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いじいじする

「いじいじする」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。これは広辞苑によると「いじけて、ふるまいがはっきりしないさま」という意味があると書かれている。つまり心の中が明確ではなく、行動や態度がいじけている様子を指す。では「いじける」とはどういう意味なのかというと、消極的だったり、臆病者だったり、何かにふてくされているような、また拗ねているような状態を指す。

最近読んだ小説の中に「いじいじ」という言葉が出てきて、調べてみたところ、前述した通りの意味を理解し、普段はあまり耳にしない言葉だなと感じた。その作品を下記に引用してみる。

「馬鹿野郎!手前たちは木偶の棒だ。卑怯者だ。この子供がたとえばふだんいたずらをするからといって、今もいたずらをしたとでも思っているのか。こんないたずらがこの子にできるかできないか、考えてもみろ。可哀そうに。はずみから出たあやまちなんだ。俺はさっきから一伍一什をここでちゃんと見ていたんだぞ。べらぼうめ! 配達屋を呼んで来い」と存分に痰呵を切ってやりたかった。彼はいじいじしながら、もう飛び出そうかもう飛び出そうかと二の腕をふるわせながら青くなって突っ立っていた。
有島武郎『卑怯者』
どっちの方が貧乏人なのか、わかったものでない。君は、二言目には、貧乏、貧乏といって、悲壮がっているようだが、エゴの自己防衛でなかったら幸いだ。人に不義理はしていねえ、という事が唯一の誇りだとか言っているが、無理なつき合いはしたくねえ、というケチな言葉も、その裏にはありはしないか。自分は、貧乏人根性は、いやだ。いじいじして、人の顔色ばっかり覗いている。自分は君に、尊敬なんか、してもらいたくなかった。お互い、なんの警戒も無しに遊びたかったのです。それだけだ。
太宰治『風の便り』

どちらの作品も「いじいじする」という言葉が用いられているが、たしかに前述した通りの意味だとわかる。

「いじいじする」というのは割と日常的に感じる心情だったり、生きていて何かしらのタイミングで経験したりするものだと思う。でもあまり堂々と表情や態度に出すのはよくないかもしれないけれど……。

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