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「思ってたんと違う…けどやっぱり尊敬~『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』~」

『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』 二宮 敦人 著 (新潮社)
 
おそらくほとんどの日本人が東京藝大に対してそもそも抱いていた印象と、読んで知った(一部の学生ではあるが)事実とがかなり違っていることに、軽い衝撃を受けるのではないでしょうか。
 
もちろん受験に合格して藝大生となるには、かなりの難関を突破しなければならないことや、卒業生には有名なアーティストが多くいることも知っています。
 
でもその中での芸術活動を行う土壌はかなり自由でありながら、しかしやはり生半可な気持ちで入学できるところではないことは、十分この本で伝わりました。
 
音楽を学ぶ音校、美術を学ぶ美校とでは、同じ上野のキャンパスでも全く校風が違うのです。
颯爽として静かな感じの音校に対し、かなりゆるく時には奇抜な校風の美校。
これだけでもかなり興味をそそられるけれど、ひとりひとりの学生を取り上げても相当個性的な人物が多いようですごくおもしろかったです。
 
そして藝大で学んだあと芸術の分野で高みを目指し、なお一層スキルアップするため大学院へと進学したり、一部就職して様々な分野で活躍する卒業生は半数ほど。
そのほかはなんと、“行方不明”という事実になんだかびっくりするやら、納得するやら。
 
それにしても、音校・美校それぞれにいろんな専攻科があることも改めて知ったことのひとつ。
かなりマニアックな科もあるけれど、そういうものに本気で、真剣に、でもどこか楽しんでいる人たちがなんと多いことでしょう。
尊敬の眼差しです。中には、かなり危険な環境で作品に取り組んでいる人たちもいます。
 
また精神的に追い詰められていながら、どこかに自分のアイデンティティを求めている人もいます。
それを芸術の中で見つけて、表現しようとしている人がいるんですね。
これまで私は芸術というものをちょっとナメていたんじゃないか?、とさえ思うほどです。
 
そんな天才たちが集う東京藝大というところは、やはり日本を代表する素晴らしい大学ではないでしょうか。
 
以前東京へ遊びに行った際、上野方面に行ってその空気を味わいたかったので、国際子ども図書館や国立西洋美術館、上野動物園には行ってみました。
しかしさすがに藝大付近には近づけず、心残りでした。
が、秋の藝祭の季節にぜひ訪れて、藝大の一部に触れてみたいと決心を新たにしました!
(学園祭では気軽に外部者が学内を楽しめるみたいですし、公園では公開パフォーマンスも行われているということも聞きました)
この今の状況がもっと緩和されることを願ってやみません。


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