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≪intermission⑤≫ 心落ち着く空間

インテリアやライフスタイルなどに興味を持っている人はたくさんいらっしゃると思いますが、私もその中の一人でした。

独身の頃はもちろんその後もインテリア雑誌などをたまに買っては、そこに紹介されている家や部屋などを眺めながらいつか私も家を持つことがあったらと、当時流行っていたカントリー調の洋風の家に憧れておりました。
(タイトルの画像のインテリア雑誌はほんの一部で、シリーズで買っていた雑誌の半分は多くなりすぎてすでに処分しています)
 
実家がごく普通の家…和室が中心で洋室が一間だけあるような、どこにでもある一般的な家で育ってきたので、雑誌のような洗練されたオシャレな家につい憧れてしまいます。
もうそれはそれは、「いつかきっとこういう家に住むのだ!」と決心みたいなものも芽生えていたのです。
 
 
結婚して初めてのアパート暮らし。
最初は夫と二人だけでしたので、2DKというその狭さは何も感じませんでしたが、その後男の子が二人生まれ四人家族になると、さすがに窮屈さが出てきます。
ただでさえ結婚当初から比べるとモノが増えていたのに、子どものモノまで増えていくとなると、よほどのお片付け上手でない限り部屋の惨状たるや目も当てられません。
 
片付けるそばからおもちゃを出しっぱなしにしていくので、片付けは追いつかず、似たような境遇の方なら共感していただける“あるある”だと思います。
 
 
そんな悲惨な部屋環境の中でも密かに最初に書いたような家に対する思いを募らせていました。
こういうこともきっと“あるある”な気持ちではないかなと思います。
 
さて、これから記す文章は現在住んでいる我が家を建てる前、そのアパートに住んでいた頃に書いた文章です。
憧れと夢を持ちながらも、どこか別の所では冷静さを保ちながら自分のアイデンティティと好みの差異に気づき戸惑っているのも確かです。そんな私の、かつて感じていた心の中を少しお見せしましょう。
 
 


 
2003.3.29記録
 
洋風のナチュラル・カントリーな外観のおうち、フローリングの床、センスのいい花柄の壁紙…。
 
ずっと憧れのインテリアで、いつかはそんな家に住みたいなと思っています。
でも暮らし自体はさすがに日本的な物や事柄から甚だしく逸脱はできませんよね。
 
たしかに、日本古来の生活習慣の細かい由来とか伝統文化、正確なしきたりなど忘れ去られようとしている中で、忘れてはいけない大切なものを残していきたいという焦燥感も心の中に生まれてきます。
 
環境がどんなに合理的な洋風の暮らしに染めようとしても、日本人の血がゆずれない何かで和風の空間、におい、こころを求めている気がします。
 
 
実は私、高校生の頃部活で生花部に所属していました。
(残念ながらセンスがないのか、まったく上達はしませんでしたのであしからず…)
 
外部から華道のお師匠さんを招いて習っていました。
ほとんど一般的な盛り花を中心にやっていましたが、持ち前の(?)微妙なセンスでなかなか先生のようにうまくできなかったものです。
 
高校2年生のとき、暮れも押し迫ったある日、当然生徒である部員の私たちは冬休みでしたが、お正月のお花の生け方を習う為に先生のご自宅を訪問しました。
 
先生のお宅はけっこう街中にありながら、大通りを少し入った小路にある純和風の建物で、中に入ると外の喧騒がほとんど聞こえない静かな場所でした。
 
家の中に通していただき廊下を渡りドキドキしながら綺麗な中庭を眺め、障子のならんだ日本間に案内されると、そこでお正月花の生け方を教わりました。
来ていた部員がひととおり生け終わると、別室に通され、お茶をもてなしていただきました。
 
そのときいただいたお茶は、完全に覚えてはいないのですが、それまで飲んだことの無い味がして、すごくいい香りがしたことは覚えています。おそらく普通の緑茶ではなかったのでしょう。かなり高級そうでした。
 
確か、先生が「このお茶は京都から取り寄せたのよ」とおっしゃっていましたっけ。
いっしょに、これまた食べたことの無いようなおいしい干菓子をいただきました。
 
あまりに珍しいものをいただいたので、同級生の親しい部員と顔をみあわせて、お互いにっこり微笑んでいました。おそらく先生も、美味しそうに飲み食べている私たちを見てご満悦だったことでしょう。
 
静かな、そして冬の寒さでキンと張り詰めた空気と、先生の和室の清潔で厳粛な雰囲気が意外にも心地よく、まだ高校生だったけれどやっぱり日本人なのだなあ…という感覚におそわれたのです。
 
 
もうあのような空間に身をおく機会はなかなか恵まれないけれど、時々和の心を取り戻したいなと思う今日このごろです。 (以上、過去の文章から)
 


以上がかつて書いた文章ですが、それからアパートのある街から田舎へ引っ越してかなりの年数が経ち、あの頃のような気持ちはまだ持ったままではおります。
今の家は当時考えていたがっつりのカントリー調というよりも、もっとナチュラルな感じに仕上げてもらいました。
憧れていた家をついに持ち、でももちろん和の慣習はできるだけ季節に応じて取り入れているつもりです。
 
あのお花の先生の素敵なお邸みたいに純和風の家ではないけれど、一部屋だけ和室を作ってもらいました。
狭いのですけど、お正月やお盆に夫の弟家族が訪れて食事をもてなす時は、やはり和室が重宝します。
 
 
住めば都という言葉通り、ある程度自分の思いを遂げたインテリアの中に身を置き、住んでいるうちに心も体も家になじんでいるような感覚があります。
 
心が落ち着く空間というのは、憧れていた洋風の家というよりも、そして昔ながらの純和風の家というよりも、実際に住んで気持ちよく暮らせている場所がそうなのかなと近頃は思っているのでした。

月曜日に先週の分のご褒美をいただきました。
相変わらず数字はかわいいもんですが、前記事の『炎に恋した少女』の紹介文に対してです。
みなさんのスキに感謝感謝です。ありがとうございました。


 

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