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コンサルとして必要なことは全て『坂の上の雲 五巻』から学べる

みなさんは『コンサル』と聞いて
何を思い浮かべますか?

「無駄にカタカナ言葉を多用する」

「現場のことは何もわかっておらず、
 口だけで役に立たない」

このように、コンサルに対してネガティブな
イメージを持っている方も多いのでは
ないでしょうか。

1年半前、コンサルに転職する前の私も同じような
イメージを持っていました。

ただ、ちょうど転職活動をしていた時期に
読んだ『坂の上の雲 五巻』に登場する
児玉源太郎の姿を見て

自分が目指すべきコンサル像はこれだ!

と鳥肌が立ちました。

(比喩ではなく、本を読んで鳥肌が立ったのは
 この時だけです)


陸軍大将・満州軍総参謀長 児玉源太郎

出所:児玉源太郎_Wikipedia


本noteでは、『坂の上の雲 五巻』から
児玉源太郎の発言を引用して

コンサルとして必要な心技体について
書いてみたいと思います。


「これからコンサルを目指したい」

「コンサルをやっているけど、
 やりがいを感じられない」


と考えている方に読んでいただき
コンサル(=参謀)って本当はこんなに
かっこいいんだと思ってもらえると嬉しいです。


背景

まず、簡単に物語の背景について触れておきます。

舞台は日露戦争時の遼東半島。

児玉源太郎は陸軍大将 兼 満洲軍参謀総長として
日本全軍の指揮をとる立場です。

勝敗を左右する重要な拠点である
旅順要塞を落とすため、
乃木希典が率いる乃木軍は奮戦しますが
攻略の糸口を掴めずにいました。

そんな中、児玉源太郎は自らの指揮で
戦局を打開するため旅順要塞に
向かいます……

【技】専門知識よりも"地頭力"

「豊島は物を知りすぎているから、
 そう思ったのだろう。

 わしは何も知らんから、敵に撃つ余裕を
 あたえぬほどにこっちが撃ちつづければ
 よかろうと思ったのだ。」

出所:坂の上の雲 五


コンサルとして必須の要素、
1つ目は"地頭力"です。

旅順要塞はコンクリートと機関銃で
埋めつくされていて、

『巨大な殺人機械』

という形容の通りに、日本軍の歩兵突撃を
銃弾の雨によって蹴散らします。

旅順要塞


旅順に到着した児玉は重砲の置き場所を
大幅に変更し、敵の要塞の近くに集めて
絶え間なく砲撃を行うことで
この要塞を無力化しました。

攻城砲(重砲)

引用した言葉は、旅順要塞を攻略したあと
児玉が乃木軍の砲兵司令官である豊島少将を
引き合いにして語ったものです。

砲兵の専門家によるそれまでの作戦と
参謀である児玉の作戦

それぞれの明暗が分かれた理由は
どこにあるのでしょうか?


私は、両者の違いは"地頭力"の良し悪しに
あると思います。


以下、専門家参謀を比べて
コンサルとして必要な要素の一つ目である
地頭力について考えてみます。

地頭力=①結論から+②全体から+③単純に


地頭力とは「考える力」のことです。

コンサルの採用面接においても地頭力は
重視されていて、地頭力を測るために
ケース面接やフェルミ推定が行われます。

地頭力には
①結論から考える
②全体から考える
③単純に考える

という3つの要素があります。

①結論から考える

地頭力1つ目の要素は、「結論から考える」です。

常にゴール(最終的なアウトプット)を意識して
タスクを遂行することによって
最も効率的に目標に到達することができます。

言い替えれば、

"手段から"ではなく
"目的から"考えることが重要

ということですが
往々にしてこれが逆転してしまい

「手段が目的化」

する事態が発生します。

【専門家】

・目的:旅順要塞を占拠すること

・作戦:歩兵突撃をメインとし、重砲でサポート

・結果:一時的に要塞を占拠するがすぐに
    奪還される

【参謀】

・目的:旅順要塞を占拠し旅順港内の
    ロシア艦隊を撃沈することで、
    日本軍の海上補給路を確保すること

・作戦:要塞近くに重砲を集中して配置し
    間断なく砲撃することで、
    敵に攻撃する隙を与えない

・結果:海上補給路の確保に成功

***

児玉による作戦の転換前、
乃木軍の作戦は歩兵突撃の一辺倒です。

そして突撃の都度、ロシア軍の砲撃により
殲滅させられます。

そもそも、乃木軍の参謀長である伊地知幸介
(砲兵の専門家)は、

旅順要塞を奪取できたとしても、砲兵の設備をすることに多大の月日を必要とするため、旅順港内のロシア艦隊を撃沈することはできない

と主張していて、攻撃目的自体が不明確となっていました。

その結果……

乃木軍は奇跡的に旅順要塞を一時的に占領することに成功します。

しかし、このとき要塞までたどりついた
日本兵はわずか40人。

また、この40人に対する弾薬や食糧の補給は
全くなかったため、
40人の「勝利者」はやむなく山を下り
旅順要塞は再びロシア軍のものとなります…

これが仮に駅伝競争だったら、
要塞にたどり着いた時点で勝利となりますが、
ここは戦場です。

いつの間にか目的と手段がすり替わり

「とにかく要塞を占拠すること」

が目的化した結果、多数の犠牲を払いながら要塞を占拠したにも関わらず、ロシア艦隊の撃沈という
本来の目的が達成されることはありませんでした。

***

一方の児玉は、常に日露戦争全体の
戦況を俯瞰しながら

旅順要塞を攻略し、
日本軍の生命線である海上補給路を確保する

という大目的を達成するために動いています。

その目的を達成するためそれまでの
重砲の配置場所を大幅に転換した結果、

これまで6,200人の日本兵が犠牲となった
旅順要塞の西南角をわずか1時間20分で占領し、
さらにその東北角を30分で占領します。

旅順要塞を攻略したのち、乃木軍は旅順港内の
ロシア戦艦を重砲によってことごとく撃沈し、
日本軍は生命線となる海上補給路を
確保することに成功します。

児玉は「結論から考える」ことで、
最短で目的を達成したことが分かります。

②全体から考える


地頭力二つ目の要素は、「全体から考える」です。

あらかじめ課題の全体像を把握しておくことで
「暗黙の思い込み」
を排除して偏りの少ないものの考え方ができます。

【専門家】
・部分から考える
・暗黙の思い込みが存在する

【参謀】
・全体から考える
・全体最適をボトルネックから考える

***

砲兵の専門家である乃木軍の参謀達はなぜ
児玉のように重砲の配置を転換するという
作戦を思いつかなかったのでしょうか。

彼らの言い分はこうです

「要塞砲というのはその砲床工事のべトン
 (コンクリート)がかわくだけでも
 一、二カ月を要する」

したがって、児玉のいう

「重砲陣地のすみやかな移動などは不可能」

また、重砲によって一昼夜ぶっとうしで
歩兵突撃の援護射撃を加えるようにとの
児玉の指示に対しては

「となれば、味方を射つおそれがあります。
 おそれというより、その公算大であります。」

といいます。

***

このような専門家の主張に対する児玉の考えは
こうです

「状況というものは、つねに専門家の
 思うつぼにはまってくれぬ。
 重砲陣地の転換と集中ができねば、
 日露戦争そのものが負けるのだ。」

「援護射撃は、なるほど玉石ともに砕くだろう。
 が、その場合の人名の損失は、
 これ以上この作戦(歩兵突撃)
 をつづけてゆくことによる地獄に比べれば、
 はるかに軽微だ。」

もちろん、重砲陣地の移動がどれほど
困難なものかについて
児玉はよく知っていました。

しかし、かりにひとつの重砲に対して1万人が
かかってロープを曳けば
どんな重量のものでも動かせないはずはない
と考えていました。

このあたりの考え方はフェルミ推定
そのものですね。

「砲兵の常識としては・・・」

という専門家の意見は、
もっともそうに見えて実は暗黙の思い込みに
支配されています。

旅順戦では、重砲の移動がボトルネックに
なってましたが、
児玉は「全体から考える」ことで思い込みを
排除して重砲の配置転換を実現し、
戦局を打開しました。

③単純に考える


地頭力最後の要素は、「単純に考える」です。

枝葉を取り払って対象の特徴のみを抽出する
ことによって、ひとつの原理を複数の事象に
適用することができます。

言い替えると、単純に考えることで
「一を聞いて十を知る」
ことができるようになります。

【専門家】
・複雑に考える
・情報量が増えると、本質が見えにくくなる

【参謀】
・単純に考える
・枝葉を切り捨てる
・アナロジーを使う

***

乃木軍には重砲という陸戦最大の機械を
扱う上で最新知識の持ち主が揃っていました。

しかし、彼らはあくまで「砲兵の」専門家
であって、彼らのいうことを鵜呑みにして
作戦を立てた結果はこれまで見てきた通りです。

情報がありすぎると、余計な情報に惑わされて
結論に至るまでに余計な時間がかかってしまうことを「フェルミ推定のジレンマ」といいます。

***

一方、児玉にとっての重砲は、

「たかが砲弾を筒先からとび出させるだけの
 機械装置」

でした。

砲兵の専門家からすれば、最新機械である重砲を

「たかが、機械装置」

呼ばわりされることに憤慨するでしょう。

しかし、戦場における重砲の役割は
本質的に児玉のいう通りです。

最新機械だろうが、銃剣だろうが、
児玉からしてみれば敵を倒すための道具に
過ぎません。(単純化)

その道具を戦場においてどのように
活用するかということに関しては、
百戦錬磨の児玉に、砲兵の専門家が
敵うはずがありません。(アナロジー)

【体】現場主義

「参謀は、状況把握のために必要とあれば
 敵の堡塁まで乗りこんでゆけ。

 机上の空案のために無益の死を遂げる
 人間のことを考えてみろ。」

出所:坂の上の雲 五


コンサルとして必須の要素、
2つ目は"現場主義"です。

児玉の到着前、乃木軍の参謀長である伊地知は

「参謀には参謀の仕事がある。
 戦闘の惨況をみれば、かえって作戦に
 曇りが生ずる。」

として現場への偵察を禁じていました。

これに対して、児玉は

「第一線の状況にくらい参謀は物の用に立たない」

といってすぐさま前線へ向かわせます。

また、乃木軍の参謀に命じて攻撃正面の
地図を書かせた際、同じ中隊が右翼と左翼両方に
存在する書き間違いを見つけた児玉は、

(この連中が人(味方)を殺してきたのだ)

と激怒し、

乃木軍の参謀達に対して、引用した言葉を
浴びせます。

現場にも行かずに理想論、あるべき論、
机上の空論を並べるだけの役に立たない
コンサルにならないよう
児玉の言葉を胸に刻んでおきたいものです。

【心】最後は気合

「気合のようなものだ。
 いくさは何分の一秒で走りすぎる機微をとらえて、
 こっちへ引きよせる仕事だ。
 それはどうも智恵ではなく気合いだ。」

出所:坂の上の雲 五

コンサルとして必須の要素、3つ目は"気合"です。

これからコンサルを目指そうという人たちからは

「今どき、気合って……」

という声が聞こえてきそうですが、
3つの要素の中でこれが最も重要だと思います。

会社経営では、常に「走りながら考える」
ことが求められます。

いくら現場を訪ね、頭を絞ってきれいな
パワポの資料にまとめても、
迅速な意思決定ができなければ意味がありません。

後から振り返って、
あの時こうしておくべきだったと
外野が言うことは簡単です。

しかし、当事者として刻々と移り変わる状況のなかで責任をもって決断を下すために必要なのは、
つまるところ胆力、気合です。

作戦にしたがって旅順要塞へ歩兵突撃した日本兵の姿を前線で目の当たりにした児玉は

「あれを見て、心を動かさぬやつは人間ではない」

「参謀なら、心を動かして同時に頭を
 動かすべきであろう。
 ・・・(中略)・・・
 頭の良否ではない。心の良否だ。」

と言います。

一瞬の機微を逃さないために常に心と頭を
動かすことが、参謀には求められるのだと
思います。

おわりに


普段、小説はあまり読まないのですが、
『坂の上の雲 五巻』はこれまで10回以上は
読んでいます。

(全八巻なのですが、五巻をリピートし過ぎて
 最後まで読めていません…)

専門家の意見ばかりを聞いて方針を決定する
という状況はコロナ禍の日本においても
見られました。

自らが判断をせず、専門家の責任にしてしまう方が
楽なのは当然です。

児玉源太郎のすごさは

自分の立てた戦略次第で大勢の味方の生死、
ひいては日本の命運が決まってしまう

という極限の状況下において冷静に状況を分析し、
素早く決断を下す胆力だと思います。

児玉源太郎の言動から学ぶことができる
コンサルとしての必須要素

【心】気合
【技】地頭力
【体】現場主義

の3つを意識することで、
目指すべきコンサル像に近づけるのでは
ないかと思います。

『坂の上の雲』全八巻を読むのはむり!
という人は、五巻の「二〇三高地」の章だけでも
ぜひ読んでみてください。

コンサルとして必要な考え方は、
すべてこの中に書かれていると思います。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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