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「親もいっしょに二年生」

雨のちくもりの天気予報が大幅にはずれ、暑い日となってしまった日、長男たち二年生は校区内探検をすることになった。

グループになって、地域内の自分たちが行ってみたい場所を歩いて見てまわるという企画。
(当時はあの池田小事件から以降、他の地域では子どもたちを自由に歩き回らせるということにかなり反発があるという中、長男の小学校では、あえてそれをやらせてあげようという方針でずっと続けられていた。現在はもう、地域探検はどこでも普通にやっているかな)

そのためには、私たち保護者の協力がないとできないということで、一グループに一人の保護者がつくかたちで行うことになり私も同行することになった。

事前の説明で保護者の心得としては、
① なるべくいろんな問題は子どもたち自身で解決させるということ
② 安全面を一番に注意して見守ること
③ 危険なことをやろうとした場合にだけ強く止めさせること 
④ 困っている時に助言をしてあげること
などを肝に銘じておくように言われた。

二年生全体で集まって、「では探検隊、しゅっぱ~つ!」の掛け声で一気に飛び出していく。
その時点からついていくのに必死。私はあえて長男のいるグループはさけて、同じクラスの別の子たちを担当した。

その子たちが計画した目的地はたんぼと近くの川。
最初のたんぼなどは、ただ見てそのまま通り過ぎていく。
「ええ~?何も観察とかしなくていいの?」という私の問いかけもなんのその、「いいの、いいの」と先を急ぐ。

着いた次の川では、目の色が変わって一目散に中に入っていった。
はは~ん…そうか、川遊びが一番の目的だったのねと、納得。(見れば他のグループも来ている)
長い木の枝と釣り糸、そしてなんと釣り針まで持ってくるという用意周到さ。
後になって、釣り針についてはたぶん先生も知らないことで、知っていたら許可するはずがない物だということだったが…。

さかなの収穫も無く、あったのは予想通りの事故。
釣り針が同じグループの女の子の指にひっかかってしまった。
なんとか針は取れたものの、かなり痛そうにしている。保健係と称する別の女の子が消毒・ティッシュと出して処置をしてあげている間に絆創膏を取り出して貼ってあげる私。

二年生ともなると、俊敏に体と頭が動き感心する。やさしいところもあって、
「おばちゃんのペースに合わせて歩いてあげるよ。」とか
「きつかったら、休みたかったら言ってね、おばちゃん。」と泣けてくるような心遣いもしてくれる。

近くの公園で少し休憩したあと、他にも大人の人と関わりあえるような施設にも行かせて、という先生からのお願いのことを話し、近くの郵便局へとLet‘s Go!

局の方へも事前に知らせてあるし、いくつかのグループがすでに訪れているから局員の方々も慣れたもので、子どもたちの「お金はどうやって出てくるのですか?」などというあいまいな質問にも丁寧に答えていただいた。しかし、郵便局を出た後に本人たちにどうだったか聞いてみると、よく理解できなかったようだ。なかなか難しいね。

郵便局のとなりのオートバイのお店の軒下にツバメの巣があり、雛が親鳥のえさ運びのたびに顔を出しているのが見えた。
バイク店のおばさんが、子どもたちがツバメをずっと見ているので声をかけてくださった。

「ツバメの子ども、とりた~い」というとっぴな頼みに、そのおばさんが助言してくれた。
「ツバメにさわったりするとね、人間のにおいがうつって、親が子どもを育てなくなるんだよ。」
とやさしく言ってくださったのだ。
おばさん、グッジョブ!皆でありがとうございましたと言って別れた。

帰り道、「収穫がなかった」「記録は何書こう」と子どもたちが言い合っているのが聞こえてきたので、
「バイク屋のおばさんがいいこと言ってくれたじゃない。」とアドバイスしてみた。
「あっ!じゃあ、俺ツバメのこと書こう!」とだれかが気づいてくれてほっとした。

釣り針事件という思いもよらないこともおきたが、気分は私も小学二年生。
いっしょに歩きながら、ウキウキ気分だった。

なんとか無事に学校へたどり着き、暑くて疲れたけどとっても楽しい時間を共有できた。
あえて長男といっしょじゃなくてよかったようだ。
他の同級生の顔が見られて、我が子以外の子どもの心を感じ取ることができて私にはそれが収穫だった。

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