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私の中の柔らかい場所 8


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翌日起きると、プールサイドで爽やかな気持ちでブレックファーストを終えてからスークに向かった。

スパイスやデーツの商店を見た後に、石窯で焼かれたピザを食べた。


中にはたっぷりのスパイスとひき肉、ナッツが入って焼かれており具沢山で大変美味しい。

スパイスとナッツとひき肉が合わせられて、一度食べたら癖になる美味しさである。


食べ終わった後はリヤドに戻り、砂漠キャンプに行く準備をした。


一泊分の荷物をリュックに詰めて、いよいよ出発である。


リヤドの前にはラクダが待機していた。


ラクダには鞍が付いているが、丁度コブの所に乗るので少し難しい。

ラクダが座っている状態でラクダに乗り、ラクダが立ち上がる時にしっかり掴まる様に言われた。

ラクダが立ち上がると、ラクダの上からはかなり高さがある。


ゆっくりとキャメルマンに引かれながら、ラクダの背中に揺られながら砂漠へと向かっていった。


見える風景は360度、自分が頭に思い描いたシーンが現実にあった。


ラクダが歩く度にかなり上下に揺れるので足腰で踏ん張り力が入るが、少しずつコツが分かってきた。この揺れに逆らわずに力を抜いて、ラクダの歩みの揺れに身を任せた。

この揺れに身を任せると、揺れさえも情緒がありとても心地良い。


そんな夢の様な世界で、少しずつ移り行く砂漠の風景を目に焼きつけた。


30分程ラクダに揺られて、一度ラクダを降りる様に促された。


砂漠の砂丘を登り、サンセットを見るのだという。


眉毛が濃い赤いターバンを巻いたキャメルマンと共に砂丘を登った。

砂漠の砂は柔らかくて、足を一歩出す度に足が砂にめり込んでとても歩きづらい。


颯爽と砂丘を登るキャメルマンが手を差し出してきた。

疲れはじめて私は躊躇なくその手を握った。

自分だけで進むよりも、2倍位のスピードで砂丘を登って行った。


流石、砂漠の民は砂漠の歩き方を心得ているのだろう。

一般的な日本人よりは明らかに体力があるに違いない。


あっという間にキャメルマンに手を引かれて砂丘の頂点に登った。

ハァハァと息をはずませていると、キャメルマンは素早く手に持っていた小さめの絨毯をしいてくれた。
そこに座る様に促されると、遠慮がちに絨毯の端に座った。


自分の呼吸とサラサラと砂を撫でる風の音だけがオレンジに染まった静寂の世界に響いていた。

2人で並んで、
これから沈もうとしている太陽を見つめた。


耳を澄ますと、既に整ったお互いの静かな呼吸でさえも聞こえるんじゃないかという位の静寂な時。


強いオレンジのサンセットの光が、私達の細胞一つ一つまで染み渡った。


黙って見ているのが何となくソワソワしてきたので、キャメルマンに話しかけた。


「何処の出身?」

「モロッコの砂漠」

「それは知ってるけど、何処の街?」

「リッサニ」

リッサニの出身の人は多いのだろうか。
今は何処に行ってしまったのか

モハメドも確かリッサニの出身だった。


風が吹く音、静寂の赤砂、オレンジに照らされた眼前の世界

私達を包み込み、熱を与えながら沈んでいく太陽


太陽が殆ど沈み終わると、キャメルマンは砂の上でスキーをしたいか?

と聞いてきた。

私は即答でイエスと答えた。


砂漠の砂丘の頂点で座る私の脚を掴んで、キャメルマンは器用に後ろ向きに走って砂丘を駆け降りていった。


サラサラとしたサハラ砂漠の砂を滑っていくのは、とても気持ちよかった。

もう一回やりたいか?
と尋ねられ、うなづいた。

たった今滑り落ちた砂丘を、キャメルマンに手を引かれながら登っていった。

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