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フランシス・デュブルイ

Francis Dubreuil。

薔薇の名前。

あ、ウンベルト・エーコのじゃなくて

そんな名前の薔薇がある。オールドローズという部類の、大きな大輪の深紅の花が、ポツリ ポツリと春に、うつむいて咲く。細い枝が、その花の重みに耐えられないから。

今年、私の雑で適当な薔薇人生で、最もたくさんのフランシスが開花してくれた。忘れていた美しさ。


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現代薔薇と何より違うのは、その香り。

言葉では形容できないほどの、香り。

どんな人工的な香水よりも、芳香高い。

私にとって、薔薇は(=オールドローズは)見るための薔薇ではなく、香りのための花。


春になり、(フランシス・デュブルイの場合ほとんど春に一度だけの)薔薇の花が開く朝、この香りだけを、永遠に感じていたい、といつも思う。

他の花はどこか別のところで眺めるだけでいいや、という気になる。

けれど、それは昼になるとすでに変化していき、花も儚い。

大抵のオールドローズは、芳香があり、春に一度だけしか咲かない。

だから、その儚い香りと、そして可憐で控えめでそれでいて気品高い美しさを、長く楽しむために、イングリッシュローズやフレンチローズが生まれたのだと、思っている。



これとよく似た(実際は結構違う)スーヴニール・ドゥ・ドクトール・ジャマン Souvenir du docteur du Jamain

という薔薇もある。

こちらはまだ小さな苗。ずっと憧れていたが今年初めて手に入れた。流石に今年は咲かなそう、、

この二つの薔薇に魅せられて、薔薇が好きになった。

初めて自分の庭ができたので、大好きなバラを大きくして見たいなと思っている。



その「花容」で名高く育てやすいと評判の、ピエール・ドゥ・ロンサールが、ついに札幌でも派手に開花した。よく通りかかるパン屋さんのお庭には、見事なピエールが。

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この薔薇が一斉に開花すると、いつも育ててみようかという誘惑に駆られるほどの美しさではあるが、私にとっては、「香りがない」ことが決定的で、他人様の美しい庭を堪能させてもらうだけにしようといつも、思う。


”あなたの生を 薔薇の花のごとくにあらせなさい
沈黙の中で薔薇は
その芳香を言葉とする”

ババジの言葉より

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