五月雨登校中の娘が見つけた作戦。
ずっと記録に残そうと思っていたことがあった。
でもそれをうまく活字に起こすことがイメージできないでいた。
そもそもそれを、私の中でどう受けとめていいもんかも今時点でわかっていない。
とにかく、ぴぃは今、休みたいんだと思う。
中学校に入学して、新しいルールの中、新しい友達と、新しい環境で、この短期間にたくさんの経験を重ねるぴぃ。
2年間のブランクを埋めずに入学したことで、理解が追いつかない授業も増えてきた。
中学では宿題ではなく、中間テストへ向けたワークという名の自学をする必要がある。
ぴぃが、机に向かって、鉛筆を持って、問題集を開き、ノートに答えを書いていく姿。
私はもうそれだけで奇跡のような光景で、ただただその背中に、「ゆっくりでいいよ。少しずつでいいよ。無理しないくていよ。」って心の中で投げかけ続けた。
興味のある教科であれば楽しんで取り組むことはあっても長時間は続かないから、追いつくことはなく山積みになっていく。
「絵が上手くなりたい」その一心で、ぴぃは美術部に入った。
毎日のように、30分以上立ったまま副顧問の説教を聞かされることも、愛想のない先輩とペアを組まされたことも、しっかりと行きたくない理由となった。
部活とはそういうもんかな?と思ってみるも、ぴぃのやりたいこととは違いすぎた。
要するにぴぃは、先週から登校ペースがグッと落ちた。
何時間目から行くと決めて遅刻して行ったり、早退すると決めた日はしっかり自分で帰ってきたり、明日は休むと決めて次の日しっかり休んだり。
それはぴぃが見つけたぴぃのペースだと思っていた。
ある日ぴぃは言った。
ぴぃ「最近授業中にちょくちょく怒られちゃうんだ。ぴぃは少し甘えてたわ。学校に。」
私「甘えてた?」
ぴぃ「そう。ぴぃは学校に行ったらお友達と話したいんだよ。楽しみたいの。でも、授業中に話してると怒られるんだよね。そりゃそうなんだけど。先生達はぴぃのことわかってくれてると思って、ぴぃなら許されると思っちゃった。」
私「なるほど、そうゆうことね。自分のことそんなふうに捉えられてるだけですごいと思っちゃう。」
ぴぃ「うん、だから、ある作戦を考えてる。」
私「作戦?」
ぴぃ「うん、心配してもらう作戦。もうぴぃは限界なんだってことをわかってもらう。」
そう言って、担任の先生とやりとりしている連絡ノートに何やら熱心に書き始めた。
その場で何を書いたかは見せてはくれなかった。
書き終えた後、「これでよし!」と言って、何か得意げな顔をして、いつも通り鼻歌を歌いながら絵を描いていた。
次の日、学校から帰ってきたぴぃがその連絡ノートをキッチンのカウンターに置いていたことで、私は中身を見てしまう。
「不安で不安で仕方ありません。」
「夜も不安で眠れません。」
「もう疲れました限界です。」
「不安で泣いてしまいます。」
「どうしたら眠れますか?」
1週間分ためた日記の欄にそう記していた。
そして、その日記の返事に赤字で先生からお返事が書いてあった。
「大丈夫だよ、頑張ってるじゃん」
「え〜眠れないの〜」
「先生は8時半に寝たよ〜」
「ゆっくり休んでね〜」
「寝ないと元気も出ないよ〜」
・・・・・・・・うん。
正直、ぴぃが作戦といってやったことと、それを知ってか知らずかの先生の反応も、私の中でどう受け止めていいか分からない。
ぴぃは不安そうにはしていても、不安で泣いて眠れない夜が続いてはいなかった。
ぴぃは学校で特別扱いされたいんだろな。
みんなと同じことをしてるだけですごいんだって、学校でも認めてもらいたいんだろな。
担任の先生はそれをわかってはくれていても、「できるじゃん、すごいじゃん」ってとこまでであって、それがぴぃのペースとは違うことは見えないよな。
そのノートを交わした次の日、ぴぃは2時間目の音楽の授業で大泣きしてしまった。
先生から連絡が入り、「壁が怖いって言ってる。何が大きなきっかけとかではないと思うけど、彼女、最近疲れてるから、今日はお母さんが迎えにきてあげて。」と言っていた。
ぴぃを迎えに行き、本人の話を聞くと、
「前回の音楽の授業を休んでいたから、今日指揮をしながら歌うテストがあることも知らなかったし、歌も覚えていなかった。それなのにテストは受けなくちゃいけなくて、みんなの前でできない指揮と歌をさらすことになって、さすがにメンタルが折れた。」
という理由だった。
「壁が怖かった」という強迫の症状は、早退するための口実だった。
ちなみに担任の先生は音楽の教科担任だ。
ぴぃがみんなと同じようにできない状態にあるとわかっていれば、そのテストをどうするかの打診があってもよかったのではないか?
つまり、ぴぃの作戦は失敗していたのだ。
ぴぃもそれを実感したんだろうな。
要するに今のぴぃには、学校に行く理由がもうない。
味方と思っていた担任の先生に、本来のぴぃを認めてもらって、特別扱いではなくサポートしてもらいたいとの思いはある。
でもそれは、ぴぃの気持ちに寄り添った上でじゃないと意味がない。
結局ぴぃが、どの道を選択するか。。。なんだよな。
なんだかな。
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