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プレイアブル 005『お口の中に広がる世界』

美味しいものが大好きだ。とにかく大好きだ。『美味しい』にも色々な種類があるのだが、何か1つ輝く個性のような、口に含んだ瞬間、一気に惹き付けられるような煌めく世界を感じさせられる食べ物が大好きだ。そんな食べ物に出会う度、いつも私は心の底から「生きてて良かった〜〜〜」と幸せなため息を思わずついてしまう。

その無意識の言動のおかげか、いつも行くラーメン屋さんでシンプルな豚骨ラーメンに何故か煮玉子が隠れて入っていたり、お寿司屋さんで頼んでもないウニを2巻ボンっと頂いたり。色々と特典のようなイベントが時々あったりなかったりする。

こちらのクリームあんみつは、門前仲町にある甘味処『いり江』の白玉小倉栗クリームあんみつなのだが、ここまで食材一人一人の個性がお互いを引き立て合いながら1つの器の中で調和のハーモニーを奏でている1品に、他で出会ったことは無い。まさに、世界平和を体現した逸品だ、と何年も前から事あるごとに声を大にして言っている。みんな笑うけれど、私はいつも本気で言っているのだ。ここまで個性の調和について、何も語らず、優しく甘く教えてくれる先生は他に居ない、と心底思っているのだが。誰か共感してくれるだろうか。

白玉は、モチモチという世界を越え『うるっ』とした胸の高鳴る境地に連れていってくれる。そして、その背景にそっとふわっと漂うのは小倉餡の素朴なあずきの空気だ。同時に栗独特の甘みが、溶けたアイスクリームと共に口の中を一気に駆け抜け、心地よい冷たさが体温に馴染むと共にじんわり全身に染み込んでいく。みかんの酸味は甘い世界とのギャップを感じさせてくれる引き締め役で、プリっとしながらもホロホロと溶けていく寒天とまた別の世界へ私を誘う。しっとりした絶妙な塩加減の豆が黒蜜と奏でる甘い香ばしさは、求肥を噛み締める時のシャクッ、シャクッという心地良さと相まって、まるで銀河の絨毯を踏みしめながら旅をしているような気分にさせられる。

目の前の1品が私を連れ出してくれる旅を夢中で味わうことは、間違いなく私の生きがいの1つであろう。

このように、私の頭の中には沢山の美味しい食べ物の情報のストックがかなりある。空き容量は無限にありそうな気がしている。入れれば入れるほどリンクして繋がりカテゴリー別に分類が簡単になるような、そんな予感がなんとなくではあるが、している。全て五感で得た情報で、1度味わった世界を形状記憶すると大抵7割5分くらいは語りで表現できるのではないか、と個人的には感じている。

語り始めると止まらないのだが、人間が『食』に対して持つ欲求を満たすための行動力は時に凄まじいほどのパワーを発揮することもある。精神科看護師時代、それに圧倒され感動した経験が何度もあった。

夢中で『美味しい』を伝えることが、どこかの誰かの役に立てたら。どんな点と点を繋いだら、どこの誰の役に立てるのだろうか。誰の役に立ちたいのか、どうしたいのか。何も先は見えない。だからこそ、私はこの『美味しい』という軌跡を、夢中になりながら大切に一つ一つ残して積み重ねて行きたいと感じている。

出会う『人』『物』『場所』が感じさせてくれる幸せ、感動。一人でも多くの方に『胸が震える』をおすそ分けをさせていただくために、あなたのサポートを最大限活用させていただきます。よろしくお願い致します。