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「新商品とポイントとワクワクが止まらない~『コンビニ人間』~」

『コンビニ人間』 村田 沙耶香 著 (文藝春秋)
 
コンビニ…いつも安いものが売られているスーパーを常に利用している主婦にとって、定価に近いちょっと高めの商品をわざわざ買いに行くことがあまりなかった私。
 
それでも最近とくに、コンビニオリジナル商品の紹介番組やどんなにすごい商品かアピールするCMなどを見ると、つい寄りたくなってきたのも確かです。
 
そして商品だけではなく、コンビニ自体がサービスのかたまりみたいになってきて、地域に一軒あればなんでもできるようなありがたい存在でもあります。
 
しかしそこで働く従業員の仕事はただレジで商品のバーコードをピッピッってするだけではなくて、陳列棚の整理に商品発注、公共料金やチケット代の支払い、荷物の授受の作業などその業務はあまりに広範囲に渡ります。
 
利用する者としてはその作業をすべて覚えて、いとも簡単にこなしていく様子を見ているだけで尊敬に値するほどです。
 
そんなコンビニひとすじに働く女性を扱った小説が本作。
どこかのレビューでも書かれている人がいたけど、主人公はやや発達障害なのかな?と思われる言動がありました。
かと言ってその他の登場人物、そして自分自身、一般ピープル…がいわゆる“普通”の人間だって、いったい誰がどんな基準で決めるんだろう?と気付かされる物語でした。
 
普通はこういう生き方をするんだよ、普通の人間になって欲しいと主人公の家族や友人たちは言います。
 
でもこれまでコンビニでしか働いたことがなく、三十代後半になっても独り身だった主人公が男性と一緒に住み始めたと聞いただけで、やれめでたいとか、やっとちゃんとした生活をしてくれるとか、詳しいことも聞かず手放しで喜ぶのです。
コンビニの店長や同僚まで、彼女はこれまで仕事に手抜かりなどなかったはずなのに、彼女と男性の事で浮足立ちなぜか仕事が手に付きません。
 
主人公はコンビニの仕事に愛情を持っており、生きがいを感じていて職業魂さえ感じるほどにまっとうなのです。
 
コンビニという、マニュアルできちんと管理され統率された職場で居場所を見つけた主人公。
もし発達障害があるのなら(物語では一言もそういうことは触れていませんが、どう見てもそうと感じてしまいます)、たとえ妹だろうが友人だろうが、どんなに心配をしているとはいえ、主人公がせっかく生きがいを感じている仕事を取り上げる権利はいっさいありません。
もし仕事上、大きな失敗があるとか、不向きだとか、サボりグセがあるとかなら別ですが、逆に人よりデキるし真面目です。
 
しかし…白羽という男性は、かなり気になりました。
勝手な持論を他人に押し付け、すぐに縄文時代からの男女のあり方・ムラのあり方を引き合いに出し、自己中心的でヒモ的な生き方しか出来ません。
うまく行かないことは全て周りのせいにするのです。
 
けっこう、こういうヤツ・・・いますよね~。(読んでいて、かなりムカついたけど)
この白羽も結局、普通という既存の概念からはみ出てしまった、ちょっと可哀想な人間なのかも。
 
作者が芥川賞を受賞した後もある程度まで実際にコンビニで仕事を続けていた話は有名ですが、本人のコンビニ愛があふれるお話でした。
 
私自身が年齢を重ねてきて、しだいに以前ならスムーズにできたことがうまくいかなかったり、記憶力も衰えてきている中でこれほどのコンビニでの業務を完璧にできるのが、何度も言いますがすごいと思うのです。
 
ここ最近は始めたポイ活もあり、以前より頻繁に行くようになったコンビニをもっと楽しもうと思っています。
TV番組とコラボしたコンビニオリジナルスウィーツなどにもついついはまってしまう自分に、昔の自分が見たらきっと驚くでしょうね。

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