【墨田区 押上】小松

とある橋を渡り北に進む、
住宅街とのはざまの路地に、
数軒の居酒屋やらスナックが
軒を連ねる一角がある。

その隅に焼鳥店『小松』がある。

ここは、
迂闊なことに、
小生ときたら、
これまでずっと
まるで見落としていた店である。

悔しい。

年季を感じさせる、
いい雰囲気の店構えである。

暖簾をくぐると、
ほぼ満席だったのだが、
なんとかカウンターに
潜り込むことができた。

店主は、
いかにも、
長く商売を続けてきたことを
彷彿とさせる風貌で、
キリッとした表情に
手際よく料理をしている。

無口な職人肌らしい。
清潔感があり、
心地よい緊張感が
伝わってくる。

席に着くなり、
絶妙なタイミングで
焼鳥が焼きあがった。

丁寧で繊細、
手堅い仕込みが施された焼鳥は、
十分な歯ごたえで、
噛めば噛むほど旨味が口に広がった。
しのごの言わずに、旨いの一言。

"いい店ですね"
と声を掛けてみた。

"当たり前のことを、
長くやってるだけだ"
と、さらりと返された。
痺れる。

その一言で、旨味が増した。
味といい、大将の心根といい、
小生の心臓のど真ん中につき刺さり、
感涙を呼んだ。

塩対応。
でも温もりを感じる繊細な仕事を
している。
お客にうまい焼き鳥を
食べさせたいという心意気が
伝わってくる。

クールで格好の良い店である。

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