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⑳座り方に要注意!

ミュージカル好き救急医の独白 vol.20
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

救急外来でよく出会う骨折って, どこの骨折だと思いますか?手?足?腰?折れる場所はだいたい決まっているのです. 私も学生時代のラグビーの試合で頬(ほほ)の骨折をしたり, 前十字靱帯を切ったりといろいろやりました. スポーツ中の外傷もそれなりにいますが, 救急外来で多いのはやはり高齢者の骨折です. 骨折すると筋力も落ちるし, 場合によっては寝たきりになってしまうので要注意です. 今回はちょっとした予防のお話し.

今回のミュージカル

レ・ミゼラブル
レミゼの以前の演出ではヒヤリとするシーンがありました. バルジャンを追いかけ, バリケードにやってきたジャベールが勢いよくバリケードを駆け下りるのです. あのシーンは毎度毎度ハラハラしました. 転んだら大変だ!なんて勝手に心配していたものです. なにか足場を踏み外さないように予防はしていたのですかねぇ?踏み外して落ちたら折れやすいあそこがバキッと...ってことで今回は骨折のお話し.

救急外来あるある

78歳の女性(Rさん)が, 2日前からの腰痛を主訴に救急外来を受診しました.
Dr.S:「今日はどうされたのですか?」
Pt.R:「腰が痛くてどうしようもなくて.」
Dr.S:「尻餅をつくように転んだりしましたか?」
Pt.R:「いいえ. 転んではいません.」
Dr.S:「それでは, このように椅子にドスンと座ることはありませんか?」
Pt.R:「それはあるかも…」
Rさんの娘:「最近そのように座ることはよくありますね.」

高齢者に多い骨折とは

高齢者に多い骨折はどこだと思いますか. 尻餅をつくようにして折れるのが腰骨, 手をついて折れるのが手首の骨, 転んで折れるのが股間節の骨です. それぞれ, 胸腰椎圧迫骨折, 橈骨遠位端骨折, 大腿骨近位部骨折と一般的に呼ばれます. 特に圧迫骨折と大腿骨近位部骨折は寝たきりの原因にもなり, なんとしても避けたい骨折です. 今回はその中から圧迫骨折を取り上げます.

圧迫骨折とは

簡単にいうと背骨がドスンと衝撃を受けると折れるのが圧迫骨折です. 頻度として高いのはなんらかの理由で尻餅をつくようにして受傷することが多いです. そのため, 自宅などでそのように転び, 腰がそのあとから痛くなったらほぼ圧迫骨折といえます.
しかし, 転倒していなくても起こることがあります. よく経験するのが, 椅子などに座るときに, ドスンと座って受傷するものです. 年とともに筋力が低下し, 太ももの筋肉(大腿四頭筋など)も衰え, 座る直前で力が入らず, 数十センチの高さからドスンと座ってしまうのです. これくらいで折れる?と思うかもしれませんが, 高齢になると骨粗鬆症など骨が脆くなり折れやすくなるのです. 特に女性の場合にはホルモンの影響などにより, 骨が脆くなり易いためより注意しなければなりません.

座り方に御用心

椅子に座るときは, 手で支えるなどして, ドスンを避け, ゆっくり座ることを心掛けましょう. また, 筋力を普段からなるべく落とさないようにトレーニングしておくことも大切です. 自宅にいる時間が長くなっていると思いますが, その時間を利用し, 自宅で筋トレをしてみてください. いまはYoutubeなど無料で学べるたくさんのツールがあります. "体幹トレーニング", "大腿四頭筋トレーニング"などで検索してみるとたぁくさんでてきますよ.


♪さぁ逃げてゆけ 闇の中 息潜め 生きてゆけ あいつとは いつの日か
 対決する 対決する♬
『星よ』

ミュージカル好き救急医から, 知っているとチョコッと役立つ知識を少しずつお届けします. ぜひ!