見出し画像

「優しい帰り道」

長男四年生、次男一年生のころ。兄弟一緒に登下校をするようになって一年になろうとしていた。
そんなある日の学校の行き帰りに、道路上で自動車に轢かれて死んでいる猫をよく見かけると、息子たちが話していた。

「俺たちさあ。猫が死んでいるのをよく見るんだよねえ。かわいそうでさ。」と長男。
「そう、なんかさ。こないだも死んでたね!」と次男。

「うん。ちょうどトラックが先の方に止まっててさ、近づいたら猫が死んだのをじ~っと運転手が見てたんだよ。きっとあの運転手が轢いたんだと思うよ。でもそのまま行っちゃった。普通さ、ちゃんと猫をどかしたりとかさ、埋めてやるとかするだろ!?ひどいよね」と長男。

そこでこの話を聞いていた私は、
「そういうあんたは、見てたのにそのままだったの?」と喉まで出掛かって言うのをやめた。
だって、おそらく朝の登校中のようだったし、手袋もビニル袋も何にも持たず処理できるわけないし、まず果たして自分が現場に居合わせても何かできただろうか?と疑問がわいたので。

子どもばかりにきれいごとを訴え、自分はきっと何もできない恥ずかしい人間だとわかったのだ。
それでそのまま二人の会話を聞いていることにした。

「ホント、あのへんの道路って、猫がよく轢かれるよね。なんとかならないのかなあ?」と長男が言うと、

「じゃあさ、「ねこ安全歩道」を作ればいいんだよ!そしたら轢かれることないよ、きっと!」と次男。

おお~。なんかいいこと言うじゃん!

「バ~カ!意味ねーよ。そんなの作ったって、猫はすぐ壁とか飛び越えるんだから!」と長男。
…シュン。

次男にしては珍しくナイスなアイデア出したんだけど、凄腕の長男にあえなく撃沈されてしまった。
う~ん・・・もう一つだったね、次男よ。

でもそういうちょっとのことでも(いや!猫を愛する人たちにとっては猫の相次ぐ交通事故は大問題か…)やさしい気持ちを素直に抱いてくれていることに、母はすこし安心したのだよ。

                       画像引用 ©PAKUTASO

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?