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第0章#07「楽しいからあんたもおいでん!」(リハビリデイと介護予防サロン)

時間の流れもゆった~りな里山エリア。下山地区にはもうひとつ、スマイリングが経営するユニークな施設があります。その名も「リハニティー」。リハビリに特化したデイサービスですが、週1回のペースで、介護認定にはまだ至らない地域の方が気軽に集まれる「リハニティー・サロン」を開いています。地元・下山で生まれ育った介護職員のカモミールさんにも登場いただきますよ。

レッドコードをつかったリハビリの様子。
筋力をつけるのではなく、身体のバランスを整えることが優先。

ガスパッチョ隊長
――現在、スマイリングの下山店を任せているカモミールちゃんは、前職で、豊田市の介護予防教室をお手伝いしていた経験があります。下山店で働いてくれるようになったある時、「市の制度が変わって、下山の介護予防教室が縮小されるらしいから、そういった教室を自分でも開いてみたい」という話が聞こえてきたんです。カモミールちゃんは地元の人だし、デイサービスに通ってこられる利用者さん以外にも、下山に暮らす人たちが集える場所をつくりたいんだな、すごくいいなと思ったんです。しばらくして、下山店の近くのコンビニ跡地の物件を見つけて、カモミールちゃんに伝えました。「やりたいって言ってたから、物件借りたよ、すごくいいアイデアだし、やってみなよ」って。
 
カモミール
――今でも思い出すとドキッとしてしまうほどの衝撃でした(笑)。入社して半年ぐらい経ったときに、広島で研修があったんですね。交流会で知り合った方たちと、「いま、やりたいことってなに?」みたいな話になって、それで、確かに私は「介護予防教室」をやってみたいとは言いました。だけど、入社して半年だし、いずれまわりの人たちにも理解してもらえたら挑戦したいというレベルだったんです。私の印象としては、隊長が近くでこの話を聞いていた記憶ないんですけどね(笑)。それが2015年11月ぐらいですよ。それで2016年の春、仕事していると「ちょっと来て!」と呼び出されたのが、今のリハニティーのあるコンビニ跡地。「ここを借りたから、あとはよろしく!」って・・・。
 
隊長
――完全に逃げ道を塞ぎました(笑)。
 
カモミール
――唖然としている私に、「ここでやればいいじゃん」「ゴールデンウィークが終わったら改装工事はじまるからね~」って。「ただ、介護予防教室だったら採算が取れないから、午前中はここの場所でリハビリデイを開業しよう。午後からは介護予防教室を好きなように考えてやってみたらいい」と・・・。スマイリングって、日ごろからいろんなチャレンジをしているじゃないですか。「やれない」「できない」というセリフは禁物。やれる方法を考える。できる方法を考える、というのが、ガスパッチョ隊長の教えでもあるから、やばい、選択肢がない・・・と思ったのが正直なところ。混乱しながらも、当時の私はなんとか前向きにきもちを切り替えることができたんでしょうね。ローリエ女史に相談しながら、やれる方法を手探りしていきました。

リハニティ―の外観。
コンビニ→TOYOTAのテストコースのための
道路建設用事務所、を経て今に至る。
広々としたリハニティーのフロア。
15分ずつのリハビリ×4種を2時間かけて行う。

隊長
――カモミールちゃんならやれると思っていました。豊田市内にP-BASEさんというリハビリに特化した同業者がいるし、彼らにノウハウを教わることができる。3~4か月の準備期間でスタートしました。

カモミール
私もやるとなったら覚悟を決めました。
「リハニティー」という名称は、
リハビリ+コミュニティの造語。リハビリをしながら地域コミュニティをつくりあげていく場所というのが名前の由来なんですね。「私たちがこれから目差していくものが、名前から読み取れるものにしてほしい」と隊長に頼んで、名付けてもらいました。

リハビリに特化したデイサービスって人気ありそうですね。
いろんなリハビリの器具が置いてあるのですか?

隊長
――ほとんど置いてないです(笑)。スマイリングでは「リハビリマシンを置かないリハビリデイ」、を目指しました。以前から、高齢者が筋力を鍛えるということに疑問を持っていまして。調べてみると、高齢者になるとトレーニングだけでは筋力はつかない。食べものまで変えていかないと無理なんです。ですから、「からだのバランスを整える訓練」に重きを置いていますたとえば、高齢者が「立ちあがれない」「歩けない」という状態は、筋肉がないからできないのではなく、バランスを崩すから。普段の習慣とか習性をちょっと見直して、バランスを整えるだけで可能となります。レッドコード(※)やマットなどは設置していますが、「生活リハ」といって、普段の暮らしのなかで自然に楽しくからだを動かしてもらうためには、何をしたらいいかな?とカモミールちゃんたち職員にプログラムを考えてもらっています。とはいえ、最初は苦労しましたよ。デイサービスってやっぱり、「お風呂とお昼ごはん」がメインだと思っている人が多いので、「え、お風呂に入れてもらえないのなら、意味がない」という感じで、新業態を理解してもらい、受け入れてもらうのには時間がかかりました。
※レッドコード=天井からつり下げられた赤いロープをつかった運動療法。

 

輪になってリハビリ。顔を見れば、ちょっとした
お互いのコンディションもわかります。

カモミール
――リハニティーは、10時から13時までの3時間だけのデイサービスです。15分×4回の運動をして、お昼ごはんを食べて帰宅。そして、午後から、週1回のペースで「リハニティー・サロン」という介護予防教室を開いています。
 
隊長
――自分たちが午前中に稼いだお金で、午後の時間帯を介護予防のための地域貢献活動するのはスマイリングとしてもいいことだなと思い、応援しているんです。

カモミールさん(右)は下山生まれ、下山育ち。
親戚一同が「お祭り大好き」で、夜店道具を一通り持っており、
時々、スマイリングの行事にも参加してくださる。


カモミール
下山地区は豊田市の中でもかなり田舎ですし、介護が必要になった高齢者が暮らしやすいかといえば厳しい現実も多々あります。介護度が高くなってきたらどこかの施設に入所、という判断を早く決めがちなんです。それをどうにか食い止めたい。できるだけ長く下山に暮らし続けてほしい、という思いから、「リハニティー・サロン」を開きました。

コロナの間はお休みしていたのですが、ぼちぼち再会。月4回(毎週月曜日の午後1時半~4時)の開催です。1回はパン作り、1回はフラトレ+おやつ作り、あとの2回はおやつ作り+予防トレーニングです。対象年齢は65歳以上ですが、その年代はめちゃくちゃ元気で働いているので、実際には、介護保険を受ける手前の75~85歳ぐらいの方が中心です。ちなみに初期の利用者さんは、私の同級生のおばあちゃんばっかりでした(笑)。昔から知っている顔ばかりでww。

スイーツづくりって、スマイリングでは日常風景。
だけど、サロンでみんなでやると、非日常の楽しさが生まれます。

地域のお元気な高齢者さんには、どうやって声をかけて(集客)いったのですか? 若い世代ならSNSでイベント告知するのが当たり前になっていますが。

カモミール
――はじめは、地域のおばあちゃんたちの家にいって、直接「こんなんやってるから、来てね~」と声をかけていきました。地域の包括支援センターの方からの紹介、などもありますが、一番多いのは来てくださった方が友だちを連れてくるケース。「楽しいからあんたもおいでん!」「あのひとが行くんやったら、私も行くわ」といった感じで続いています。

リハニティー・サロンは、無料ですか? 参加費とかはあるのでしょうか?

カモミール
――1回500円です。これも、最初は自信がなかったんですよね。年金で暮らしている方にとって週1回500円、その出費は安いものではありません。この活動に払っていただけるだけの価値を作れるだろうかと。今も葛藤はあるのですが、よりよい時間を届けたいと思いながら続けています。
 
隊長
カモミールちゃんは、ご自身のおばあちゃんが初代のスマイリング(幸穂台)に通ってくださっていたんですよ。それもあって、本当に地域に寄り添ったケアやサロン活動を続けてくださって頼もしいです。
 
カモミール
――うちのおばあちゃん、スマイリングのデイサービスが大好きだったんです。小さな施設なんですが、アットホームで心の距離が近い。自分が「お仕事に行っている」と思っていて、お休みの日でも行きたくてしょうがない感じでした。パン作りの日には、嬉しそうにパンを持って帰ってくるんです。孫の私に「食べて、食べて~」って。今はもう、天国にいっちゃいましたけど、スマイリングはそんなおばあちゃんが最後までよろこんで通っていた場所でしたから、そのスマイリングで働いている職員としての誇りと、もうひとつは孫として、「おばあちゃんだったら、今、私がやっていることをどう思ってくれるかな?」「このサービスは本当にうれしいと思ってくれるかな?」という両方の目線を大事に取り組んでいます。

「パン作り教室」は大人気。
下山のおかあさん、おばあちゃん世代の方々が
長く、下山の家で暮らせるようにと願いながら。

隊長
――リハニティーという施設は、ぼく自身が経営者として店舗を増やしたかったのではなく、職員から生まれたアイデアが形になった、という、うれしい進化の形です。
  
カモミール
――スマイリングは、いつもこんな感じです。何かやりたいことを口にすると、叶えてもらえる素晴らしさと、それがはじまってしまう大変さがいっきにやってきちゃう(笑)。でも、隊長は決して無理なことや独りよがりなことをやれ、というわけではありません。地域のためだったり、私たちのためになると判断したことに対して、大きくバックアップしてくださいます。
 
隊長
――カモミールちゃんたちの努力のおかげで、スマイリングが地域の人たちとつながる大きなきっかけができました。そして、我らがスマイリングの「コミュニケーション・モンスター」、フラトレのプルメリアちゃんがリハニティーに乗り込んでくるというわけです!!(笑) でもその話は、長くなりそうなので、次回をお楽しみに。 

「おばあちゃんが最後まで大好きだった場所」というカモミールさんの言葉に胸がぎゅっとなりました。血縁でなくとも、地縁のある方々が暮らす地域をめいっぱいステキな場所にしようと努力をされてきた軌跡が読み取れます。「楽しいから、あんたもおいでん!」~下山のおばあちゃんやおじいちゃんたちの笑い声がここからもっと響きますように。

次回は、リハニティー発祥の「フラトレ」!

PROFILE_カモミール/株式会社スマイリング 
エリアマネージャー&上郷店の管理者。社会福祉主事任用資格、ホームヘルパー2級 ケアリハ検定3級。下山生まれ、下山育ち。自身のおばあちゃんがスマイリングのデイサービスに楽しそうに通っている姿をみて、2015年に入社。親戚一同が大のお祭り好きで、イベントになると屋台道具を一式持ち込んで、場を盛り上げる。明るい性格と、ポジティブ思考。楽しい運動をモットーに小さな体をくるくる動かす日々。

what's カモミール=癒しの香りをはなつハーブ。小さな白い花びらを持つ。気持ちを落ち着かせる作用があり、カモミールティなどが人気。スープの香りづけにも使われる。花言葉のひとつに「逆境で生まれる力」がある。


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