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㊻肩がこるから緊張型頭痛?

ミュージカル好き救急医の独白 vol.46
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

最も多い頭痛の原因をご存じでしょうか?片頭痛は有名ですが, 高齢者では少ない疾患でしたね. 若くても高齢者でも多い頭痛の原因, それが緊張型頭痛です. 片頭痛が800万人に対して, 緊張型頭痛は2,000万人以上いると言われています. みなさんが, 「なんか頭痛いなぁ」と感じているその多くは緊張型頭痛でしょう. ”肩こり, 頭痛”と検索すると, 緊張型頭痛がヒットするのですが, これには注意が必要です. 肩こりは緊張型頭痛の専売特許ではなく, 片頭痛患者さんでも認めます. 片頭痛と緊張型頭痛, 見極められるようになりましょう. 今日はそんなお話を.


今回のミュージカル話

We must go on
私が今読んでいる本がある. それが『We must go on』だ.
2020年2月26日, COVID-19感染症対策のため, 「今後2週間を目安に, 全国的なスポーツや文化イベントの中止や延期, 規模縮小を要請する」という政府要請がありました. その後多くの公演が中止, 自粛という判断をしたわけです. そんな中, この期間に何かできないかという思いで始まった企画でクラウドファンディングで資金を募って出版となった本が『We must go on』です. その中でアッキーこと中川晃教さんはインタビューで, このような状況でピンと思いついた言葉, それが「ピンチをチャンスに」であったと語っています. COVID-19で頭を悩ませ, 頭がズキズキした人はたくさんいることでしょう. しかし, このような状況だからこそできることも必ずあるはずです. 再び劇場で素晴らしいアッキーの歌声を聞く日を夢見て, 今日は緊張型頭痛のお話.

救急外来あるある

34歳の女性(qさん)が, 頭痛を主訴に来院しました. 肩こりもあり, 自身でインターネットで調べ緊張型頭痛だと考え鎮痛薬の処方を希望しています.

Dr.S:「今日はどうされたのですか?」
Pt.q:「昨日から頭が痛くて. 緊張型頭痛だと思うのですがいつもの痛み止めが効かなくて.」
Dr.S:「どのような痛みなのですか?」
Pt.q:「右側のこの辺りがズキズキ痛くて, 気持ち悪さもあります.」
Dr.S:「仕事はできますか?」
Pt.q:「いえ, 痛みが強くて昨日は休み, 一日中寝ていました. 今日はなんとか職場には行ったのですが…」
Dr.S:「前にも同じ様なことはありますか?」
Pt.q:「はい. 20歳代の頃から時々頭痛があって, 痛み止めを使用しています. 最近はその痛み止めが効かなくて...」


緊張型頭痛と片頭痛の違い

◯年齢
片頭痛は若い人の病気. そう単純にまずは覚えてしまってOKです. 65歳の男性ではじめて片頭痛の診断がつくことは非常に珍しく, 一般的には10-30代(女性>男性)が好発年齢です. それが故に, 65歳以上の高齢者であれば, 緊張型頭痛>>片頭痛の発症頻度となります.
◯痛みの持続時間
片頭痛は一般的には4時間以上, 長くても72時間以内に治まるのが一般的です. それに対して緊張型頭痛はなんでもあり, すぐに治まることもあれば数日以上継続することもあります.
◯痛みの特徴
片頭痛の3つの特徴を覚えているでしょうか?以下の3つでしたね.
①頭痛がある時に光を嫌がる
②日常生活に支障がある
③嘔気や胃部不快感がある
緊張型頭痛は一般的に, これらを満たしません. 頭は痛いものの, 日常生活にあまり影響はなく, 食事もそれなりに食べることができます.

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肩こりの有無はあまり両者の鑑別には関係しません. それよりも片頭痛の特徴である3つを満たすか否かを評価し判断してみてください. そこに年齢や持続時間なども加えて考えれば, 自身の痛みがどちららしいかはわかると思いますよ.
もちろん, 危険な頭痛のKeywordである, ①人生最悪の頭痛, ②だんだん増悪する頭痛, ③突然発症の頭痛の場合には, 緊張型頭痛や片頭痛ではありませんよ.

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