第0章#13_「地域のドラえもんになる!?」(ソーシャルクリエイト部の活動:前篇)
ガスパッチョ隊長
――「ソーシャルクリエイト部」って、何するとこだと思います?
ローリエ女史
――隊長って、すぐ小難しい名前をつけちゃうんですよね~。みんなに説明するのがいつもたいへん!!
隊長
――え、そうなの? かなりカッコええと思ってるんだけど(汗)。まあいいか・・・この「ソーシャルクリエイト」というのは直訳すると「社会を創造していく」という意味なんだけど、ぼくの中では「地域のドラえもんになる!」というイメージが近いかな。ホームタウンである松平・下山地区のみなさんの困りごとや、心のなかに抱えている問題などをすくいあげて、秘密の道具でどんどん解決していく、みたいな体制をつくりたいんです。
ローリエ
――そういってくれたらわかりやすいのに><(笑)。私の方からもう少しだけフォローしますと、地域に暮らしている「のび太くん」の、声にならない声をまず見つけ出していくこと(=課題の発見)が、ソーシャルクリエイト部の1番目のお仕事です。その次に、その課題に対して、私たちが介護福祉のプロフェッショナルとしてどんな風に手を差しのべることができるか?(=課題の解決)を考えて、企画・実行していきます。
隊長
――これまでのデイサービスは、のび太くんが「困った~困った~」と泣きついてくるのを部屋(デイサービス)で待っていて、それを解決してきたんです。日本人って、課題解決型の教育を受けてきているから、そこはトクイなんです。だけどこれからは、もっと前の段階、問題が起きる手前でくすぶっている火種や、目に見えず声としても聞こえてこない悩みが家や地域に必ずあるはずで、それを自ら見つけていかなきゃ。「地域のドラえもん」として、どんどん外に出ていけば、秘密道具に頼らずとも未然に防げる問題もあるだろうし、大きな問題が見つかったとすれば、それを持ち帰ってもらって、スマイリングが総力をあげて解決策を練る!そういう循環体制がこれからの地域社会には必要です。
ローリエ
――とはいえ、めっちゃ人見知りな私には、そもそもできないことなんですけどね(笑)。 地域に出てもな~んも喋れませんし。だからこそ、コミュ力の高いルーさんとプルメリアちゃんに、ソーシャルクリエイト部を任せました。持ち帰ってきてくれさえすれば、のび太くんの「困った~~~~!!」に対して、私、全力で最強の秘密道具を出すから!(笑)。
隊長
――ぼくは、くるま屋のセールスマンだったから、500軒でも1000軒でも地域を回って、人の家のドアを直接ノックしてきました。地域を回れば回るほど、人に逢えば逢うほど、そこにある課題といくつもの解決策が見えてくることは、経験上わかってるんです。
ローリエ
――昭和のド根性論はいまどき通用しにくいけど、その通りですよね。
隊長
――ソーシャルクリエイト部のスタートは2021年の春です。当時、プルメリアちゃんは地域にフラトレをもっと広げていきたいという夢があったし、ルーさんは20年間も務めてきた社会福祉法人を辞めて、スマイリングに合流してくれることになった。彼は福祉まわりのことがわかるし、性格が穏やかで敵をつくらないタイプ。この二人なら、地域の方たちとコミュニケーションを上手にとって課題を拾ってきてくれると思ったんです。
プルメリア
――私は、スマイリングが開発した介護予防のオリジナルメソッド「フラトレ®」を通して、豊田市界隈の方々に笑顔の輪を広げていくことが任務のひとつです。さきほど「地域のドラえもん」という話が出ましたけど、私は地域の方の困りごとだけでなく「やりたい!を叶えるドラえもんになること」もスローガンとして唱えています。日々、地域サロンやサークルなど多種多様の人と接するので、本当にいろんな気付きがあります。それで、隊長によく「あれがやりたい、これが気になる」と投げかけるんですが、いつも「夢見る夢子ちゃん」すぎると叱られちゃうんですよね><。
隊長
――プルメリアちゃんの気付きやアイデアはいつも素晴らしいのですが、お金の問題をクリアして、ビジネスとして成り立つようにしないと根本的な課題解決にはなりにくい。「夢見る夢子ちゃん」であるピュアな部分を大事にしながら、ルーさんと共にソーシャルクリエイト部として、ビジネスとしても成立する仕組みをつくっていきましょう。あ、そうだ。ルーさんのことは、まだ紹介してませんでしたね。
ルー
――遅ればせながら、はじめまして。ルー(ROUX)です。ぼくは、noteでいうと第0章#10_「おんぶにだっこ」誕生秘話にちょっとだけ登場しています。ガスパッチョ隊長やローリエさんとは介護・福祉のデザインスクール(2018年)で出会って、いつの間にか運命共同体になっていました。もともとは社会福祉法人で長年働いていたんです。規模が大きすぎて、自分で考えたことが直接利用者さんに届くなんてことがなかったので、隊長やローリエさんが展開されてきた数々のエピソードは衝撃でした。利用者さんのためにガチでそこまでやるの!?って。デザインスクールのフライヤーに「新しいことはいつだって、無謀で笑えるところから生まれてくる。だから、介護・福祉の現場は面白い。」と書いてあったのですが、当時の僕に、隊長やローリエさんはかなり無謀な人に見えましたし、同時に魅力に溢れていました。
出逢った当時、隊長から、スープタウン構想の原案を聞かせてもらったんですよね。企画書には「SMIRING FRONT PROJECT」と書いてありました。現在のスマイリング松平店の建物の目の前に建てるんだ、と熱く話されていました。そこからいろんな話をするようになり、こういうビジョンを持った方たちと、介護福祉の未来をつくっていくのは面白そうだなと、転職を決めました。
ルー
――初年度は、とにかく地域のあらゆるところに顔を出しました。市役所、支所、社会福祉協議会、学校、他の事業所など。プルメリアさんの方は、フラトレの活動を地域に広めながら、持ち前の人懐っこさで地域に暮らす方たちとつながりを丁寧につくっていきましたね。
プルメリア
――すべてが手探りで、思いついたことは何でもチャレンジしました。キッチンLABOの敷地内につくった駄菓子屋さんが私たちの拠点で、ルーさんと私が交代で店番。担当の日は「駄菓子屋のおばちゃん」、地域の子どもたちとお喋りするのがいつも楽しみ!
プルメリア
――2021年の夏休み前かな。ある朝、駄菓子屋にきた子どもが、「夏祭りがなくなった」「いろんなイベントも中止でさみしい」と話してくれたんですね。コロナ禍でもありましたし。それで朝の会議でなにか夏祭り的なことしてあげたいよね!という流れに。ただ、ここまでは一般的な展開です。
ルー
――ここから秘密道具が飛び出します。「いつやります?」と「地域のドラえもん」の総本山であるガスパッチ隊長に相談したら、「今日やればいいじゃん」って。「きょ、きょ、きょ、今日うううう???」「やる?」「やろう!」と、超特急で準備。『LABO突然夏祭り』が決まりました。子どもたちにも「午後から夏祭りしますよ~みんなを連れて来てね!」「重ねて言います。今日!!!!です」と声をかけまくって。かき氷、ジュース、ゼリー、冷やしキュウリ、スイカなどできる限りの用意をしました。
プルメリア
――突然のことなのに浴衣で来てくれた子どももいましたね。夏休みの日記に書ける~!と喜んでくれたのも印象的。ただ、準備期間はマジでスマイリング史上最短っ!!
プルメリア
――毎日、千円を持ってきて駄菓子ばっかり買う男の子がいたんですね。お母さんが夜に働いているらしく、その千円は晩ごはん代なんですが、友だちの手前、ごはん系のものを買うのが恥ずかしいんです。さりげなくキッチンLABOに連れていってお惣菜を勧めたこともあるんですけど、友だちに家の事情をバラしたくないみたいで。
ルー
――お菓子とおかずの中間のような食べものなら、買ってくれるかも?と考えて、駄菓子屋にアメリカンドッグやコロッケを置いてみたんです。そしたら、ちゃんと伝わったんですよね。
プルメリア
――子どもの心に介入しすぎると駄菓子屋にさえ来なくなる場合があります。それが一番良くないから、ほどよい距離感を保ちながら会話を重ねて、状況を把握し、自分たちにできることを考えました。よく考えたら、これって今私たちが考えている「スープな距離」ってことなのかもしれませんね。ちなみに、彼はしばらくして別の地域に引越したんですが、中学生になってから元気な顔を見せに来てくれたことがあり、とっても嬉しかったです。
ルー
――こんなこともありました。ある時、幼稚園の年長さんぐらいの子どもが、泣きながら店にやってきたんです。「お母さんがいない~!!」って。キッチンで鍋料理をしている途中に姿が見えなくなったらしくて。その子の家からうちの駄菓子屋まで約200mぐらいの距離で、途中にもお店はあるんですがそこを素通りして来てくれた。小さな子どもが、ここに来るとなんとかなる、と思ってくれたことが愛しくてたまりませんでした。
プルメリア
――転んだら来てくれるとかね。何も買わなくてもただ2時間座ってる子もいますね。子どもたちとの日常会話からヒントをもらって、母の日や父の日のサプライズイベントも企画しました。駄菓子屋さんが子どもたちにとって第3の居場所というか、安心安全な場所になるといいなあと思っています。
ルー
――駄菓子屋さんでのエピソードが多すぎて、つい子どもの話ばかりになっちゃいましたが、ぼくらの役割は「社会的処方」を届けるリンクワーカーでもあるんですね。身体的な病気はお医者さんでお薬を処方してもらいますが、社会的処方の場合は「つながりのおくすり」を処方するんです。心が弱っていたり、悩みを抱えている人がいると、さりげなくその人の好きなことや興味のある分野に近い人や社会とのつながりづくりのお手伝いをします。
(※社会的処方については第1章#03POTさんのnoteでの解説を読んでね)。
プルメリア
――ただ、私は普通のリンクワーカーに留まりたくない。出逢った人の悩みごとや困りごとが「やりたい!」「楽しい!」に変わるような、ハイパーリンクワーカーを目指しています。、
ルー
――くううう・・・バ、バレました?(笑)実は、ソーシャルクリエイト部の活動も、はじめから順調に進んできたわけではないんです。1年間いろんな地域に出ていってチャレンジをしてきたものの、地域課題がそこまで拾えていない、という現実もありました。なんとか駄菓子屋さんに来てくれた子どもたちとはコミュニケーションをしっかりとって、そこから課題を見つけることができたんですが、一口に地域に出る、といっても奥が深すぎます。千円を持ってお菓子を買いにくる子どもがいても、その家庭事情まで踏み込むことはできませんしね。
プルメリア
――だけど無駄なことはひとつもありません。まずは人と人との関係性をしっかり築くことからだと思うんです。ささやかな日常会話の中から「困った」「なんとかならない?」「これやりたい」を見つけ出して解決法をいろいろ模索してきましたが、人間関係はまずお互いの信頼から。一朝一夕にできるものではありません。最初の一年は、私たちにとっても土台づくりの大切な時期でした。
つづく。
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