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MTR、打ち込み、DTM、DAWまでの歩み

プロ・アマを問わず、パソコンで録音からミックスまでやるのが当たり前になってますが、私が曲を作り始めた頃は、カッセットテープ式のMTR(マルチ・トラック・レコーダー)が個人で持てる最高の宅録環境でした。
最高と言っても、4トラックしか無いし、オーバーダビングを繰り返してるとテープが伸びてピッチが狂ってくるしで、思うようなサウンドはまったく作れませんでした。今となってはいい思い出。

そんなMTRに始まって、誰もが理想の音楽に注力できるDAWまでの歩みを、私が影響をうけたアーティストさんとその作品と共に振り返ってみました。
ためになる話はこれっぽっちもありませんが読んで頂ければ幸いです。

久石譲さん

Joeさん(敬意を込めてこう呼ばせて頂いてます)といえば、オーケストラの指揮台でタクトを振ってるイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、私の第一印象は打ち込みの人でした。

甲斐バンド解散直前のアルバム「Repeat & Fade(1986年)」の編曲でクレジットされてたお名前を見て、
「めっちゃカッコいい字面!」
と思ったのがJoeさんを知るきっかけ。
もちろん曲がかっこ良かったのでお名前も強く印象に残ったわけです。

テクノに興味をそそられなかった私も、打ち込みのリフレインがもたらす緊迫感に固まってしまいました。

少しさかのぼると「風の谷のナウシカ(1984年)」で、腐海の中でナウシカがムカデのような空飛ぶ蟲に襲われるシーンのBGMもそうでした。16ビートのリフレインにのって現れる蟲の不気味さに鳥肌がたちました。


セリフもBGMも極めて少ない、北野武さんの「あの夏、いちばん静かな海。(1991年)」の波乗りのシーンもそう。緊張感と躍動感を与える良いスパイスになっています。


ジブリの音楽映画でよく知られるところですが、「もののけ姫(1997年)」の音楽をやるにあたりクラシックを勉強し直して取り組まれたというのを何かで見ました。人気も知名度もあるベテランが自分改革ですよ。そして今のスタイルに繋がってるのがまた凄い。

またJoeさんのぞくぞくする打ち込みを聴きたいっす。打ち込みオンリーのフルアルバムなんか出して頂けませんかね。

1991年だと、パソコンで音楽をやってる人は周りにいませんでした。
まだまだシンセサイザー&シーケンサー&サンプラーが中心、どれもひとつウン十万もする機材ばかりで個人には敷居が高すぎます。
DTMとの出会いは翌1992年になります。


織田哲郎さん

近藤真彦さんに提供した「Baby Rose(1986年)」を耳にして
洋楽のようなかっこいい曲を書ける日本人がいるんだと驚きました。
私好みのビッグバンドアレンジ、ビート、メロディーライン。

以来、注目しつづけてると、あのヒット曲が発表されます。

「いつまでも変わらぬ愛を(1992年)」は、DTMでひとりで作ったというインタビュー記事に衝撃を受けます。

Joeさんの16分音符で刻んだいかにもデジタルなアレンジではなく、生のバンドサウンドに近いアレンジ。
これがひとりで作れるんだという驚き。
常々バンドサウンドを厚くしたいと考えていた私には天使(悪魔)の囁きです。


タイミングよく、YAMAHAから「HELLO!MUSIC!」という音源モジュールとシーケンスソフトがパッケーになった製品が発売されます。
これより少し前に Rolandから「ミュージ郎」という製品が発売されてましたが、アンサンブルにピアノを入れるならYAMAHAでしょ!という根拠のない固定観念から「HELLO!MUSIC!」を即買いです。

ただし、パソコンにさわるのは高校の授業以来、パソコン買うのも初めてでした。パソコンを使われる方は容易に想像できると思いますが、ファイル?ディレクトリ?初期化?MS-DOS?ってもう、パソコンの知識が無さ過ぎて操作に慣れるまで2ヶ月、1曲打ち込むまでにさらに1ヶ月はかかったと思います。
お世辞にも使えてるとは言えない状態が長く続きます。

また、この頃のDTMって、DAWではなくシーケンスソフトですから、扱えるデータがMIDIだけです。オーディオの録音はできません。
複数トラックのオーディオを扱える性能は当時のパソコンにありませんでしたし、やっぱりお高いハードウェアは必須でした。
MTRも記憶媒体がハードディスクに進化したものの現役です。

時は流れ21世紀に入ります。

私がダークモードに入ってる間に、パソコンは飛躍的な性能アップを実現し、ついにDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)が登場します。
オーディオを扱えるDTMの幕開けです。

DAWソフトをインストールしたパソコンとオーディオインターフェイスさえあれば完結する、音楽制作環境の革命です。

しかも、オーディオインターフェイスやMIDIキーボードには廉価版といえDAWソフトが付いてましたので、音楽制作の敷居は下がりに下がり、プロとアマの制作環境の差はほぼ無くなりました。

私も数年後、RolandのUA-25というオーディオインターフェイスを買ってDAWデビューを果たします。ずっと使ってなかったとはいえMTR君とはホントにお別れとなります。お疲れ様でした。

リズムトラックをつくって、ギターを録って、ベースを打ち込んで、シンセやピアノを足して、ミックスして、CDまで焼けてしまうのですから。言うことありません。

私がノホホンと満足しきってる間に、DAWの申し子達は、枠にはまらない別次元のかっこいい音楽を世に放っていきます。


中田ヤスタカさん

Perfumeさんにハマった2012年。遅ればせながら「Dream Fighter(2008年)」をきっかけに惹かれるようになりました。まあ熱いのですよ。バンドが持ってるロックスピリッツみたいなものを感じるのです。

Perfumeさんの初期作品には歪んだギターの音がよく使われてます。
すべて一人で作られるのでご自身で弾いたと思われますが、リフとかノイズとかハーモニクスとか、ギターの美味しいところをわかっていらっしゃる。


インタビューでよく「今一番かっこ良いと思う音楽を作ってる」なんておっしゃってますが、前衛的であっても、難しく考えなくても、格別にかっこ良いですよ。劇場版アップルシードの「Depth」とか。


詞は適当なんてよくおっしゃってますが、時折放たれる珠玉のコトダマ。
ユーミンが書いたのかと思うほど、「Stay with You」で描かれた女性の可愛いこと。キュンとしてしまいます。


このジャンルにこの楽器は欠かせないとか、8ビートには2拍目と4拍目にスネアを入れるとか、固定概念にとらわれない自由さに、ロックスピリッツと感じてるのだろうと思います。おかげて私自身も自由になりました。まあいろんなことを知らなかっただけなんですけどね。
次は何やるのか、何を壊すのか、楽しみで目が離せない方です。


今使ってるのは StudioOne Prime 。外部プラグインが使えないことを除けば無料で何でもできてしまう強力なDAWです。操作性も良く、ほぼ直感的に扱えるのでこれからDAWを始めてみようという方におすすめです。

StudioOne Primeのアップグレードはしばらくお預け、先にエレキを買いたいし、録るものがないと始まらないのでね。一日15分のアコギ練習と、通勤で歩きながら発声練習に励んでます。
蚊の鳴くような声でロングトーンを練習してる人が歩いてても、気づかないふりをしてあげて下さい。

ではまた。


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