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1000文字童話『黒ずきん』
あるところに人間と狼の間で生まれた少女がいました。彼女はいつも毛むくじゃらの顔を隠すために黒いフードを被っていたので、人間からは『黒ずきん』と呼ばれていました。
ある日黒ずきんは、お父さんの狼から森のおいしい果実と薬草が入ったカゴを渡されました。
「森の奥にあるお母さんの家は覚えているね?最近体を悪くしているみたいだから、このカゴを持っていて、薬を作っておやり。お前の作った薬を飲めば、きっとすぐに良くなる」
黒ずきんが家から出ようとすると、お父さん狼が慌てて飛び出してきて言いました。
「決して人間が歩く道を歩いちゃいけないよ。もし歩いてしまったら、必ず足跡は消していくんだ。そうじゃないと、恐ろしい『赤ずきん』に食べられてしまうからね」
黒ずきんはこくりと頷くと、急ぎ足でお母さんの家へとむかいました。もちろんお父さん狼に言われたとおり、決して足跡を残さないようにしながらです。
黒ずきんが家に着くと、家の中から錆びくさい、嫌な臭いがしていることに気づきました。
黒ずきんがドアを開けると、お母さんは死んでいて、ベッドは血で真っ赤に染まっていました。そのそばには、赤いずきんを被った女の人が立っています。
「あなたはだれ?」
黒ずきんは逃げようとはしませんでした。逃げられるなんて思わなかったからです。
「赤ずきんさ。父親から聞いていないかい?」
「どうしてここにいるの?」
「それはね。おまえがここに来るよう、手紙を書いたのがあたしだからさ」
「どうしてお母さんは死んでいるの?」
「それはね。食べるのを邪魔しそうだったからさ」
「どうしてロープを持っているの?」
「それはね。肉を食うときに邪魔な、血を全部抜いてしまうためさ」
「どうして、そんなに大きなナイフを持っているの?」
「それはね、おまえを割いて食っちまうためさ!」
そう言うと、赤ずきんは黒ずきんに飛びかかりました。その瞬間近くの村の猟師が家に入ってきて、持っていた銃で赤ずきんを撃ち殺してしまいました。
「すまない。お母さんは助けられなかった」
「猟師さん。なんで僕を助けたの?僕は人間じゃないのに」
「子供が食べられそうになっているのに、それを黙って見逃すやつはいないよ。家に帰りなさい。きみのお母さんは俺が弔うよ」
黒ずきんはまっすぐに家に帰って、お父さん狼に何があったか言いました。お父さん狼はおおきな涙を流しながら、『お前が無事でよかった』と、おおきな涙をいくつもいくつも流す黒ずきんを抱きしめました。
黒ずきんとお父さん狼はその後、お母さんの家の庭に作られた小さな墓に、白い花を添えにいきました。そしてもう一度だけ、泣きました。
おしまい
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