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手紙なら伝えられるのです。アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

面白い、楽しい、素晴らしい、感動する、秀逸、傑作、評価を表す言葉は様々あるが、『名作』を教えてと言わたら、『母を訪ねて三千里』と『赤毛のアン』を挙げる。

優れた物語であることは勿論だが、世代を超えて、広く、永く、愛され続ける作品が名作だと考えている。

今回取り上げる
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も、いずれそうなる作品だと思っている。

今、名作だと言い切らないのは、単純にこの作品が、まだ終わっていないというだけだ。

テレビアニメは2018年4月終了。1クールで区切りをむかえたが物語はまだ完結していない。

現在、劇場版が制作中だ。

※ご注意※ ネタバレがあります。
内容を知りたくない方は、
ご覧になってから、またおこし下さい。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン | Netflix


物語の舞台

この物語の舞台は、近代ヨーロッパの雰囲気が漂う架空の街。1850年から1950年くらいまでの文化文明が入り混じっているように思う。

交通は、蒸気船と蒸気機関車、馬車や車が往来している。飛行機も飛んでいる。

執事を従えた豪華なドレスのご婦人がいるかとおもえば、パンツルックで袖をまくり上げたキャリアウーマンも居る。

つけペンで文字を書き、タイプライターで文章を打つ。

夜は、ガス灯と窓から漏れる柔らかい灯りが街に浮かぶ。

郊外に出れば、豊かな自然が溢れ、湖の畔に城が建っている。

今ほど便利ではないが、ゆっくりと時間が流れる情緒ある風景。現代人から見れば贅沢に見える。

離れた人に言葉を伝える手段が手紙という点は物語上外せない。

そして、現代技術でも作れそうにない無骨で精巧な義手が異彩を放っている。

物語の背景

戦争の傷がまだ癒えきれないこの街で、郵便業を営むホッジンズのもと、『自動手記人形サービス』通称『ドール』と呼ばれる、手紙の代筆業をしている少女が物語の主人公、
ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
推定14歳。

彼女は戦場で拾われた孤児で、名前もなく、教育も受けないまま戦争の道具として利用されていた。
戦場しか知らず、人間らしい感情を育む機会が全く無かったため、武器として命令を遂行するだけの自分に何の疑問も持っていない。

見かねたギルベルト少佐は、彼女を引き取り、ヴァイオレットと名付ける。言葉と文字を教え、優しく接する。
人らしく生きれるよう尽力するも、上層部の命令で戦場に連れて行かざるをえなくなる。

終戦直前、最後の作戦で、バイオレットは両腕を失い、ギルベルトは自力で動けないほどの傷を負う。

瀕死のギルベルトが最後に言ったのは、彼女が初めて耳する言葉だった。

心から・・・愛してる

終戦から4ヶ月ほどが経ち、退院したヴァイオレットは、ギルベルトの元上官だったホッジンズの下で、郵便配達員として働き始める。

ある日、偶然立ち会った代筆の席で、先輩ドールの口から『愛してる』という言葉を聞く。

どうしてわかるのですか?
先程の方の「愛してる」が
なぜわかるのですか?

少佐は何を伝えようとしていたのか。
『愛してる』を理解するためヴァイオレットはドールになると申し出る。

手紙の代筆業

背景には暗い陰があるが、彼女がドールを目指すここからが本編だ。

代筆業と聞いて思い浮かぶのは、字が書けない人に代わって手紙を書くこと。

この物語では、言葉にできない真意を手紙に表現することが求められている。

代筆の依頼を通じて、自分に無かった感情を理解し、持ち前の芯の強さで周りの人達をも変えていく。ヴァイオレットは希望そのものだ。


最後に、代筆業につく前のエピソードをご紹介する。

退院祝いとして、ホッジンズはぬいぐるみを3つ取り出し、選ぶように促す。

子犬のぬいぐるみを手に取り頬ずりするヴァイオレット。

どうして子犬を選んだの? と尋ねられ

以前、少佐の兄上に、
お前はギルベルトの犬だな
と言われましたので。

と、一切表情を変えず答える。

言葉を失い咳払いするホッジンズ。

言葉がもつ側面をまったく理解できない、ただただ真っ直ぐな彼女に「ヴァイオレットに一本」と思う私。

知らない故、人並みの心を持たないが故の『おかしさ』を持っている。滑稽と言っていい。

この物語には、ベクトルの違う気持ちが一度に湧き出す瞬間がある。それは、胸が締め付けられると同時に人肌のぬくもりを感じるのだ。

つきなみだが、あたたかい気持ちにさせてくれる物語。

ヴァイオレットがどのように変わり、出会った人をどのように変え、私をどんな気持ちにさせてくれるのか、これからも楽しみだ。
彼女の行く末を最後までみとどけたい。

あとがき

制作は京都アニメーション。
学園モノが多い印象の京都アニだが、少し毛色の違う本作においても、映像の美しさ、繊細な心理描写は健在。
というか、これこそ京都アニメーションと言って良い作品だ。

いま、再上映中の外伝が最新作になる。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝
-永遠と自動手記人形-

まだ上映してる映画館があったので明日見に行ってこよう。ハンカチを忘れないように。


『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト

ヴァイオレット・エヴァーガーデン - wikipedia

ヴァイオレット・エヴァーガーデン | Netflix





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