【微ネタバレあり】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観て ~マルチバース、あるいはあり得た未来~

巷で「令和のボボボーボ・ボーボボ」「ボーボボみたいな映画がアカデミー賞に手をかけてる」
という評判が気になり、少年時代をボボボーボ・ボーボボと共に過ごしてきた自分としては観ないわけにはいかんだろう…と思い観てきました。

そう『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を…

公式ページからの引用あらすじ

経営するコインランドリーの税金問題、父親の介護に反抗期の娘、優しいだけで頼りにならない夫と、盛りだくさんのトラブルを抱えたエヴリン。そんな中、夫に乗り移った“別の宇宙の夫”から、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と世界の命運を託される。まさかと驚くエヴリンだが、悪の手先に襲われマルチバースにジャンプ!カンフーの達人の“別の宇宙のエヴリン”の力を得て、闘いに挑むのだが、なんと、巨悪の正体は娘のジョイだった…!

公式ページより(https://gaga.ne.jp/eeaao/about/)

この映画で一番目を引くのが『バース・ジャンプ』という要素。
わけのわからない常識外れな行動を取ることで、今の自分とはまったく異なる人生を歩んだマルチバースの自分の能力を引き出して使える、というものです。

この常識外れな突飛な行動というのが頭おかしく、
頭おかしければおかしいほどより今の自分とはかけ離れた能力を引き出せる…というシュール全開限界バトルが幕を開けるという触れ込みなのですが

正直、この映画を見ると若干「思ったのと違うな…」という感想を抱く人が多いと思います。

それもそのはず
この映画が一番描こうとしてるのは「家族関係」そしてそれを通した「自分がありたかった姿」の話なのですから…

バースジャンプにしても、正直言うほど突飛な行動をしてるわけではないので、
ぶっちゃけ突然亀ラップを始めるみたいなレベルのものじゃないんです。
まぁしいて言うなら
亀ラップの冒頭のジェットコースター乗りながら棒で頭叩いたり
畑に割りばし植えてたらAブロック基地になったり
敵が本気出して真の姿になったら旧スクール水着を着てきた

とかそれぐらいのものはあるんですが…

重要なのは、「あり得たかもしれない自分の未来に触れる」ということ。
そしてそれは、「今の自分では絶対手に入れることができないもの」ということでもあるわけです。

主人公エヴリンは、物語スタート時点でだいぶどん底の状態から始まります。
仕事も家庭ももうぜんぶぐちゃぐちゃのギリギリ。
やりたくないこと、やらなきゃいけないことが山積みで、
「こんなことなんでしてるんだろう、こうじゃなかったはずなのに」
と思いながら年末調整に挑むわけです。
そして、そんな思いを抱えているのは彼女だけではなくて…

そんな折、多元世界マルチバースを揺るがす大事件が起こり、
エヴリンは様々な自分の可能性の世界に触れていきます。
冒頭、マルチーバースに関する説明を受ける際、
とある人物から「ほんの小さな行動で未来は大きく変わる」という言葉が出ます。
今とは到底考えられない生き方や能力を持った未来だったとしても、
すべて元を辿れば「ほんの小さな行動をしただけの」同じ自分に他ならないわけで。

そう。
この映画は、ヘンテコ行動を取ってクソ強いカンフーするのはおまけであって、その実一番重きを置いているのは
「多くの可能性の未来を見た上での、家族の再生物語」なんです。

理想の自分や未来なんてどこにあるのか。
そこにたどり着いたとして、本当に欲しかったものは手に入ったのか。

どっちかというと注意すべきは、結構毒親というか複雑な家庭事情の描写が出てくるので
その手の要素が苦手な人は覚悟した方がいいかもしれません。
正直本筋の話が結構重いことをやってるので、おバカ行動やカンフーで口当たりを軽くしてる感はあります。
あと犬の扱いが最低なシーンがあるのでそこも…

個人的に好きなのは、公開前の情報にもあった石になったシーンですね。
あんな印象的なシーンになるとは思わなかった…

欠点として、おバカカンフーアクション映画を期待して観に行くと肩透かしを食らうというか、
そもそもせっかく多元世界の力引き出せるって設定なのに、攻撃方法がほぼカンフー一択なんですよね。
一部「これ絶対外れ能力だろ…」ってのに意外な強みがあったりするのが面白かったですが。

とはいえカンフーアクションも凄いです。
見た目普通のくたびれた中年が、身の回りにあるもの使って
キレッキレのカンフーアクションするの凄いワクワクしますよね?私もしました。

あまりにもこの映画に対して「ボーボボだ!ボーボボだ!」というワードが先行して飛び交い過ぎていたのもあり
今回感想書いたのもそれが理由の一つだったりします。
いやほんとに変なシーンはあるんですよ。結構シモに寄ってるけど…
ボーボボの石化技食らったはずなのに
「うわぁ~~~ニンジンになっていく!!!」
「キャベツになってる…」とかとはちょっと違うかなって…

アカデミー賞で受けそうな要素みたいなのも確かに分かったので、
この映画はちゃんと観てからご自身なりの感想を考えてもらった方がいいかなと思います。

結論として、マルチバースを自己を見つめ直す素材として扱ったのが本作の特徴なのかと思います。
そしてボボボーボ・ボーボボはフォロワーのいない唯一無二の傑作なのでみんな読もうね。

このままだとボーボボの話をして終わりそうなので今日はこんなとこで。


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