ソワノ
作品情報 執一と薫は孤島のホテルに招待される。 ホテルを切り盛りするのは1人の老人。 2人と同泊するのは7人の男女と1匹の犬。 部屋に到着した2人はそこで一本のビデオテープを発見する。 それは今まさに2人のいる部屋で女性がナイフで解体される様を記録したスナッフビデオだった。 2人は果たして生存できるのか?ビデオを置いた人物の狙いは?
↑新 ↓古 俺たちは黒ギャルを知らない:黒ギャルを知らない黒ギャル好きの男子高校生の話(カクヨム・novel days) 互い咎の処方:男女が孤島で殺人事件に遭遇するミステリー(note)
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 ◇◇◇ 喫茶店の奥の席で、薫は女性と向かいあっていた。女性の前には平凡なブレンドコーヒーが、薫の前には巨大なグラスにソフトクリームやチョコチップ、フルーツなどが満載された豪勢な飲み物が鎮座している。 「彼、困ったちゃんなの」薫はストローの包装紙をいじりながら言う。「私を負かせられたら、なんだって良いんだって」 「……そのためにあなたをおとりにして、危険な目に遭わせた?」話の相
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f ◇◇◇ しばらくの間、薫の足は正座した後のようにしびれていた。よろめきながらもベランダを見上げる。執一が、自分を見下ろしていた。 当然彼も自分に続いて降りてくるものだと思っていた。だが―― 執一は、背後を振り返り、部屋の中に引き返していった。 そして、そのまま彼はベランダに出てこなかった。
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** 「さてと、みんなそろったね」薫が言う。「見たよね、あれ」 「……」美紀は不安そうな顔でうなずく。 「あの、頬がべろんと――ああ……嫌だ嫌だ」気味悪そうに悦子さんは自分の腕を抱く。 「人間の皮をマスクのように被ってたよね?」 「……ああ」ぼくはうなずく。「剥がれた皮膚の下に、明らかになにか、シ
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** 「……どういうことだ」ぼくは言う。「なぜ、犯人の藤山さんが死んでるんですか」 「犯人?」と聞き返してくるメンバーに対して、ぼくは、藤山老人がホテルに殺人を目的とした罠を張っていたこと、それを日記に記していたこと、娘である江能さんとグルであったことを説明した。 「娘?犬の女性がかね?」 「そう
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** 階段を下りると正面に玄関があり、隣に談話スペースがある。食堂とキッチンは左側に。藤山老人の部屋は、その反対側――右側の廊下の一番奥に位置していた。 まず、ぼくは食堂を覗いてみる。薫と他の宿泊客たちが揃って食事をとっている。藤山老人の姿はない。となると、行き先は二階の客室か、外か、自分の部
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** 「やあどうも」 階段を下りたぼくと薫を出迎えたのは、秀二さんと悦子さんだった。二人は、階段を下りて左手にある、食堂の前に立っていた。 「こいつが眠れないっていうもんだから。仕方なく、早く降りてきたんだよ」秀二さんが言う。 「なにを恩着せがましく。あなただって、緊張でげーげー吐いてた
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** 武広さんを拘束しバリケードを築いたぼくたちは、それぞれの部屋に戻った。犯人らしい人物を捕らえても、やはり完全には安心できないということだろう。 ぼくと薫は外に出て、絵美さんと武広さんの部屋の真下を調べることにした。スマートフォンのライトで地面を照らしてみる。上から見たとおり、ベランダ
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** 美紀とマスオさん、そして西村夫妻は、部屋の外に出た。 部屋の中にいるのは、ぼくと薫。腰を抜かして動けなくなってしまった藤山老人。そして、死亡した絵美さんの恋人、武広さんだった。 武広さんは、どうやら絵美さんの首がなくなる瞬間を見てしまったようだった。先ほど聞いた悲鳴は、武広さんのもので
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** ぼくが部屋に帰ってくると、ほどなくして薫ももどってくる。 「ほんと、つまらない人たち」と笑顔で肩をすくめると、自分のベッドに飛び込む。「今、わたしが死体だったらどうしてた?」 「きみがそう簡単に死ぬものか」ぼくは、ベッドの縁に腰掛け、ビデオテープをじっと見つめる。 あの2人の不快さに我慢
作品情報:https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話:https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** ぼくと薫は一階に降りると、階段の正面にある談話スペースに向かった。ソファーが、テーブルを囲むように並べられている。人が集まるとしたらここだろう。 周りには、南国風の観葉植物の鉢と、ブラウン管のテレビと、ビデオデッキがあった。 「見せないほうが良いと思うなあ」 「隠しておいて、後で判明
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** ホテルは、一階が集団で利用する場所、二階が個別部屋、と、それぞれ割り当てられていた。一階には食堂や談話スペースなどが集まっていた。管理人である藤山老人の部屋も一階にあった。一階と二階を行き来する手段は、中央にある階段だけだった。二階は、客が泊まる部屋が計五部屋が並んでいた。ぼくと薫の部屋
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 1話 https://note.mu/sowano/n/nf8615209be2f *** スリ事件を解決したことにより、薫は人々から取り囲まれた。犬をつれた女性――江能みちる、が隣に座り、薫に訊く。 「いったい何やってる人なんですか?」 「ぷーちゃんです」 「ぷーちゃん?」 「フリーターなの」薫はほほえむ。薫は垂れ目なので、口元だけの変化だ。 「へ~」江能さんが大きくうなずく。
作品情報 https://note.mu/sowano/m/m45bec0c01b32 *** 海は穏やかだった。風もほとんど吹いていなかった。船が進むことで生じるそよ風を感じながら、ぼくは船の手すりに寄りかかり、青緑色の海を見下ろしていた。サンドイッチをかじる。もしこのパンくずを投げ入れれば、なにかが海面下から出てきそうな……そんなことを思わせる深さだ。 「つまんないねぇ……」隣で同じく海を眺めていた薫が言う。 「海上でそんな面白いことが起きるわけ無いだろ」ぼくは言う