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ミュージカル「THE BOY FROM OZ」を25回観て感じたこと。




大好きなミュージカル
「THE BOY FROM OZ」を
通算25回くらい観て
そこから感じたこと。


「THE BOY FROM OZ」は、
やっぱり素晴らしい作品だった。


ブロードウェイミュージカル
「THE BOY FROM OZ」

キャスト
ピーター・アレン:坂本昌行
ライザ・ミネリ:紫吹淳
恋人グレッグ:末澤誠也
敏腕マネージャー:宮川浩
母マリオン:今陽子
義母ジュディ・ガーランド:鳳蘭

オーストラリア出身のエンターテイナー:ピーター・アレン ( Peter Allen ) の生涯を、彼が生み出した名曲とともに送るミュージカル

劇中でも使われている代表的な曲は
「愛の告白 / I Honestly Love You 」
「あなたしか見えない / Don't Cry Out Loud 」
「ニューヨーク・シティ・セレナーデ /Arthur's Theme ( Best That You Can Do ) 」

日本では、2005年に初めて上演され
2006年に同じキャストで再演
2008年にも再び同じキャストで再々演

そして2020年、ほぼ同じキャストで
4回目の上演が計画されていたが
コロナで中止に

それが、2022年、めでたく、
やっと、上演されたのです。
前回の公演から、14年ぶりの上演です。


初演からトータルで25回くらい
観たと思います。

同じ演目を、そんなに何回も観て
面白いの?

そんな風に思う方もいるかも知れません。

面白いです。
面白かったです。
もっと観たいです。

同じ演目を複数回観ることのメリット。
回数を重ねるごとに
観る視点が変わったり
新しい発見や、気づきなど…
作品を、より一層楽しむことができます。

2005年の初演のときは、
私も、まー君も30代でしたが
2022年、観る側も演じる側も
50代になり・・・

30代と50代では、
同じ作品を見たとしても
抱く感想は変わるなー。
そんな変化も実感することが出来ました。

3回目くらいまでは、主役目線。
主人公の人生に思いをはせる。

そうゆう人生だったのか、とか、
どうんな風に感じていたんだろう、とか。
ピーター・アレンの視点で物語を観る。

その後、しだいに気になったのは
主人公の母親。

登場シーンは少ないものの
母親の目線で観ると
夫は、戦争に行って人格が変わってしまい
アル中に。
息子はニューヨークで成功をおさめるが
母より先に他界してしまう…。

常にピーターを見守り、受け止め、励ます存在。
これは、ピーター・アレンの物語ではなくて
ピーター・アレンの母親の物語なのかも知れない
そんな風に思う事も。

次は、ピーター・アレンの妻ライザ・ミネリ。
仕事では女優として認められ
成功をおさめる一方、私生活では、

大女優であるがゆえに精神的に不安定で
支配的な母親との暮らし。

お互い惹かれあいながら
ピーターと結婚するも、
同性愛者でもあった彼からは
心満たされる愛情を受け取ることができず
失意の果てに自ら離婚を決意。

舞台では描かれていませんでしたが
それでもライザは、ピーターを最期まで
看病したそうで。

終盤、そんなライザの
ピーターへの思いやりに満ちたセリフが
胸に刺さる。

これは実在した人物のお話しであるため
台本に描かれてなくても、
登場人物一人一人にそれぞれの人生があった
そう思うと、様々な角度から
作品を楽しむことができたのだと思います。


(あらすじ)
---1幕---
オーストラリアの田舎町に生まれたピーター(坂本昌行)、気丈な母と、アル中の父のもと、ここではない、どこか遠くの華やかな世界に憧れる日々。そんなピーターは14才のとき、母(今陽子)を残し、1人で町を出る。家出した先で出会ったクリスとコンビを組み、瞬く間に、オーストラリアで一番人気のデュオに。

しかし、プロデューサーとのトラブルから香港に飛ばされてしまい…。そこで、たまたま居合わせた大物歌手ジュディ・ガーランド(鳳蘭)に見いだされ、彼女の前座としてニューヨークに渡る。

ニューヨークで、ジュディの娘ライザ・ミネリ(紫吹淳)と恋をして結婚。しかし、女優としてキャリアを積み上げていくライザとは対照的に、仕事が認められず、行き詰まるピーター。

冷え込む二人の関係。

そんなとき、ライザの母ジュディ・ガーランド(鳳蘭)が薬物の大量摂取で死亡。失意のライザ。その後、ピーターとの離婚を決意。

仕事も、妻もなくしたピーターは、仕方なく、故郷のオーストラリアに帰る。そこで、「ここで暮らせばいい」と言う母親の言葉に反発し、再びニューヨークに渡ることを決意。

---2幕---
ニューヨークに戻ったピーターは、矢継ぎ早に曲を書き、敏腕マネージャーのもと、一気にブレイクする。それと同時に、新しい恋人グレッグ(ジャニーズJr.末澤誠也)とも巡り合い、公私ともに波に乗る。アカデミー賞を2度受賞し、人生の最高の時を過ごす。

しかし、そんな矢先、グレッグの病気が発覚。
グレッグはエイズだった。グレッグとの永遠の別れ、失意のピーターは、意見の食い違いからマネージャーと大喧嘩をし、仕事のパートナーも失う。

そして、自身もまた、エイズに侵されていた。

オーストラリアでのコンサートを直前に控え、ニューヨークから帰国しないピーターを心配した母親が、元・妻のライザに連絡する。

ライザがピーターの家に駆けつけると、やせ細ったピーターが。驚くライザにピーターは「スイカ・ダイエット」とおどける。「効果絶大だこと」と答えるライザ。

他愛もない会話のあと
「ダイエットじゃないんでしょ?」
「…あぁ」

咳き込むピーターに、「まだ歌えるんでしょう?」「なら、問題ないじゃない」「シドニーに行きなさいよ」「あんたを待ってるお客がいるんだから」

そして、これまでのお互いの人生を振り返り微笑みあう二人。

さらに、ライザは涙を浮かべながらも、明るく笑顔で「こんなとき、グレッグなら、なんて言うかしら」と、同様にエイズで他界したピーターの恋人グレッグの名前を出す。ライザにとってグレッグは、ピーターに愛された、恨めしい相手。恨めしい相手であっても、その名前を出すことがピーターへの一番の励ましであることをライザは理解していたのでしょう。

結婚前の2人のシーンでは「あなた無しでは、私は生きていけない」と歌っていたライザ。ピーターの病気を理解しながら、大切な人が死に至る病であると知りながら、「歌えるなら、問題ないじゃない」と強がるところと、「こんなとき、グレッグなら、なんて言うかしら」と最後までピーターを思いやるセリフが交差して、ライザを想うと涙が止まらない。

シーンは変わって、オーストラリアのピーターの実家。母との他愛もない会話。「ねぇ、ママ」と話しかけるが「なんでもない」と、病気の事は打ち明けていない様子。

シドニーでのコンサートのシーン。歌う歌詞は「故郷はここ、オーストラリアだけ」。一幕の終わりでは「こんなところ出て行ってやる!」と歌っていたピーターが、2幕の終わりでは「故郷はここ、オーストラリアだけ」と歌います。

若者たちは
いつの世も
一人、旅に出る

でも何も得られず
かなわず
旅路を終えるだけ

いつかここにいられるように
船が港にもどるころ
誰もがみな気づくはず
故郷はオーストラリアだけ

故郷と呼べるのはオーストラリアだけ /  I Still Call Australia Home


若いころは、田舎なんて我慢できずに家を飛び出し、仕事で成功をおさめ、人生の頂点を極めたが、最後にもどってきたのは母親のいるこの町。そんな自身の人生を歌った歌でしょうか。


この舞台、ここからの演出がすごい。

コンサートが終わり、1人、ピアノに向かうピーター。照明は人物のみで薄暗く、ステージ上には楽しいイベントが終わったあとの、もの悲しさが漂う。そして、1幕の冒頭でも演じられた、子供の頃の回想シーンが再び始まる。8才のピーターが、バーで歌を歌ってお金をもらう(子役が演じています)。

母「テンターフィールドで一番の金持ちだ」
ピーター「映画に連れて行ってあげる!」

そこに父親があらわれ「金をよこせ」という。1幕の冒頭ではここでストップしたが、その場面には続きがあった。抗議する母親に、父親は手をあげる。「ママにかまわないで!」お金を差し出すピーター。

ピーター「映画、行けなくなっちゃったね」
母「いいのよ、サーカスの方が好きだしさ」

そして母親から、ピーターの父親は音楽が好きで、若いころは良く歌ってくれたこと、だけど戦争が始まって、帰ってきたときには人が変わってしまったことを聞かされる。「あなたの音楽好きは、あの人の血」。

ここで、25回目にして初めて気づいた事実。
ピーターは劇中で度々、エイズで激やせしたことを「スイカ・ダイエット」と言ったりするなど、深刻なとき、おどけて話をそらす事があった。

ピーター「映画、行けなくなっちゃったね」
母「いいのよ、サーカスの方が好きだしさ」

お金を取られちゃったから、サーカスにも行けないのに…いつもそう思って聞いていたこのセリフ。音楽好きが父親の血なら、深刻なとき、おどけて話をそらす、ピーターのそのクセは、母親の血・・・?

ピーターは紛れもなく、父と母の子であった。そうゆうこと!?今まで、25回も観てきて、そこには気づかなかった。そこに気づいてから、ふたたび涙止まらず。

その後、父親が拳銃で自殺するシーンで回想は終わり。この自殺が、実の子供からお金を奪ってしまったことで自分に絶望したからなのか、それとも、お金を奪ったこととは関係ないのか、それはわかりませんでした。とにかく、ピーターと、妻の前で、父親は自殺してしまいました。

そして再び、リトル・ピーター(子役)との会話。薄暗いステージで、「もっとやりたい事があったのに!」と訴える幼い自分に、

「自分は、自分の人生をやりきった。悔いはない。」と、諭すピーター。

ピーターの人生を振り返ったあと
最後の曲。

序盤、穏やかに始まって
強弱を繰り返しながら
ラスト、最大の盛り上がりで終わる曲。

ピーターが、お客さんに語り掛ける曲。

もう一度
聞いてくれ
旅立ちの前に

生まれ変わっても
同じこの道を
歩いてゆくだろう

苦しみも
喜びも
繰り返すだろう

---中略---

別れはいつでも辛いけど
強く生きなければ
翼を広げて飛び立つだろう
熱い思いで抱きながら
だから聞いておくれよ
今一度

離れていようと
心に君が
いるだけで幸せなんだ

君こそ太陽
今でもいつまでも

だからわかって
旅立つ前に
今一度

旅立つ前に今一度/Onece Before I Go


最大の盛り上がりで終わるこの曲は
拍手がなり止まない。

本当に、なり止まないんです。
歌の素晴らしさと、
ストーリーの切なさに
涙も止まらない。

こんな素晴らしい歌を聞いたことがない
と思えるくらい。
ステージ上の、まー君も
本当に満たされたような
優しさに包まれたような
晴れやかな表情。

役になりきっているのか
これは、まー君のお話しなのか?
そんな錯覚を起こすくらい
ステージ上にいるのは
坂本昌行であり、
ピーター・アレンでした。

なり止まない拍手のなか
エンディングへ

幕が下りる
全てが終わる

俺に何が言えるでしょう。

起きたことは起きたこと
でもそれは対して重要じゃない
重要なのは俺が生きたってことです。

本当の意味で生きられたかどうか
ってことです。

別れの時が来たなら仕方がない
だってそれは皆にも来るんだから。

さぁ、せめて最後は
にぎやかに参りましょう!

ピーターのセリフ


ラストはキャスト全員による
「世界はリオ / I Go to Rio」
全員、真っ白い衣装に身を包み
マラカスを手に、カーニバルのような
賑やかで楽しい曲でお別れ。

衣装の色は白一色だけど
それぞれの役どころにあったデザインで
こうゆう演出は大好きです。

カーテンコールでは全員の総立ちの
スタンディングオベーション。
本当に楽しい、素晴らしい時間。
立たずにはいられない。

なり止まない拍手。
ステージ上のキャストも
客席のお客さんもみんな笑顔。

本当に、最高に素晴らしいステージでした。



残念なことに、日本版はサントラも、DVDも発売されていない。いろいろ難しいんですかね?

もし、興味があれば、ヒュー・マイケル・ジャックマン(Hugh Michael Jackman主演のブロードウェイ版ならその雰囲気だけでも楽しめるかも知れません。

旅立つ前に今一度 / Onece Before I Go
世界はリオ / I Go to Rio

が断然おススメです♬



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