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防音設計と技術革新の歩み

建築業界の防音設計(遮音設計)のルーツは「木材」と言っても過言ではありません。古くは木材と土壁を組合せた建物が防音構造として成立しており、公的施設としては、東京に建築された古い音楽堂の外壁内部に吸音材として「木材の屑(大鋸屑など)」が使用されていました。

また、他の分野では最も古い遮音材として「アスファルト基材」を使用している土木工学の道路・構造物があります。音を吸収し遮音する機能が優れている材料です。

木造防音室の設計・施工業界は非常に保守的

某大手楽器メーカーが開発した遮音設計マニュアルは、石膏ボードとグラスウール、鉛のシートだけで防音構造を構築するものでしたが、基本的に多くの専門業者が現在も同様な設計・施工をしています。
このため、重量的な制約がある木造の防音室においても、無駄に分厚い構造体を金太郎飴のようなマニュアルによって防音設計を行っています。

このマニュアルに、遮音ゴム・アスファルト材を導入したのは比較的最近のことであり、保守的な体質のため、他の業界で活躍している防音材を導入する際にも非常に時間がかかりました。このため、マニュアルが確立されていません。木造防音室における検証データが不足しています。
業界全体の技術革新の歩みは、まだ始まったばかりと言えます。

また、木材を防音設計システムの中に採用する専門業者は殆どなく、軽視されているのが実情です。

薄型防音仕様は他の業界情報を分析して生まれた

防音職人が確立した薄い防音設計システムは、木材加工・合板業界、土木・機械工学の業界の専門情報を分析して生まれたものです。
また、木造建築物の工法を施工要領に組み込んでいます。

例えば「合板」は面材としての強度が高く、効果的な剛性補強及び振動抑制効果を高めることができます。繊維方向を直交させて加工された構造用合板は、その典型です。
合板は単板に比べてコインシデンスが緩やかで、重ねて施工することによって弱点を補正することが出来ます。

また、土木業界で使用されているアスファルト基材は「音の機械振動に対する吸収性が高い」という特性があります。
車業界では樹脂(塩ビ含む)や高密度フェルト材・軟質ウレタンによって、薄型の遮音・制振構造を実現しています。

私は各業界のベテラン技術者やメーカー担当者に製品情報を提供していただき、独自の視点で分析しながら自分の担当現場(新築住宅や木造防音室を含む)において実践して検証してきました。

以上の概要が防音職人の設計技術の重要な基礎となっています。
自分の技術が優れているとは思っていませんが、必要に迫られて生まれた技術です。ここまで来るのに、独立開業後約20年が経過しました。
*今年の夏でちょうど20年になります。


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