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4月は穏やかに始まって。

敬愛する、アーシュラ・ル・グウィンさんのエッセイを読み始めた。そう、あの『ゲド戦記』の作者である。(ジブリ映画のアレではない。)

詩的な表現に心打たれながらも、最初からなんだか、心から頷けることが多すぎて、逆に胸が苦しくなってくる。だから休み休み、読んでいる。今の私には劇薬であって、少しずつでないと、読み進められない。

その本は、ずっと前から読もうと思っていたが、図書館にあったので予約していた。予約していたことはすっかり忘れていた先日、ふと図書館のマイページを見ると、「予約1」となっている。

何か予約したっけ?そう思ってみたら、忘れていた本だった。

しかし、28人待ち!一人最短で2週間としても・・・・当分読めそうにない。だからkindleで買った。大切な本は紙の本で買うことにしているので、紙と迷いに迷ったが、今の私には紙の本を読むほどの余裕やタイミングがなかなかない。

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こんな風に率直に言葉で表現できたらと思う。私は、自分の本音を胸の奥に押し込めているのではないか。いや、そんなことはない。

そんな不毛な問いがずっとある。

こういうものを読むと、湧き上がってくる何かがいつもある。私は、内側の層と外側の層で生きていて、いつも外側の層で”済ませている”。そんな感覚。

もし内側の層で感じていることを表現してしまえば、人は引いちゃうんじゃないか、とか。そういう恐れを持っているのかもしれない。

それなのに、内的な層の私が、その感情が、表現されたがっている。そう思うのだ。

その内的な層の感情にほんの少し触れたのは、不思議な話だが博士論文を書いている時だった。論文には感情や私情など一切排除しなければならないのに、だった。なぜならその感情の代理となった情熱を羅針盤にして暗闇を進む感覚だったからだ。どこまで深みに入っていっても、周りの人たちは平然としていた。それが私にとっては安心の場所だった。そのスタンスこそがその大学では研究という名がつけられていたのだった。(それは大学によって違うということをそのあと知ることになり、落胆した。)

ある種の激烈な感情。いや、それは私にとっては普通の感情だけれど、常識の中では、隠されるよう、暗に教えられてきた。それが表現を許されているのは、芸術領域のみであるという幻想ももっている。

実際は、芸術領域であっても、そのような率直さ、ある種の激烈さは、受け入れられ難いかもしれない。

耳ざわりの良い言葉と音楽、目に優しい絵、しかし、それが魂を揺さぶるものであったら人は、戸惑う。

いつしか私の中で、耳障りよく、馴染みよく、極めて大衆的なものが、「デザイン」領域のものであり、魂を揺さぶり率直に真実を見つめようとする極めて個人的な態度を、「芸術」そんな風にカテゴライズしていた。あくまでも私の内的な言葉の問題だけ。

この本のはじめにの冒頭にアーシュラさんが書いていたことは以下のようなものである。

それまで私には、ブログをやりたい気持ちが全くなかった。そもそもブログという言葉が好きではないのだ。バイオ(生命の)ログ(記録)とか、それに似たような言葉を短縮したものだろうとは思うが、その響きは沼沢地のずぶ濡れの木の幹のような感じがする。

「沼沢地のずぶ濡れの木の幹」・・・・笑

(中略)ブログは「双方向的」であるべきだという考え方が、私は嫌だった。読者のコメントをみんな読んで、返事を書き、見知らぬ相手と延々と会話することを期待されるなんて、まったくぞっとする。そういったことをちょっとでもやるには、私はあまりにも内向的すぎる。見知らぬ人に対して楽な気持ちでいられるのは、物語や詩を書いて、それらに代弁をしてもらい、自分はその陰に隠れていられる場合だけだ。

物語は作者を映し出す。ゲド戦記に登場する主人公ゲド、それからどなたかがこの本の読書感想コメントに書いていたが、年老いた龍のような、そんな透明で冷静な彼女が透けて見える。

物語。そういう一つの覆いをかければ、人々は受け入れることができる。

あまりにも直接的な表現は、自分が完全にあからさまに、心をオープンに生きている稀有な人を除けばなかなか受け入れられないものなのかもしれない。

強烈すぎる光。

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私の中の、表現されたがっている感情は、どこに行けばいいのか。別に多分、理解されてもされなくても究極的には構わないのかもしれない。ただそれが、自由に外に出て、そこらを散歩するように、私の周りを満たせばいいだけなのかもしれない。

書くことは、間違いなく私にとって(それに多くの人にとっても)一つの表現だし、個人的にはどう書いても自由だと思う。

胸が苦しくなるのは、私の感情が出たがっているからだ。

そのことを、私は理性では知っているつもりなのに、どう出してあげたらいいのか戸惑っているのだった。





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