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【"競争の戦略"を要約】2つの重要な参入障壁を解説【新規事業への参入戦略②】

こんにちは。

ノーコードを使用してプロダクト開発をさせていただいている蒼士(@Soushi_nocode)と申します。

さて、ここからが本題です。


前回に引き続き、マイケル・E・ポーター氏の「競争の戦略」という競争戦略の古典的な著作に基づき、新規事業への参入戦略に焦点を当てた記事を執筆します。

Part1をまだご覧になっていない方は、ぜひPart1からご覧ください。


今回はPart2ということで、新規参入をするにあたって直面する2種類の参入障壁について本書で述べられている内容を紹介します。


続きのPart3では
・参入先業界の選定方法

について紹介する予定です。


では、早速いきたいと思います。


☑️2種類の参入障壁の検討

前提、本書では業界の競争状態を決めるのは5つの要因ということで、そしてその5つの要因が集結して、業界の収益率が決まると述べられています。

その5つがこちらです。

5つの競争要因
参考:競争の戦略

当記事では、その5つの競争要因の中で、青部分の「新規参入者」の立場からの戦略の一部を説明しているということになります。

5つの競争要因は、ラーメン業界でいえば下記のような感じです。

競争業者:他のラーメン店
供給業者:麺やスープ、野菜などの原材料や調味料を供給する企業
新規参入業者:新たに出店されるラーメン店
買い手:ラーメンを消費する顧客
代替品:ハンバーガー店、ピザ店…など


では、話を戻します。

自社内で新たに事業を起こす場合、まず気をつけなければならいのが2種類の参入障壁に直面するということです。

2種類の参入障壁とは

①構造上の参入障壁
②参入した業界の既存業者の反撃

になります。


すなわち、参入障壁が強固で、既存業者の鋭い反撃が予想される場合は新規参入は難しいということになります。

では、その参入障壁とは何なのか、また、既存業者の鋭い反撃が生じる可能性について下記でそれぞれ具体的に解説をします。


①構造上の参入障壁

⑴規模の経済性
規模の経済性とは、一定期間内の生産量が増えるほど単位あたりのコストが低下するということです。

なので、新規参入業者は初めは少量生産でコスト面での不利に甘んじるか、初めから大量生産をして既存業者からの強烈な反撃を受ける危険を覚悟するかの2択になります。

つまり、ラーメン店を始める場合でいえば、少量生産からスタートすると単位あたりのコストが高くなり価格競争で既存の競合店に対抗するのは難しく、また、仮に膨大な初期コストをかけて大量生産からスタートして規模の経済性を享受しても、既存の競合店からの強烈な反撃を受ける可能性があるということです。


⑵製品差別化
製品差別化とは、製品の差異、過去からの宣伝などによりブランド認知が高く、顧客の忠実度を勝ち得ていることです。

差別化が存在すれば、新規参入業者は既存業者の顧客忠実度に負けないために膨大な宣伝費を投入するなどをしなければならないので、スタート時点での赤字は間違いなく、また、この努力を一定期間続けなければならないので、参入障壁になります。

つまり、ラーメン店を始める場合でいえば、たとえ顧客に独自性を提供できていても、その製品差別化を確立するためには、積極的な宣伝とブランディング活動を行っていく必要があり、多くの努力と投資が必要になります。


⑶仕入れ先を変えるコスト
ある供給業者の製品から別の業者の製品に変えるとき、買い手に一時的に発生するコストがある場合
、参入障壁ができます。

このコストには
・従業員再訓練のコスト
・補助設備を更新するコスト
・新しい仕入れ先を調べるコストと時間
・取引関係をなめらかにするための精神的コスト
などが含まれます。

これらのコストが高いと、買い手は従来の供給業者から新たな参入業者に切り替えることが難しくなり、変更させるためには大規模な改良やコスト競争が必要となり、参入障壁として機能します。

新しくラーメン店を出店する場合で考えれば、買い手、つまり、ラーメンを消費する顧客が新しくラーメン店を探すコストくらいになるかと思います。

ですが例えば、企業で使われる請求書管理ツールを売り始める場合で考えれば、それを導入する企業にとっては下記などのコストが発生することが考えられます。
・新しいツールの操作方法を学び直すこと
・既存のデータを新しいツールに移行すること
・新しいツールの提供元企業について調べること


⑷流通チャネルの確保
新規参入者は、自社製品を市場に供給する流通チャネルを確保しなければならない
ので、これが参入障壁になります。

既存企業によって、その製品のための流通チャネルが毅然とつくられてしまっている場合、新規参入者は自社の製品を市場に広めるために価格競争や共同広告費の負担などの手段を検討する必要があり、これらの手法は利益を圧迫します。

新たにラーメン店を開業する場合で考えてみましょう。

基本的にラーメン店はどの地域にも存在していることが考えられるので、あるラーメン店を特定の地域に出店する場合は必ず競合のラーメン店が存在することが考えられます。

その競争相手がいる地域で、SNSやメディアの活用、ビラ配りなどの販売促進などの手段を使用して、他のラーメン店ではなく自分のラーメン店に来てもらえるようにしなければなりません。

また、既存のラーメン店が多い場合、また、地元社会で確立された客層や信頼性のある流通チャネルがすでに存在する場合には、自分の手で全く新しい流通チャネルを作らなければいけないということになることも考えられ、これらが競争激化や収益減少のリスクを伴う参入障壁として機能します。


⑸規模とは無関係なコスト面での不利
既存企業は、規模の経済性とは関係なく、新規参入者が対抗できないほどのコスト面での優位性を持つ
ことがあります。

特に以下の要因が決定的な優位性を生み出し、これらが新規参入者にとって高いコストを強いることから、参入障壁となります。

・独占的な製品テクノロジー
・原材料が有利に入手できる方法の独占
・立地に恵まれている
・政府の助成金
・習熟またはエクスペリエンス曲線

「習熟またはエクスペリエンス曲線」だけわかりづらいので補足をすると、要は製品生産の経験が増えると単位あたりのコストが低下するということです。

具体的には、下記のようなことが考えられます。

・労働者が作業効率を改善して効率を良くする
・仕事場のレイアウトが改善される
・特殊な機器や工程が開発される
・機器のおかげで生産性が上がる
・製品設計の変更で製造がしやすくなる

規模の経済性との違いについてですが、規模の経済性は一定期間における生産性によってコストの低下を期待できるのに対し、エクスペリエンスは累積生産量によって左右されるものであるため、新規参入者はこのエクスペリエンスを築くために追加の努力とコストを負担しなければならないということになります。

また、多角化事業を展開している企業が社内の他の事業との間で作業や機能、原材料などを分担しあったりしていて有益なエクスペリエンスが蓄積されている場合、このコストメリットはより強化され、エクスペリエンス曲線による参入障壁が高まることになります。


⑹政府の政策
政府は、特定の産業やサービスに対して許認可制度などで、ある種の産業への参入を制限、禁止したり、素材資源への立ち入りを制限したりし、これが参入障壁になりうるということです。

例えば、トラック輸送業、鉄道、アルコール販売、貨物運送業のような政府規制産業がこれにあたります。

最近話題になっているのはライドシェア業界ですよね。

日本では、既得権益保護の傾向が残っており、また、道路運送法によって自家用車を有償で運送用に活用することの禁止がされているため、これらがライドシェア業界への参入を困難にしている一因です。

このようなライドシェア業界への政策的な参入障壁は、ライドシェア業界において競争を制限し、既存のタクシー業界に保護を提供する一方で、市場の多様性や選択肢を制約する要因となります。

また、政府の政策は地域ごとに異なる場合もあり、新規参入者は各地域で異なる規制や要件に対応しなければならないことから、大規模で統一的なサービス提供が難しくなります。



②参入した業界の既存業者の反撃

参入を受けた業界の企業が、金銭面及び非金銭的な面から見て、反撃しても元がとれると考えた場合には、参入業者に対し反撃を加えます。

下記に示すような業界へ新規参入を企てると、既存企業からの反撃を招きやすいと考えられています。


⑴低成長業界
低成長の業界において新規参入が行われた場合、既存業者の売上げの絶対額が減るので、この種の参入は特に敵視され、既存業者からの反撃を引き起こす可能性が高いです。

例えば、出版業界は低成長業界の一例です。

電子書籍やオンラインコンテンツが増えたため、従来の印刷物の需要が低下しており、新規参入業者がこの業界に進出する場合、既存の出版社は競争を抑制して自社の市場ポジションを維持するために戦略的な反撃を展開することが考えられます。


⑵汎用品あるいは汎用品化した製品業界
このような製品では、ブランドロイヤリティも、セグメントされた市場もないので、新規参入は単に業界の供給量を増やすだけになります。

なので、業界全体に値引きを起こすことが考えられることから、既存企業からの反撃を招きやすいです。

例えば、おしぼり業界は汎用品化した製品の一例です。

多くのおしぼりブランドが存在しますが、製品の特徴や品質に大きな違いがそこまでないため、新規参入企業が市場に参入すると、価格競争が激化し、既存企業からの反撃を招く可能性が高いです。


⑶固定費の高い業界
固定費が高いと、新規参入によって業界のキャパシティが増え、それによって既存業者のキャパシティ稼働率が大幅に低下するので、新規参入は既存企業からの反撃を起こしやすくします。

つまり、⑵と似ていますが、新規参入によって供給過多になり、既存業者が保有している生産設備が本来の生産や作業量よりも少ない仕事しかしていない状態になるということです。

例えば、通信業界は固定費が高い業界の一つです。

通信業界の市場の需要は限られているため、新規参入企業が通信業界に参入すると、市場にはますます多くの通信回線や基地局が追加され、供給過多の状態になることが考えられます。

通信回線や基地局などが供給過多の状態になると、通信企業は設備を最大限に活用できなくなり、キャパシティ稼働率、つまり、運用効率が低下すること、また、通信業界では基地局の維持など年間に数千億円もの高額な固定費がかかることから利益減少の状態になりかねません。

なので、新規参入企業が市場に参入すると、既存企業は自社の競争力を維持して市場シェアを守るために積極的な対抗策を講じることが考えられます。

実際に、最近だと楽天の通信業界への参入、また、市場シェアを拡大させようとしている活動に対する大手3大キャリアの反撃の活動は、そのような状況を反映しています。


⑷少数寡占業界
既存業者の数が多い場合、新規参入が行われても市場への影響は比較的分散され一社が受ける被害も限定的です。
しかし、既存企業の数が少ない場合、各企業が受ける影響が大きく、それゆえに既存企業は新規参入に対して反撃を仕掛けやすくなります。

このような状況下で予想される反撃の程度を評価するためには、各企業がどれくらいの被害を受けるかを詳細に分析する必要があり、既存企業間の被害の差に応じて反撃の可能性が変動します。

例えば、上記⑶でも挙げた通信業界や航空業界などは少数寡占業界です。

これらの業界では、初期投資や運用コストが膨大であり、新規参入者が市場に参入すること自体が難しいです。

また、既存の主要企業は競合他社の進出に対して敏感に反応し、市場ポジションを維持しようとするため、反撃を受ける可能性も高いということが言えます。


⑸既存業者がその事業を戦略的に重視しているような業界
戦略的に重視とは、キャッシュ・フローや将来の成長という点でその事業への依存度が高いということであり、企業にとっての金のなる木に該当する事業や、他の事業との関連性が非常に強い事業などがこれに当たります。

その「戦略的重要度」を決める要因については本書の別の部分で書かれていますが、長くなるので、割愛いたします。


⑹老舗の既存業者がある業界
業界での歴史も古く、しかもその事業を専業にしているような企業は、新規参入に対して厳しい反応を示します。

既存業者の経営者の考え方と経歴が反撃するかどうかの重要な鍵になります。

また、企業の中には過去の経験や将来への指向などからみて、新規参入を大きな脅威と受け取るところもあり、このような企業は他よりも執念深く反撃をする可能性が高いです。

例えば、スマートフォン市場におけるアップルは老舗の既存業者になります。

実際に、アップルはサムスンのスマートフォン端末がアップルの特許を侵害していると主張し、特許訴訟を起こしたこともありました。


上記、6つの反撃を招きやすい業界を紹介しましたが、既存業者が新規参入に対してこれまでにどんな反応を示したかということを調べることによって、自社が新規参入をした場合の反応の仕方の手がかりを得られることが多いです。


☑️まとめ

今回は、競争戦略の古典である「競争の戦略」で述べられている2種類の参入障壁を具体例を交えて紹介しました。


5つの競争要因
参考:競争の戦略

上記でも述べたとおり、当記事では、参入する側(新規参入業者)の視点から検討すべき参入障壁について紹介しましたが、既存業者の視点から考えれば、今回紹介した内容に基づいて参入障壁を築くことができるということが言えます。


次回はPart3ということで
・参入先業界の選定方法

を紹介する予定です。


当記事の内容は、本書のほんの一部の内容なので、もしご興味を感じられましたら、是非一度、手にとって読んでいただければと思います。


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