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新築木造音楽室「施主・建築士とのコラボ事例」

この現場の画像は先日の記事でもイメージフォトとして一部使用しましたが、写真は木造音楽防音室の依頼者(施主)が撮影して、私の事例紹介のために用意していただいたものです。
*地方(愛知県内)都市の住宅地に新築された住宅の内部に併設した「木造音楽室」で、トランペット・ギター・キーボード・パーカッションなど多目的な音楽演奏に使える部屋(2階)です。

場所が東京からは遠方ですので、契約は「防音設計・コンサルティング」のみです。※防音材は私が指定する製品の中から、新築業者がメーカーと取引できる防音材を選んでいただきました。

防音室に対する他の専門業者との認識や設計手法の違い

他の記事においても触れましたが、私(防音職人)の防音設計は、特に木造防音室に関しては、他の専門業者とは異なる視点・アプローチで提案します。その違いを端的に施主(依頼者)が完成後のご報告の中で表現されていますので、原文のまま引用します。

『2月に完成した新居に移り住み、やっと生活が落ち着いて来ました。 ご報告が遅くなり申し訳ございません。
さて、音楽室ですが、素晴らしいの一言です。 主人は主にトランペットを演奏しますが、昼夜問わずミュートなしで演奏しても外には音が漏れません。 家の中は多少音がしますが許容範囲ですし、ミュートをつければ家の中でもほとんど音がしません(2階音楽室の真下の1階和室で寝ている赤ちゃんが起きないほど)。 防音効果の高さには施工業者も驚いていました。
当初私は「防音室」を作ると考えていましたが、「音楽室」と防音職人様がおっしゃるのを見て、 気持ちよく演奏ができる場所を作る視点が抜けていたと気付かされました。
主人曰く音の響きが良いそうです。無垢の床は温かみがあり、楽器を演奏しない私から見ても心地の良い空間です。 外への音漏れ緩衝のため隣室も簡易的な防音仕様に設計していただきましたが、こちらも映画を見たり人が集まる部屋として使えるので、重宝しています。
防音に関して、インターネットのサイトで情報収集していた際に山根様の存在を知り、記事を読み進めるうちに信頼できそうだと思い依頼いたしましたが、お受けしていただけて本当に良かったです。
ご訪問してお礼を申し上げたいところですが、時節柄恐れ入りますがメールにて失礼させていただきます。 ありがとうございました。』

上記の依頼者のご報告の通り、施主様は非常に理解力が有り、私の設計手法や主旨を速やかに理解されて、直ぐにご契約をいただきました。
木造音楽室は「防音室である前に、色々な楽器の特性に対応できる音楽室として考えることが重要」という設計方針が基本となります。

また、地方の現場では、新築業者・建築士との協力によるアイディアなどコラボが大事であり、フレキシブルに防音計画を修正する技術が重要です。今回の件は、その典型と言える成功事例です。

木造建物は、諸外国では音楽室を完全防音するという視点そのものが殆どなく、新築の段階で間取りに応じてリスクを軽減しながら、快適な楽器演奏の環境を構築するというコンセプトが一般的です。
もちろん、近所との距離や敷地の広さが違うので、同じ手法は適用できませんが、考え方としては出来るだけ良い面を採り入れる工夫は大事だと思います。木造の特性、木材の利点は共通しているわけですから、見習うべき点は真似しても良いと思います。

木造防音室・音楽室の木材製品の活かし方

国内および輸入材に共通した特性として、「針葉樹は柔らかく」「広葉樹は硬い」という性質です。
この違いを前提にして、木材・木製品を選び、下地材や表層材の仕様を決めます。地味な仕様かもしれませんが、これが木造音楽室の「音響と防音効果」を左右します。これは、私が独立開業後の約20年間の現場経験と情報収集(取引先へのヒアリングを含む)によって学んだものです。

この仕様を含めた「計画書(提案書)」を、先日の相談者に無断で使用され、他の専門業者に見せられたのですが、幸いなことに提案書の価値を認められることはなく、他の専門業者には不評で・笑。
「こんな薄い仕様で防音室が造れるわけない」と言われたそうです・笑。それで、その相談者(埼玉県の男性)に私の提案はキャンセルされました。
平気で背信行為をするような相談者と契約するつもりはないので、結果的には良かったと思います。

木材・木製品は、音響調整だけでなく、防音効果も設計仕様・施工要領によって、約10dBから15dB程度変わってくることが、現場の精密測定調査や提携先建築士の簡易測定によって明らかになっています。
木材には「遮音・吸音」効果だけでなく、構造的な剛性補強や制振効果があり、これらを組み合せることによって、コンパクトな防音設計が可能になります。


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