってますので、支給券が届き工務店が連絡してくれればイレクターの作成がスタートします。

連絡をしてからおよそ”2週間”でイレクターが完成します。


Step6:納品

完成したイレクターは工務店へ届けられ、工務店がご自宅に納品してくれます。この時に先ほどお伝えした支給券を工務店にお渡ししないといけないので、それまで大事に保管しておいて下さい。

補足:もし身体障害者手帳の助成範囲を超えた場合は自己負担となりますので、超えた分は工務店に現金もしくは振り込みでお支払いして下さい。

⭐️Check Point⭐️:Step1からStep6:納品までに要する時間はおよそ”1ヶ月弱”です。しかしこれはスムーズに物事が進んだ場合とお考えください。およその期間を計算に入れていつまでに〇〇のように逆算して行動するようにして下さい


イレクターの補助金はいくら?

日常生活用具は歩行支援用具入浴補助用具に分けられ、入浴補助用具は入浴に関する用具、歩行支援用具は入浴以外の用具全般とお考えください。なのでトイレで使用するイレクターは歩行支援用具となります。

歩行支援用具は6万円  入浴補助用具は9万円

と決まっていますので、この範囲内であれば持ち出しはゼロとなります。超えると自己負担となります。

耐用年数は各自治体で違うのでHPでご確認下さい👇

役所HP ▶︎ 日常生活用具 ▶︎ 物品一覧(金額と耐用年数)


イレクターっていくらくらいするの?

デジタルカタログに各製品の価格が載っておりますのでご参考になさって下さい。オーダーになりますと既製品のおよそ1.5倍で計算してもらえると目安になると思います。

カタログの実物は無料で送って下さいます。👇こちらからカタログ請求できます。ご興味あれば是非!!


まとめ

いかがでしょうか?面倒な手続きは確かにありますが、イレクターがあることで日常生活の幅が広がると良いかなと思います。もちろんイレクターにも一長一短ありますので、絶対に入れた方が良いという訳ではありません。ご自身の生活環境に必要であれば入れてもらうと良いと思います。

この情報が少しでも脊損・頸損当事者やご家族のお役に立てれば幸いです。


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